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リバースソサエティ  作者: 人里桐
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第六話:格差

すごい………この俺が今だに毎週投稿出来てるなんて………奇跡だ!!

まあ千尋さんが割と気に入っているからこのペースを維持出来ているんだろう………。

ありがとう、千尋さん!!


「都会じゃねえか………」

思わず呟く俺の横で、千尋が不思議そうに首を傾げる。

「そうだけど………それがどうかした?」

「いや、『どうかした?』も何も……お前が鬼は人目のつかない場所に住んでるって言ったんじゃねえか」

「ああ……確かに言ったねえ」

今思い出した、みたいな雰囲気でそう言う千尋を見て思わずその場でずっこける俺。

「じゃあ何で『小鬼の殲滅』の任務地が都会であることに何ら疑問を抱かねえんだよ……?」

「ああ……だって良く考えてみなよ。普通鬼は見つからない様な場所にいるんだよ?」

「? ああ………」

「だから任務地が都会なんだよ」

千尋の言ってることには全く整合性がない気がする。ハッキリ言って意味不明だ。

ちゃんと理解すべく、俺はしっかり千尋に聞くことにした。

「ゴメン、よく分からないんだけど………」

「………もしかして、大河って馬鹿?」

「…………そこまで言われる筋合いはない」

「はあ……よく考えてみなよ。

いいかい?普段鬼は人目のつかない場所にいる。だから見つからない。つまり、見つかるときっていうのは人里(ひとざと)に下りて来たっていうことなんだよ」

「あ………そっか」

確かに考えてみれば当たり前だ。『人に見つかる=人に見つかるような場所に来ている』ということだ。確かにこれなら千尋が俺を馬鹿呼ばわりするのも───

「自分が馬鹿だということに納得した?」

「違う!お前が俺を馬鹿呼ばわりするのもわかると思っただけで、自分が馬鹿だとは思ってない!」

何で人の心を読んだ上でナチュラルにからかってくるんだ………。

「ねえ大河、十回『ピザ』って言って?」

「お前心の底から俺のこと馬鹿にしてるだろ?その後『肘』を指差して『膝』って言わせるつもりだろ?んなの誰だって分かる」

「え……?」

「何でそこで『こいつなら分かんないと思ったのに……。意外だわー』的な目で俺を見るの!?内容が濃すぎて覚えてないかもしれないけど俺達今日が初対面だからな!?」

いかん、完全に弄ばれてる………。

「さあ大河、遊んでる暇はないよ?そろそろ目的地だ」

「この話振ったのてめぇだろうがぁぁぁぁぁ!!」

思わず絶叫した俺を誰も責められまい………。



~~~~~~~~~~



「ここか?」

「そう」

俺達がいるのは、高級住宅地の一角。立派な庭付きの白い家の前に突っ立っているのだ。

どうやら依頼主は相当お金持ちのようだ。はっきり言うと、俺達は景色から浮いている様に思える。場違いなのだ。

「何か……凄い金持ちっぽいな」

と俺が確認半分疑問半分で聞くと、千尋はあっさりと凄いことを暴露しなすった。

「だってここ、某国会議員の家だし」

「マジか!?」

そうと聞いた瞬間、俺は数歩下がって千尋に言った。

「悪い、家に上がって話を聞くなら千尋だけにしてくれ。俺は外で待ってるから」

「え?」

「理由はいいから、とにかく俺は残る」

「……………」

そういうと、千尋はジイッとこちらを見詰めた。そして何か納得したような表情をしたあと、言ってきた。

「ハハーン、さては……その髪を気にしているね?」

「…………」

何となく顔を千尋から背ける。

俺の髪は銀色だ。いや、灰色と言ってもいいかもしれない。なにせ、『銀』と言うにはあまりにくすみ過ぎているからだ。

この髪は、普段から俺が疎まれる原因の一つになっているのは間違いないだろう。髪を銀に染めている人が居たら、『あまり関わりたくない』と思うのが普通だ。俺だってそう思うだろう。その『あまり関わりたくない』と思われているのが俺自身でなければだが。

この髪は生れつきなのだ。何故こんな変な色に生まれて来たかは知らないが。

思えば、千尋が特殊だったのだ。最初から何の気兼ねもなしに、俺に話し掛けて来る奴はそうそういない。居ても、ガムをクチャクチャと音をたてて噛み、強がっている不良だった。

つまり、コンプレックスなのだ。この髪は。

「……どうでもいいだろ。俺は残る」

「…………ん、分かった」

千尋はしばらくこっちを見て何か言いたそうな顔をしていたが、そう言うと普通にインターホンを押してくれた。

気を遣って、これ以上この話題に触れないでくれたのだろう。

『はい』

インターホンから聞こえたのは若い女性の声だった。今の国会議員の最低年齢は40歳とかだったはずなので、少なくとも本人ではないだろう。まさか本人の浮気相手とかではないだろうし…………。

千尋は「ふぅ」と溜め息を一つつくと、インターホンに向かって言った。


「……対非科学警察です」


『ああ、少し待ってて下さい』

千尋の言葉を聞いた瞬間、相手の声の温度が急激に下がったのが分かった。一応丁寧語ではあるが、それも形だけ。

「…………」

千尋は黙っている。馴れているのだろうか。だがその後ろ姿からは怒りなどではなく、諦念が見てとれた。

『チッ……やっと来たか』

「ただ今代わりました」の一言どころか、いきなりこちらを糾弾してきた。

流石に苛立ちを隠せずにいると、千尋がこちらに向かって視線を投げかけて来た。「何も言うな」と。

「……申し訳ございません」

『この奴隷共が……。まあいい、私は寛大なのだ。赦してやろう』

「ありがとうございます」

千尋が何の抑揚のない声で答える。

『裏の山に小鬼が住み着いているらしい。見つけ出して殲滅しろ』

「………はい」

どうやらそれしか言うことはないと思っているらしく、ブチッとインターホンが切れる音がした。

「……………」

千尋は黙り混んでいる。

「おい、千ひ───」

「さあ行こう、大河。裏山だってさ。さっさと終わらせて──」

「千尋!」

お互いに言葉を被せるように会話をしていたが、俺は堪えられなかった。さっき反省したばかりの大声を出してでも止めた。

「……何?」

こちらを振り向いた千尋の瞳には、何も映っていない。

ただ、深い、底の見えない闇。

こんなことは何度も在ったのだろう。千尋がいつからスレイブになったのかは知らないが、最早気にすることのないくらいには昔からやられていたことなのだろう。

だから自分では気付いていない……いや、気付いているのかも知れないがその心を見ないようにしているのか……。

だから俺は千尋にこう言うことしか言えなかった。


「言うことに従わなきゃならないのは分かる。けど、自分を見失うなよ?」


「……?」

千尋は首を傾げている。だが本当は俺の言った意味が分かっているはずだ。

スレイブはどうあっても逆らえない。だから、ただ相手の言うことを聞き、自分の気持ちを心の底で押し殺しているうちに『芯』がぶれて……その人がその人でなくなってしまうのではないか。

これは恐らく当たっている。

さっきの千尋の瞳は、そんな感じだったから。


昔の俺と、同じ瞳だったから。


「じゃあ行こうか」

「ちょっと……大河?待ってよ!」

俺は、千尋は千尋のままでいて欲しい。そう思った。




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