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リバースソサエティ  作者: 人里桐
CURTAIN RAISER
21/27

第二十話:憂慮すべき

二話連続で毎週日曜投稿できたぜ! やったね!!


………はい普通ですね、すみません。


今回キリがいいので短めです。


「アマタさん、話があります」


時間は夜7時。秋山と話した後のことだ。まだ夕飯は食べていない。

俺達はアマタさんのラボを訪れていた。


「ん? どうしたのだよ、そんなに改まった感じで」


相変わらず機械の軋む音やモーター音でうるさい部屋の中に、俺達とアマタさんはいた。


「今日の任務のことで相談があるんだ……」


俺の言葉を千尋が継いで話す。


「は、はあ……」


まあ流石のアマタさんでもいきなりこう切り出されては訳が分からないだろう。アマタさんも今日の任務のことなんて鬼を一人倒すということしか聞いてないだろうから。


「実は──」




~~~~~~~~~~





「方法、なぁ………」


ポツリと俺はそうぼやいた。

『ひのき壮』に帰る途中、俺は「なんとかする」方法を考えては、どれもしっくりこなくて溜め息をつくというのを繰り返していた。


「あんなに大見栄を張ってたくせに、随分と後ろ向きな台詞だねぇ」


そう言いながら、千尋はニヤリと口元を歪めた。


「うっせぇ、これから考えるんだよ」


しかし、そうは言ったものの、思い付かないのは事実だ。


「千尋、何かいい案ない?」


というわけで、千尋に意見を求めてみた。もっとも、会話をすることで固くなった思考をほぐす程度のことしか期待してなかったが。


「うーん……()に掛け合えば?」


千尋は数秒唸ってからそう答えた。

その返答に俺は驚きを隠せなかった。


「上って……聞いてくれるわけがないだろ? お前の方が分かってるだろ……」


俺は初日のことを思い出す。


疑問を抱いただけで舌打ちされ、

たしなめると殴られ、

反抗すると発砲された。


思い出すだけで悍気(おぞけ)が走る。あの目は同じ人間を見ている目とは思えなかった。使えない『物』だと思っている目だ。

()とはあの眼鏡の男などのことを指すのだろう。とてもじゃないが無理だ。あいつらは俺達のことを道具としか考えていない。俺達の交渉なんて持ち掛けることすら出来ないかもしれない。

そんなことを千尋が分からないはずがない。少なくとも俺よりは長くスレイブにいるのだから。


「うん、でも方法がないわけではないんだ」


「そうなのか?」


千尋はそういうが、正直想像もつかない。


「あんまり何回もやらない方がいいんだけどね……」


千尋はそう前置きしてから言った。



「アマタなら出来るんだよ。それが」





~~~~~~~~~~





「──というわけでして」


それを聞いたアマタさんは一瞬顔を曇らせた、気がした。だがアマタさんはニヤリと笑うと言った。


「アハハハーー!! その程度のことなら大丈夫なのだよ! この天才、アマタに全てお任せなのだよ!」


横で千尋がホッとした顔を見せた。アマタさんはいつも通りだ。やはり俺の気のせいだったか。何故アマタさんが上と掛け合えるのかは疑問だが、そこは色々あるのだろう。


「私が今日中に伝えておくから、明日また秋山嬢のところに行くといいのだよ」


アマタさんはそこまで言うと、こう付け加えた。


「話を聞くと、秋山嬢は問題を抱えている気がするのだよ」


「え?」


俺と千尋は思わず顔を見合わせる。本当だろうか、とその顔は言っているような気がする。俺がそう考えているからそう見えるだけかもしれないが。


「考えてもみるのだよ。秋山嬢はタイガ嬢と二人暮らし。つまり現在御両親と別居、あるいは御両親が他界したかのどちらかなのだよ」


「………」


確かにそうだ。タイガのことで頭がいっぱいで、思考がそこまで回らなかった。


「後者の場合は大体親戚の家に引き取られるか保護施設に入るかなのだよ。

前者なら分かるが、普通の一軒家なのだろう? しかも町外れのだ。普通子供との別居でそんな場所を与えるだろうか? 私なら与えないのだよ」


そこまで言うとアマタさんは一度間を空けた。



「秋山嬢は何か問題を抱えている。タイガ嬢のこともあるが、そこも留意しといて欲しいのだよ」




~~~~~~~~~~




「ふぅ……」


時間は朝の6時。俺は基本的なトレーニングを済ますと、部屋に戻ってシャワーを浴びた。朝飯を食べるのには流石に早い。というか食堂は6時30分からしか空いていない。俺は畳の上にテキトーに体を横たわらせた。


「問題……ねえ」


思わず独り言を漏らす。タイガの問題と秋山本人の問題。秋山のはおそらくかなり私的なことだが。


(俺はどうすればいいだろう?)


俺は人との交流に関する経験値が圧倒的に不足している。喧嘩ばかりしていたせいでそちらの方面は強いはずだが、それすら千尋に劣っている。

俺は何が出来るだろうか。


「そんなの考えたって答えは出ないよ」


「ち、千尋!? いつの間に……?」


上から声が聞こえたので見てみれば、千尋がすぐ傍に立っていた。「やっ」と片手を上げて略式的な挨拶をした後、千尋は続けた。


「さっきご飯食べようって誘いに来たのに全然返事しないんだもん、大河」


「ご飯って……もうそんな時間か」


いつの間にか長針は『6』の字を指している。考えていたせいで千尋の声に気が付かなかったらしい。


「すまんな」


フッと力を入れて立ち上がると、千尋が横でニヤニヤと笑っている。


「な、何だよ……」


その笑みに嗜虐的なものを感じたので、警戒しながら尋ねた。


「いや、らしくないなと思ってね。大河は自分の思うがままに行動すればいいと思うよ?」


「いや、何で俺が考えてること分かって──」


「大河は考えてることが顔に出るもん」


「…………」


俺、そこまでわかりやすい表情してたのか………。それにしても、思うがままに行動、か……。


「そうだな、深く考え込むなんてのは俺の柄じゃない」


ちょっと悩み過ぎたようだ。俺は自分でそう思い、気持ちを入れ替えた。


「ところで千尋さんや」


ただ、手玉に取られたままではなんか悔しいので、千尋に仕返しをすることにする。


「ん? 何?」


「俺が思うがままに行動するのが『らしい』と言うなら、平素から俺のことを考えなしで突っ込む馬鹿だと思ってるのかな?」


「……………」


沈黙が、続く。千尋は目を逸らし、冷や汗をダラダラと流している。


「………アハハ」


結局作り笑いでごまかされた。

まあこれでおあいこだろう。俺にはそんなちっぽけなことでいじり続ける趣味はない。


「まあいいや」


そう言ってとりあえず千尋を作り笑いの呪縛から解放して、食堂に向かった。





来週は短編の投稿になると思います。

千尋の休日を三人称で書いてみています。爺さんが千尋が一番好きなキャラだと言うので………。まあ初挑戦ですがそちらも読んでもらえると幸いです。予定通り投稿出来るか否かは別にして………。

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