第九話
第八話まで文を大幅に加筆修正しました。ですが、本筋は一切変わってませんので一応報告しておきます。
ふふふ、素材は揃った。準備は完璧だ。あとは、俺の料理テクを披露するのみ。先ずはソースだ。
細かく刻んだニンジンの元に砂糖を加える。刻まれた生のニンジンは砂糖と混じり合わさることによって香ばしさを増す。そして、いい感じに混ざってきたらレモンだ。本来なら混ざりあう筈もなかった甘味と酸味はなんかもういろんなものを乗り越えてソースを一段階上のものへと昇華させる気がする。まだ、ソースはこんなもんじゃ終わらない。俺はとりあえず、魚肉のミンチを加えることにした。一見、味全てを台無しにしているようにも見えないが、そんなことはない。引き締められた魚肉の旨みが砂糖とレモンによって解き放たれるのだ。
甘いとも酸っぱいとも言えるような匂いに生臭さが加わった所でこいつをすぐさまフライパンへと移す。
ここで、俺はソースを作ってた筈なのに汁っぽいものがレモンしか入ってない事に気が付くがすかさず大量のゴマ油を入れることによってそれを回避する。どんな不測の事態にも対応できてこそ真の料理人なのだ。
額を覆う大量の汗をグイッと拭う。想定以上に難易度の高い料理だ。
俺のいつも以上の本気さがリルにも伝わったのか隣でゴクリと唾を呑み込む音が聞こえた。
おいおい、リルさん。まだソースしかつくってないんだぜ。
フライパンは弱火でそのまま放置だ。まだ、全てが調和仕切ってないからな。
次はメインディシュに取り掛かる。先ずは、今回の目玉素材であるフォアギュゥルラァだ。
まな板にこいつを載せると間髪入れずに正面から垂直に殴り付ける。
特に意味はない。
あんまし形が崩れなかったそいつを今度は一転して撫でるように優しくスライスしていく。
料理とは力と技の調和を指し示すらしい。今俺が作った。
しかし、こんなもん序の口だ。俺の真価は味付けにある。先ずは、スライスしたフォアギュゥルラァを何となく近くにあった味噌につけてみる。
べチャリ
ヌットリとした感覚。電撃が俺の身体中を駆け巡る。これだ。これが調和だ。味見してないけど雰囲気が美味しいと言うことを語っている。やはり、間違って近くにあったワインに浸けなくて正解だった。俺の感は常に正しいのだ。
ある程度下味を浸けたら後はスピードだ。こっから先は食材と俺のガチンコ勝負になる。
光をも置いていくような速度でまな板にこいつを叩きつけるとそこらに転がっているもんで一気に味付けをしていく。塩、醤油、胡椒、そして梅。少し塩分が多い気がするが、もはや分量すら測らずぶっかけていく。
次第にまな板から現れてくる、そいつらは、他人の目から見ても一種の芸術作品に見えていたと思う。それぐらい素晴らしい出来だ。
あまりりにもの出来についリルが摘まんで食べようとするが、俺はそれを許さない。途端に不服そうな顔をしだすが、その顔はすぐに笑顔に変わることだろう。
何故なら、こいつはまだ未完成だからだ。
だがこいつはすぐに仕上げに入る。
こいつに……こいつに先程のソースをたらーりと掛けたら――――どうなると思うかね、リル君。
「ふわぁぁぁぁ、頬がとろけちゃいそうだよぉ。」
そうだろう、そうだろう。おじちゃんは何でも出来るんだ。
フハハハ見てろミリーナ
貴様が俺に膝まずく未来が目に見えるわ!
「食えるか!こんなもん!」
やっぱりダメでした。
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俺は人の気が少ないギルドで依頼を物色していた。しかし、どいつもみみっちぃやつばっかしだ。
最近のギルドは、静かだ。近頃の、不況と冬が近づいてきたのも相まってクエストなんか無く、あったとしてもすぐに誰かがとっていってしまうのだ。
「す、すいません、ガゼルさん。今は受けられるようなクエストは、あ、あるんです。一応ないにはあるんですが、報酬が安いと言うか高いというか。」
少し言ってる意味が解らんがこんな風にな。
しかし、こうなると困るのは俺である。
基本、俺は稼ぐという行為がクエストでしかできない。
だが、クエストが無くなるなんてことはあり得ない筈なので、今までそんな心配はしてなかった。だが事実として無くなってしまった。
はぁ、あまり気は乗らないがやるしかないんだろうか護衛依頼。
現状、この町のギルドに人が少ないのも護衛依頼のせいだろう。っていうか今受けられるのはそれしかないからな。
護衛依頼は少々特殊な依頼だ。何故なら、護衛対象である商人は、町から町へ移動しなければならないからだ。必然的に俺達自身も商人に合わせて動かざるを得ない。つまり、それはこの町を離れるという事を表している。
更に気が乗らないことに、この町から出ている依頼は隣の街へとしか出てないのだ。
俺は、あそこが嫌いだ。嫌なことも散々あった。みたいな田舎もんにはあの空気はきつすぎるのだ。
だから、なるべくあっちには行きたくない。
だからといって、遠出してまでクエストを受けても割りにあわない。なんてったって何日かこっちに帰ってこれなくなるのだ。当然、今の俺に何日間もリルを教会に置いておけるほど金がないので、必然的に受けることは出来ない。
……まぁしょうがないか。好き嫌い言えるような状態じゃないしな。どうやら、護衛依頼しか選択肢はないようだ。そうでもしなければ金を稼げないのだ。幸い、移動中の食料は商人受け持ちだ。道中は心配しなくていい。
まぁ、食費がかかるぶん報酬は安いが全体を通して見ればプラスだ。
それに、あっちの街にはこっちと違って、たくさん依頼がある筈だ。金に関しては心配する必要がないだろう。
「すまないが、護衛依頼を探してくれないか?なるべく、安全性の高そうなやつを頼む。」
「は、はい。分かりました。すぐに探してきます!」
ドッテドッテ
コテン
相変わらずシェラさんはそそっかしい。毎回何処かしらで転けるようだな。
……フム、水色か。
どうやら、彼女のレパトリーはたった8つしかないようだな。これは多い方なのだろうか?確かに俺は2つしか持ってない。そう思えば多い。だが待てよ、ミリーナのタンスには一見しただけじゃ分からないぐらいの量があった。やはり8つは少ないのか?
……クッ、危うく思考の波に呑まれてしまう所だった。いつもの俺ならこんなヘマしない筈なのにな。どうやら、俺は自分が思っている以上に参っていたらしい。毎日、心に言い聞かせてたじゃないか。大切なのは過去じゃない、今だ。今をしっかり生きるということが人生において最高のチャンスを俺に与えてくれる。
さぁ、しっかりと目に(パンツ)焼き付けなければ。
ふぅ。突っ込み役がいないのにこんなことをやっていても無益なもんだ。本当に参っているのはどうやら俺の精神なのかもしれない。さて、俺も色々準備があることだし早く帰るか。
リルもすぐに納得して準備してくれることだろう。




