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第一話

 「おいちゃぁぁぁんっ!おっはよー。」


 「おう、おはよーリル。」


 最近の俺の朝はとっても賑やかだ。なんてったって、二人暮らしになったからな。


 「じゃあ、リルがお食事の用意しとくね。」


 それも女と二人暮らしだ。世の中の独身おやじどももうらやましがるに違いない。



 まあ、相手は5才の子供なんですけどね。


 ひょんなことから彼女を拾った俺は、彼女と一緒に暮らすことになった。名前は、リルラ。変な感じの名前だが、妖精族であるリルは伝統に乗っ取ってラ行から名前を選んだらしい。変な伝統だと思う。



 妖精族ってのは背中に四枚の虫みたいな羽がついている以外は人間とほぼ一緒だ。強いて言うとしたら、金髪が多いってことぐらいかな。ついでに言うと、リルは薄い水色である。


 「おいちゃん!今日の朝ご飯はなんでございましょーか!?」


 「今日の朝ご飯は、新鮮な魚肉を積めたパンにハムを使ってないのハムエッグでございまぁぁすっ!」


 幼い子供は小さい時の環境がその後の生涯の性格決めるらしい。だから、リルには元気な子に育って欲しかった。その為なんだ。だから、堕落したおっさんが元気に振る舞うこともしょうがないことなんだと思う。



 そのおかげか、リルは感情豊かな子になった。いや、元から明るい子だったのかもしれない。確かに連れてきた当初は何にもしゃべらなかった。当然だ。一気にいろんなものを失ったんだからな。だけど、段々。ホントに段々に喋るようになってきた。今では、ご覧の通りお喋りなくらいだ。


 リルは強いと思う。俺なんて、夢が叶わないと思っただけで堕落するようなやつなのに。この小さい少女はそれ以上のことを経験しつつも、元気にやってるんだ。順応性が高いというかなんというか。とにかく、リルはもうリル本来の明るさを取り戻していた。



 ナイフとフォークを構えているリルはこっちを見るとニコッと笑う。



 リルさん、確かにかわいらしいんですが、たかがハムエッグで涎を垂らすのはやめてください。まぁハム入ってませんけど。


 だけど、自然と俺も笑顔になっていた。


 リルが来てから俺の生活に色がついたと思う。毎日が生きていると実感出来る。悪くない気分だった。








*******************




 「おいちゃん、おいちゃん。今日はなにするの?」



 所変わって冒険者ギルドだ。無邪気に笑っているリルは、俺の頭をぺしぺしと叩きながら話し掛けてくる。まぁギルドってのは仕事提供場とでもおもってくれりゃあいい。


 ここはでは、仕事もとい、依頼に対してランク付けがされている。難易度ごと、もしくは報酬金ごとに分けられているのだ。ついでに言うと難易度はAが一番難しく、Fが一番簡単だ。



 そして俺のランクはCだ。小型の魔獣を倒せるレベルだと思ってもらえればいい。能力的には中の上。まぁやるじゃんみてーなレベルだ。このランクは適当なものなんかじゃなく、基本的にギルドが試験のようなもので着けてくれる。まぁ、所詮は試験だ。あくまで目安だがな。だから、受ける依頼自体は個人の自由だ。ランクなんかに縛られることはない。だからといって、自分より上のランクを受けると痛い目に合うだけだがな。


 例えば、Aランク。ここいらにもなると大型の魔物討伐ぐらいが平均的なレベルだ。普通は集団でやるような依頼だな。


 魔縦でいうと、例えば、そうそう、今のリルが持ってるような……


 「おいちゃんっ!これっ!これやろーよ!きんぐわいるどぼあの討伐だよ。でっかいやつみたぁい。」


 そうそう、そんな感じのやつね。体調3mくらいのイノシンさんね。あいつの体当たりヤバイよねぇ。


 どのくらいヤバイかと言うと、Cランク程度の冒険者が一人で行ったら一瞬で木っ端微塵になるぐらいヤバイよね。


 「おいちゃんなら瞬殺だよねぇ。だっておいちゃんは英雄さんなんだもん。」


 そういってリルはニパァっと笑う。


 この子は自分を救ってくれたこんなおじちゃんのことをマジで英雄だと思っているらしい。まぁ、俺が冗談で英雄だなんていっちまったからな。難儀な話だ。今では引くに引けない状態になっている。はぁ、俺はただのおっさんですから。


 でも、リルは、いろんなものを一気に失ったんだ。本人に自覚がないにしろ、精神的な拠り所を無意識に求めているんだと思う。だから、俺が英雄でなければならないんだ。幼いリルにとっては今、俺だけが支えなんだ。


 それと、どーもリルは勘違いしてるらしい。来た当初、震えて夜眠れなかったリルに何かしてあげようと思って昔、俺が好きだった英雄の話を聞かせてやってたんだが、それは全部、俺も出来ると思ってるらしい。あと、調子に乗って脚色しまくった俺の武勇伝とかな。あんまりにも嬉しそうに聞くから俺もつい年甲斐もなく熱弁してしまった。



 まぁ、そんなこともあり、それ以来リルは俺に出来ないことがないと思っているのだ。まさしく、本当の英雄のように。皮肉な話だ。英雄になる夢をあきらめて帰郷してきた俺が期せずして英雄になっちまうなんて。 


 もちろん俺はただのおっさんだ。リルのパンツをたまに頭に被るぐらい普通のおっさんだ。普通のおっさんがどんな基準か分からないけど、オ○ニーはブリッジしながらやるぐらい普通のおっさんなんだ。


 当然、出来ないことの方が多い。ましてや選ばれたエリート達がやるようなもしくは、集団でやるようなAランクだ。たかがCランクのおっさんなんかにゃやれたもんじゃない。どうあがいたって絶望だ。素直に断るのが一番いいと思う。


 「お、おいちゃん出来ないの!?」


 「貸せ、リル。こんな依頼一瞬で達成してやる。」



 ……だってカッコつけたいじゃん。おじさんなんだもの。

この世界では人間はあまり強くありません。魔法もありません。ドラゴンなんてでたら即死もんです。 だから、小型とはいえ魔獣を倒せるおっさんは強い方です。

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