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第六話

 俺は悪くないと思う。

 ……多分。



 「えぇと、お嬢ちゃん。誰が爆乳ババアなのかな?」


 「えっシスターの名前じゃないの?おいちゃんがそう言ってたよ。」


 そういって満面の笑みでこっちをリルは、指差す。あぁ、リルさん。今だけはその純粋さが憎いです。


 「だそうですけど、どうゆうことなんでしょうね、ガゼルさん。」




 「まぁ、若気のいたりだ。許せ。」



 「あんた、30台中盤でしょ。」



 はい、とぅいまてぇーん!



 とかは、死んでも口に出さない。まぁ、罪は悪いと認めてしまったら罪なのだ。おっさんはそんなこと知りません。キリッ



 呆れたように、いや、諦めたように、ふぅぅっとミリーナがため息を付く。全く、いちいち仕草が色っぽいやつだ。そんなんじゃ、俺のマグナムもウィンウィンになってしまう。




 ……ダメなおっさんですみません。




 「まぁ、いいわ。後で詳しく聞いてあげる。それにしても久しぶりね。で、あんたは英雄とやらになれたの?」


 完全に馬鹿にしたような笑いでニヤリと俺を見てくる。すこしっていうか、かなり恥ずかしい。それこそ若気のいたりだ。見逃してくれ。



 「そうだよ!おいちゃんはもう英雄さんになったんだよ!物凄く強いんだ。」



 「プッ、で英雄さんがこんな教会になんのようなんですかぁ?」


 「うるさい、笑うな。俺だって頑張ってんだよ。あぁもう。そんなことより、リルを預かってくれ。俺は忙しいんだ。」



 「ふぅん、まぁここに来たってことはあれってわけね。ひとまず、わたしに任せなさい。手続き位はしてあげる。ホント、昔っから面倒ごとしか持ってこないわよね、アンタ。」


 よし、この話題は見逃してくれるらしい。ミリーナさんマジ天使。だが、一つ盛大な勘違いをしているようだな。



 「スマン、ミリーナ。こいつは俺の娘だ。以来すんのは、孤児じゃなくて、託児だ。」


 ッゴホンゴホン



 急にミリーナが咳き込み出す。なんだよ、おっさんだって子育てが忙しいんだ。そんなに大袈裟になんなくたっていいだろう。



 「あ、あんたいつの間に結婚したのよ!?聞いてないわ、そんなこと。」



 「ん、あぁそういうことか。いや、違うぞ。リルはまぁなんと言うか拾った?って言えばいいの?まぁ成り行きで娘になった。」


 「ふぅん。」



 言い方が悪かったみたいだ。ミリーナがゴミを見るような目付きで俺を見てくる。違います、俺はロリコンじゃありません。本当に成り行きだったんです。


 「じゃあ、なに、仕事してる間に面倒見ろってこと?」


 「まぁ、そうなるな。なに、心配ない。金はある。それにリルは良い子だからな。なっ」


 「うん!だから早く教会入れてください。呪いがとけないとリルは、おいちゃんと一緒に冒険出来ないんです。」



 しょんぼり、した様子で解呪を催促するリル。流れを読み取ったのか、ミリーナが訳知り顔でこっちを見てくる。再び、にやにやしてる顔だ。そんな風にみつめられると無性に恥ずかしくなる。


 悪かったな、下手くそな嘘で。



 「あぁ、オホン。では、俺は金銭稼ぎに出掛けてきます。ミリーナ、早急にリルを呪いから解放してあげるように。」


 「はいはい、分かりました。こっちは心配しないでいいから、さっさと行きなさい。」


 「リル、良い子にしてるんだぞ。」


 「うん!分かった。」


 そうして、俺は久しぶりに一人で依頼に出掛けるのだった。









 「そういえばもうお朝ご飯の時間ね。リルちゃんは何が食べたい?」


 「海鮮牛丼!」


 「……えっ!?」


*******************







 今回は久しぶりに一人での依頼だ。



まぁ、いつも通りにやりゃ問題ない。まずは、ビックラット10匹からだな。


 こいつは、すばしっこいこと以外、特に特筆すべきことはない。ただの農家の敵だ。



 逃げ場のない所にまで追い詰めては仕留める。単純な作業の繰り返し。そうそう、これこれ。これが、中年のおっさんに相応しい依頼だよね。


 最近は、でっけえイノシンに半泣きにされるまで追いかけられたり、誤解からBランクパーティーに襲われてみたりとろくでもないことばっかりだった。




 束の間の平穏を味わいつつ最後の一匹を仕留める。


 よし、順調だ。 ここまで順調だと、清々しいな。なんか、今日はいいことが起こりそうな気がする。


 次はゴブリンの駆除依頼か。この調子でさっさと終わらせちまおう。



 俺はるんるん気分で次の目的地へと歩いていった。










 「うんしょ、うんしょ」


 「リルちゃん、そんな動きやめなさい。それは男の人が我慢出来なくなったときに自分でする惨めな行為なのよ。」


 「えぇ、夜中おいちゃんが一人でやってたよぉ。気になって聞いてみたら強くなるために必要なきんとれだっていってたもん。」


 「……えっ//」



*******************




 ゴブリンってもんは基本的に嫌われ者だ。


 なんてったって、ゴブリンは、食えない、ウザい、キモい、多い。



 さらには、畑も荒らす。だから、一番嫌われる魔獣だ。しかも、尚更たちが悪いことに、腐っても魔獣であるということだ。単純に戦ったら、一般人なんかは殺されてしまう。何故なら、意外に足が早い上に小さいから攻撃があてずらいのだ。毎年、何人もの被害者がでている。ましてや、今年は不況だ。作物被害に耐えられなくなった農民達が立ち向かったりして返り討ちにされるというのが多発している。



