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第21回 定陶の戦い

ついに激突、呂布・張遼VS張飛・関羽

何気に成簾と麋芳も一騎打ちです!!

第21回 定陶の戦い


<地図> 

              河北(冀州)

_____黄河____________________           

長安   洛陽   陳留(兗州) 東郡(兗州)   


  南陽(荊州)  潁川(豫州)     下邳(徐州)

  

  襄陽(荊州)    汝南(豫州) 寿春(揚州) 

_____長江___________________                              

               曲阿(揚州)



 兗州えんしゅう済陰郡せいいんぐん定陶ていとう


 「一糸乱れぬ騎馬隊の動き。やはり呂布りょふ、天下に鳴り響く武将なり!この関羽かんう雲長うんちょうがお相手いたあああす!!」

腰まで髭を垂らし、青黒い甲冑姿の関羽が青竜偃月刀を振るいながらそう名乗った。

 「まったく小兄あにじゃはいつでも名乗り合えば一騎打ちができると思っているなあ。そう簡単には戦はいかねえよ。悪いが呂布の相手はこの張飛ちょうひ益徳えきとくがいただくぜ」

そう云うと虎髭に虎のような眼を持った張飛が蛇矛を振るって一万の兵を二手に分けた。


 「あれが徐州じょしゅうの兵か。なるほど統制は整っているようだが、動きは凡庸。とてもこちらの騎兵を相手にできるようには感じぬが……」

呂布軍の軍師、陳宮ちんきゅうがそう呟いて首をかしげた。

 「戦は兵の統制や勢いだけでは決まらぬ。将の器がものを云うときもある」

呂布は赤兎馬にまたがり方天画戟を軽く振るってそう答えた。

 「一方は一万、一方は一万を二手に分けた……最強を誇るこの騎馬隊を相手に一体何を考えているのか……奉先ほうせん(呂布の字)、どちらに当たる?」

陳宮がそう尋ねると。呂布はしばらく考えた後、

「一万を二手に分けた方に当たろう。文遠ぶんえんよ、お前は反対側に当たれ」

いきなりあざなで呼ばれて張遼ちょうりょうは戸惑った。いつもは張遼と呼び捨てにされるのだ。字で呼ばれるのは初めてだった。曹操そうそうの首を討ったことで呂布の扱いも変わったのだろうか。

 「かしこまりました。我が騎兵二千は左翼の一万に当たります」

そう答えて張遼は双戟を振るいながら駆けていった。

呂布は旗本の成簾せいれんを呼んで、

「俺が敵の将と討ちあっている間に分かれた五千を潰せ。文遠同様、二千の騎兵がいれば充分だろう」

「承知」

旗本筆頭の成簾は騎兵二千を率いて分かれて駆けていく。

 

