第七話:小鬼を捜して………
今回は一度書く気を失って、かなり雑になっている部分があります。すみませんorz
あと、爺さんが書いてくれている外伝の方も今日投稿しますので、宜しくです。
ガサッ、ガサッ
バキッ
ガサッ
「つうかあの野郎、場所が漠然としすぎだろ………!」
俺と千尋は、あのクソ議員が言った裏山(と思われる場所)を歩いていた。裏『山』と言うだけあって 木々が生い茂り、日の光が当たらないような場所だった。道もないので、仕方なく周りに生えている笹を踏み倒しながら進んでいるような状態だ。
「陽が落ちる前に見つかるのか………?」
「まあ小鬼は特に警戒心強いし、こんな音をたてて歩いてたらホントに見つからないかも」
大河の懸念に答えたのは当然千尋だ。
「マジか………。ところで千尋さんや、一つ言いたいことがあるんだが……よろしいかね?」
「はいはい何ですか?」
「何でてめぇばっかり後ろを歩いてるんだよ!前を行け、前を!」
「だが断る」
「ふざけんな!」
「だって……私……か弱い女の子なんですもの……」
千尋が右手で大河の服の袖をキュッと掴み、その場にしゃがみ込む。わざとらしい上目遣いと、左手を口に当てるというオプション付きで。
正直、これがまた可愛かったりするのだが今は太陽系の外に置いておく。
「俺を一撃で沈められる女の子は『か弱い女の子』の分類に入らん!」
「だって……ねえ?」
二人ともこんなに前に行きたがらないのには理由がある。前に行くということは、道を作らなければならないということだからだ。
道を作るのは簡単そうに見えて(?)実はかなり大変な作業だ。笹を掻き分けるのはもちろんのこと。蜘蛛の巣をとる、邪魔な枝を折る、エトセトラ……。
一方後ろにいれば、前の人が苦労して作った道を通ればいいだけなのだ。
そりゃ言い争いにもなるだろう。
「……分かったよ、やるよ…」
はあ~、と溜め息をついて大河が先に折れ、再び作業に戻る。
「ごくろうさーん」
「うぜえ!」
~~~~~~~~~~
俺達が小鬼の捜索を始めてから、すでに3時間ほど経過している。だが今だに鳴き声の一つも聞こえない。まあ俺は小鬼の鳴き声なんて聞いたことないわけだが………。
「いい加減疲れたんだが……」
「がんばれー」
「棒読みでそう言われるのはすげえうざい………」
「知ってる。確信犯だもん」
「…………」
最早ツッコミを入れる気力がない。別に身体的にはそこまで疲れていないのだが、3時間も道を作りながら進むのは精神的につらい。そこをピンポイントでゴリゴリ削る千尋。
「だぁー……もう無理。休憩したい」
ある程度開けた場所に出た。そこで寝転んで休みたいと一瞬考えたらもうダメだった。
「まあいいんじゃない?がむしゃらに捜して見つかるもんじゃないし」
千尋もそれに同意したので、俺は遠慮なくその場に座り込んだ。休めるというのは精神的に大分楽だったので、道中で千尋にからかわれた恨みを返すことにした。
「どうでもいいけどよ……お前どうしてそんなに上から目線なの?」
「だって、僕は大河の先輩だよ?当たり前じゃない?」
「悪い、先輩としての威厳がなさすぎて忘れてたわwww」
「強制的に眠りにつかせるぞ?」
「すみませんでした」
すぐさま土下座に移行。俺弱っ!
だがマジで『おねんね(婉曲表現)』させられるわけにはいかないので、本気で謝ったら赦してもらえた。あぶねえ……。
「はあ~」
息を全て吐き出すような溜め息をついて、俺はホントに寝転がった。落ち葉がクッションになっていて、悪くない。
「どれくらい休む?」
「悪い、しばらくこのままにしてくれ」
「ん」
疲れた。
昨日、借金取りに『ひのき荘』に連れて来られてからちょうど一日経ったくらいだ。今の今までの時間が濃すぎて、あまり実感が湧かない。もう既に何日か経っているような気すらする。
ぼーっとしていると、俺の顔の横で千尋も座り込んだ。
ふわっと女の子特有の甘い香りが俺の鼻を刺激したことで、この状況……つまり、寝転がっている男の横に女子が座るという状況……が少々見た目的にアレなことに気が付いた。どうせこの場所で誰も見られる可能性なんてないのは分かっているが、俺の精神衛生上よろしくない。
「千尋、そこに座るのはちょっと……」
「ん、大丈夫。僕は大河を信用してる。
僕を襲う勇気なんてないへたれ野郎だって!」
「その信用のされ方は酷い!
わからないぞ?もしかしたら俺は今からお前を押し倒すような変態野郎かもしれないぞ?」
「そういう口調で言ってる時点で既に僕の言葉を肯定してるようなものだよ」
「それもそうか」
「うん、そうだよ………」
「…………」
「…………」
(なんか気まずいーーー!!)
余計なことだった、絶対。言わずに放置しとけばよかった……。よくよく考えればすぐに分かったのに………。
「…………」
「…………」
(駄目だ、なんかギスギスしてる。ここで先に話しかけることなんて出来ない!)
後から思えば、一言「ゴメン、変なこと言って」と言えば済む話なのだが、テンパっている俺には思い付くはずもない。
この状況は俺では改善出来ない。だが打破された。それも割とすぐに。
「ギャギャギャ!」
後ろから異質な鳴き声が聞こえ、俺と千尋は同時に振り返った。
そこにいたのは……大きさは50cm程度の生き物だった。赤黒い肌、所々に生えたボサボサの体毛、恐ろしい顔、口の端には牙が覗いていた。
そうつまるところ───
小さな鬼だった。
「ギャア!」
脱兎の如く逃げ出す小鬼。
「大河、ボサッとしてないで追うよ!」
「お、おう」
起き上がって駆け出す千尋と俺。だが当然鬼の方が足が早い。というか、それ以前にこっちは道を作らなくてはならない。向こうは木々の間をすり抜けるように走るー
「千尋!このままじゃ逃げられる!」
「んなもん言われなくても分かってる!ちょっと待ってて!」
二人とも走っているために、声は自然と大きくなる。その間も鬼と俺達との差はどんどん広がる。
「千尋、もう見失う!」
「………」
「千尋?」
千尋は黙りこくっていた。目をつむり、何かに集中しているように見える。
声をかけてはいけない雰囲気だったので、俺は道を作るのに集中した。
そしてわずか数秒後、驚くべきことが起こった。
千尋が宙を舞っていた。
人間とは思えない程の身軽さで跳躍し、鬼にあっと言う間に肉薄していた。
「ギャギャ!?」
後ろを振り向き、ギョッとする小鬼。
千尋は小鬼の前で着地し、器用に足を使って小鬼を転倒させた。それに馬乗りになって動きを押さえ付けた。
まさに、電光石火の早業だった。