 まぁそんなわけで報酬金がいつもより高い訳だがな。



 それに、冒険者である俺ならゴブリンくらい簡単に対処出来る。要は、焦らずに確実に仕留めていけば問題ないのだ。一匹おびき寄せては、殺す。一匹おびき寄せては、殺す。これの繰り返しでほぼノーリスクで倒すことが出来るんだ。






 みたいな大口叩いてすいません。只今、ゴブリン5匹に囲まれてしまいました。




 じわりじわりと、輪を縮めるゴブリンどもは、とてつもなくウザい。もし、あの時我慢出来ずに屁を漏らしていなければと後悔の念が押し寄せてくるが、もう終わっちまった過去の話だ。


 暫らく、ゴブリン達とにらみ合いが続く。そろそろ、俺も限界だと思ってたところに、丁度、旋回していた一匹がこちらに突っ込んできた。状況としては、俺はかなり切羽詰まっている。もう、思いっきり踏ん張ることは出来ない状態だ。しかし、まずはそれを冷静に対処。気張らず突く。そして、二撃目を加えようとした瞬間に固い衝撃が俺の足を襲う。


 後ろから回ってきていたもう一匹のゴブリンの棍棒が俺の足に叩きつけられていた。


 棍棒はとても厄介だ。内部に響く衝撃は、一気に体力を奪ってゆく。




 筋肉が強張る。いつもの俺には出来てるような動きが出来ない。悔しい、いつもの俺なら出来るのに。少し動こうとするだけで奴が、そう奴が俺の動きを阻害するのだ!



 そんな俺の事情なんかお構い無しに、ゴブリンどもは攻め立ててくる。必死にいなそうとするのだが、やはり多対一だ。あまりにも部が悪すぎる。



 いつだって、時は無惨にも過ぎて行くもんだ。時間がたつことは今の俺にとっては死刑宣告にも等しい。俺の下半身に込められた封印も決壊寸前だ。




 そして、とうとうその瞬間がやって来る。


 筋肉の緊張を一発でぶっ飛ばすかのような衝撃。それが、容赦なく俺の臀部へとクリーンヒットした。なんか、もう、いろいろと限界だった。



 そして、鳴り響く爆音。

 ブボゥワァンブヒァブヒャブフォブヒェ




 ほんの数秒のこと。しかし、凄まじかった。言葉では表せないような快楽が俺を襲う。ケツの解放感は、天にも登るような気持ちだった。思わず、快楽で腰が砕け落ちそうになる。



 それでも、俺は気を抜かなかった。俺は戦士だ。この程度のことで崩れ落ちるほどやわじゃない。直ぐに、辺りにを見回す。そして、さっさと何故か引っくり返ってるゴブリンどもを素早く始末すると急いで、森の木に隠れていそいそと着替え始めた。幸い誰も見てなかったらしい。



 ふぅ。リルにはこんな醜態見せられないな。


 だけどねリル。おじさんはリルが見てないとこでもこんな糞まみれになっても頑張ってるんですよ。帰ったら褒めてね。

 仕方なしに、替えのズボンに履き替えると、森に、脱いだズボンをぶん投げながらまるで俺は賢者の如く哲学について考えることにした。








 「こっしーに手ぇをあって♪おっしぃりふぅりふぅり♪」


 「リルちゃん、そんな動きは大人になってから練習すればいいんだから今はやっちゃダメよ。」


 「えぇ?なんでぇ?」


 「だってそれわ、あの、ほら、ね?そのぉ、愛しあう人とね、一緒にやるような動きだからね!」


 「でも、おいちゃんが東方の虎族ではこどものじょうそうきょーいくに使われるものだって言ってたよ!」



 「……えっ!?」



*******************






 残った薬草集めの依頼をこなしながら家路へと帰る。


 もう暗くなってしまった。リルとミリーナが心配してるかもしれん。早く帰らなければ。



 今日一日でかなり疲れてしまったが、なかなか効率良く依頼を達成することが出来た。


 今日はリルに何を食べさせてやろうか。


 高まる気持ちを押さえ付け周囲を伺いつつも、出来る限りの速度で俺は歩いて行った。焦りはいけない。大人な男はいつもCOOLに行動しなければいけないのだ。


 そして、やっと教会にたどり着く。そこには、俺を心配した、リルとミリーナが……、ではなく、何故かしょんぼりしているリルと、怒った様子のミリーナ。



 「ガゼル!あんたには話があるわ!大人になって少しは真面目な人になったと思ってたのに!」



 「え、えぇ!?」



 そして、何故か教育方針について怒られてしまった。おっさん、普通のことしか教えてないのに……。いったいリルのやつなにしでかしたんだよ。







 「お、おいちゃんより強い人っているんだね。」


 「あぁ、そうみたいだな。」



 「黙りなさい!」



 「「ス、スイマセンでした!」」

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