 呂布は陳宮と三千の騎兵と共に直進し、張飛の兵に向った。

 「いよいよ来なすったか。汜水関のときのようにはいかんぞ呂布」

張飛は蛇矛をしごきながら呂布の到着を待つ。分かれた五千の歩兵も呂布の別隊とぶつかり合う寸前だった。

 「俺の騎兵を前にして兵を分けるとはよっぽどの大馬鹿か、相当な自信があるかのどちらかと見た。関羽、張飛、どちらだ?」

呂布が騎兵を止めて誰何すいかした。

呂布の精鋭三千はピタリと静止し、まったく微動だにしない。それだけでもどれほど血の滲む訓練を繰り返してきたのかが想像できた。

 「久しぶりだな呂布。この蛇矛の鋭鋒、忘れたとは云わさぬぞ!!」

大気を震わす怒号とともに張飛が前に進み出た。あの時とは乗っている馬も違う。首を討ち取る心構えはできていた。

 「なるほど、張飛か。面白い。俺もあの時とは違い、自由の身。この呂布奉先の閃撃を受けて、その首、落ちずにいられるかな」

呂布が赤兎馬の腹を蹴り、猛然と突っ込む。

 「ううぉおおおおお!!!!」

張飛も雄たけびをあげて呂布にぶつかり合う。

 凄まじい速度で呂布の方天画戟が繰り出される。張飛は軽々とその刃を蛇矛で受けとめ、目にもとまらぬ突きを繰り出す。呂布は頭を振ってその矛先をかわした。

 赤兎馬が張飛の馬に激突する。さすがに赤兎馬の突進、張飛の馬も上等なものであったが赤兎馬には数段劣る。張飛の馬が揺らいだ。

 「その首もらった!!」

呂布が隙を見つけて方天画戟を振う。張飛が揺らぎながらも蛇矛の柄でその戟刃を受け止めた。間髪入れずに蛇矛が唸りをあげるが、呂布は悠々とその矛先をかわすのであった。

 

 一方、呂布との一騎打ちを楽しみに待ち構えていた関羽は、向かってきた敵軍が呂布でないことに気が付いた。

 「小賢しい呂布め、若輩の益徳を討ってからこの雲長に向ってくる算段か!面白い。お主が何者かは知らぬが、この関羽雲長の刃に沈むことを光栄に思え」

そう云うと関羽は馬の腹を蹴って敵陣に襲い掛かった。

 先頭には将の張遼が、冷静な目を関羽に向けていた。

「おお、これは関羽殿か。我は呂将軍の旗下、張遼文遠なり。その首、貰い受ける」

「張遼、おお、その名は聞き及んでいるぞ。面白い。貴殿の首を獲ってから改めて呂布殿に挨拶をするとするか」

 関羽が空気を切り裂く青竜偃月刀の一撃を繰り出した。

 張遼がその切っ先を双戟で受け止める。返す刃で関羽の首を狙った。

 「ほう、やるな張遼。この一撃を受け止めたは貴殿が初めてだ」

関羽はそう感嘆の声を上げながら双戟の刃をかわすのであった。


 さらに奥地では呂布の旗本筆頭の成簾が、張飛の別隊に襲い掛かっていた。

 張飛の別隊を率いるは、副将の麋芳びほう。徐州の実質的な頭である麋竺びじくの弟で、張飛が預かり鍛えていた。素質ありと張飛は見て、矛の訓練を施した。今では劉備軍のなかで張飛、関羽に次ぐ実力の持ち主である。

 腕に覚えがある成簾が麋芳に攻めかかり、こちらも互いに一進一退の攻防を繰り広げるのであった。


 定陶の主戦場では呂布軍が苦戦に陥っていた。

 曹洪そうこう七千に続き、殿の曹仁そうじん七千も動き出したからである。

 呂布軍では魏続ぎぞく宋憲そうけんの陣が完全に崩れている。かろうじで旗本が中央を固めていたが崩壊は風前の灯であった。

 戦上手と名高い高順こうじゅんの陣は固い守りで固められていたが、楽進がくしんの猪突猛進の攻撃と夏侯淵かこうえんの巧みな攻撃にさらされて崩れかかっている。

 唯一機動力のある郝萌かくほうの騎兵二千が楽進の陣を崩し、夏侯淵の本陣の横腹を突いていた。しかしその横腹にさらに食らいつくように曹洪が攻め寄せる。

 曹仁は魏続、宋憲の陣を抜き、高順の背後に迫っていた。

 

 この時、陳留ちんりゅう郡より張超ちょうちょうの歩兵三万が鄄城けんじょうに迫っていたが、満寵まんちょう率いる虎彪騎七千が再び出撃し、その姿を見て張超の軍は算を乱していた。もともと張超は戦が上手くない。兵もそれを知っているだけに曹操の直属の精鋭、虎彪騎を見て動揺したのである。

 

 このように定陶の戦いは全部隊が戦闘状態に陥っていた。


 はたして誰が生き残るのか。

 鄄城の城内で軍師、程昱ていいくは祈るだけであった。


主役の袁術がまったく登場していませんが、気になる曹操はどうしているのか、次回は長安にスポットを当ててみます。

乞うご期待。

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