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一衣帯水  作者: 衣牡李
18/19

拾漆:対話

執筆不可能となりました衣牡李に代わり、サークル内他メンバーの一人が続きを書くことになりました。よろしくお願いしますm(__)m


 その子供っぽい顔に依世は苦笑した。


「俺の顔がそんなに面白いか?」


 不意に槹也の冷ややかな視線が依世に注がれる。

 菓子を座卓に置いていた香弥が、くすりと笑う気配がとれた。


「いや…我が家の孟冬殿には無い表情だな、と思って」


「『孟冬』か。

何で子供にそんな大役負わせてんだ?」


「下弦では長子が家督を継ぐことが絶対視されている」


 硬い、微かな音をたてて湯呑みが置かれる。


「女だの男だの、病弱だの壮健だのは関係ない。…正室腹だろうがなかろうが、もな」


「へぇ」


 槹也は適当な相づちをすると、湯呑みを傍らに移動させようとして縁を指で挟んだ。


「驚いたか?」


「え?」


 いきなり思いがけない質問をされ、手から湯呑みが滑り落ちる。

 あっ、という誰かの呟きの直後、湯呑みが畳の上で跳ねた。


「大丈夫ですか!? お茶がかかりませんでしたか?」


 瞬時に香弥が反応する。

 差し出された手の小指に包帯が巻かれているのを槹也は見た。


「あ、いや、空だったから…」


 それより、と座卓の上に湯呑みを戻して槹也は依世に向き直った。


「『驚いた』って、何に?」


「孟冬が若年者だったことにだ」


「いや」


 槹也はさらりと答えた。

 別に同じくらいの歳の少年だったから驚いたわけではない。

 七歳や八歳の幼い子供を擁立し、回りの人間が政権を握る、という話は現世界では天皇などによくある。

 ただ、孟冬が現世界での知り合いだったから…葛城涼だったから困惑しているのだ。


 あの雰囲気、目。

孟冬が自分の目的人物だと直感した。


「ところで孟冬とあんたは…どういう血の繋がりなんだ?」


 その問いに、依世は僅かに考え込む素振りを見せた。


「どこから説明していくべきかわからない。…この国には上弦と下弦という派があるのは知っているか?


 ああ、と槹也が呟くように答える。


「そう言えば昨日の尼さんが上弦出で、あんたの義理お姉さんだってことを本人から聞いた」


「では話は早い。玲浄院様は私の従兄にも腹違いの兄の奥方にもあたり、孟冬――つづらの母上でもある」


「じゃあ、あんたの母親も上弦から嫁いできた、てこと?」


「そうだ」


 俄かに依世の顔が険しくなったような気がした。


「私の母は先々代の側室だった」


「先代の他に兄弟はいないのか?」


「…そういえば言い忘れていたが、向こうの統率に嫁いだ姉がいた。先代の実妹だ」


「『いた』…って?」


「亡くなった。

…今となっては昔のことだが」


 今や香弥は部屋から去るのも忘れ、何故か心配そうな顔で依世を見ていた。


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