第三話:わざとじゃないんだ!
今のところ毎週投稿が出来ているものの、徐々に追いつかれつつあります。
もうストックが三つしかない(´;ω;`)
「じゃあ早速、仕事着を着るんだ大河。僕は自分の部屋で待ってるから」
「千尋の部屋ってどこ?」
「階段上がってすぐの部屋」
「OK、着替えたら行くよ」
「うん、僕も着替えて来るから」
割りとすぐに打ち解けた俺達は、早速仕事をしようという話になった。
いきなり行っても大丈夫か?と思い千尋に聞いてみたが、曰く「最初だし、いくらなんでもいきなり難しいやつはこない」とのことだ。
千尋が出て行き、早速着替える俺。仕事着は基本は黒。裾には白いラインが走っている。それをジッパーで前を閉じる、といったものだ。ズボンは同じデザイン。
仕事着は普通に着れた。だが問題は武装だ。
「あれ?この短剣どこに入れるんだ?」
仕事着として渡されたもののうちに唯一入っていたのが、刃渡り30cmほどの短剣だ。これをどこに装備するのかが全く分からない。
結局、右足に鞘ごと装着出来ると気付いたのは5分後だった。
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「お~い、千尋。入るぞ?」
慣れていない俺がそこまで時間をかけなかったのだから、千尋は当然着替え終わっているだろう。そう思い、返事を聞かずにドアを開けた。この時、千尋の「ああ!ダメッ!」という声を聞き逃さなければよかったと俺は後に後悔することになる。
ガチャリとドアを開ける。
広がる部屋の景色。
そして俺の目に映ったのは──
「へ………?」
たっぷり10秒は絶句しただろう。見えたものが完全に予想外だったからだ。
千尋だ。それはいい。普通だ。
中性的で可愛いとすら思える顔。
そして俺とは基本からして違うのかと思わせるような、健康的かつ白い綺麗な肌。
そして……男にあるはずのない胸。
下着を変えていたのだろうか?下はつけていたが上はつけていなかった。一番大事な部分は手でかろうじて隠れていた。だが、小さくはあるが確かにある慎ましやかな胸が……そこにはあった。
俺はボソッと言った。
「……女?」
「……僕がいつ男だと言ったよ?」
綺麗な肌、くびれた腰、慎ましやかな胸……間違えない、千尋は、女の子だったのだ。
思えば最初から不自然なところがあった。
『霧晶……千尋……。なんか女の子っぽい名前だな』『そうかな………?僕的にはもうちょっと女の子っぽくても良かったんだけどね』
…………。
俺はあまりの驚きに気付けなかった。千尋の発しているどす黒い怒気……いや、殺気に。
「……いつまで……」
「……ハッ」
千尋の殺意の篭った声を聞いてようやく我に帰る俺。だが手遅れだ。
千尋は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「いつまで見つめてるつもりだこのアホォーー!!」
「すみませんでした!」
意識を失う俺が最後に見たのは、唸りをあげて飛んでくる千尋の拳だった……。
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「…………」
「…………」
「………何か僕に言うことがあるんじゃないかな、大河君?」
「すみませんでした……」
意識を失って30分。持ち前の体の頑丈さのおかげか、割りと早く意識を取り戻した。
そして今。俺は絶賛土下座中なのだった。
「君は僕のことを男だと思っていた、だからあまり気にせず入って来た。そうかな?」
「おっしゃる通りです。千尋様」
「うん……僕がいつ、男だと言った?」
「……言ってません」
「そうだね。失礼だと思わないかい?」
「はい、申し訳ございませんでした……」
俺は小声で愚痴る。でも女とも言わなかったじゃないか、と。
「君に愚痴る権利があるといつ……錯覚した?」
「……すみません」
テンパっていた俺は、千尋がさりげなくいれたボケにもつっこめなかった。
正直こんな状況に陥ったのは初めてなので、対処の仕方が分からない。謝り倒すしかないだろう。だが、事態はまたまた予想外の方向に転がった。
「よし、許す!」
「………ゑ?」
「だって本気で反省してるっぽいし、これ以上謝らせてもなにもならないないしね」
「ありがとうございます!」
優しい!優しいよ千尋さん!
「まあ正直な話、僕が男に間違えられるなんてよくあることだし」
と、千尋は自嘲気味に呟いた。
ん?何か勘違いしてるみたいだから言っておこう。
「いや、最初から千尋が男だって勘違いして見てたから気付かなかっただけで……。こうして改めて見ると、千尋は可愛いよ?」
「!?」
ボッという効果音がつきそうなほど勢いよく赤面する千尋。
こっちを半眼で睨んでくる。だが口はにやけている。
「ふーん?今まで男と間違えてたのに、よくもまあそんなことが言えるね?」
「いや、最初に見たとき、大食いしてたから男だと思っただけで……」
「………ま、嘘じゃないととっておこうか」
よかった……。これでさっきの件も水に流してもらえたし、千尋の勘違いも正された……。
………ん?実は俺、かなり恥ずかしいことを言ったのでは……?
「いや~、一生で初めて可愛いなんて言われたよ……。
結構嬉しかった。ありがと」
ニッコリと万遍の笑みを向けられた俺は、頬をポリポリと掻きながら目を逸らした。
今のは反則だろ……!
心の中で絶叫する俺。不意打ち気味に向けられた笑顔は、サンサンと日の注ぐ中で咲く向日葵を思わせた。
「じゃあ行こうか!」
千尋は何事もなかったかの様にそう言うと、立ち上がって階下に歩き始めた。
「……ちょっと待てよ!」
ずんずんと進んで行ってしまう千尋を俺は慌てて追いかけた。
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「まあ最初はこんなもんだよ」
「…………」
依頼書に書いてあったものを見て俺は唖然としていた。千尋は「こんなもんだよ」とか言ってるが、俺にとって全然「こんなもん」じゃ済まなかった。
『内容:小鬼の殲滅』
いきなり人外じゃねえかよ………!
爺さんの意見で、主人公にラッキースケベをさせてみました(笑)
楽しいですね、主人公いじり。