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【自信作】心に「オジサマ」を飼うお嬢様のマナー~とんでもない名家のお嬢様なのに、気づけばクソボケ扱いされていました~【毎日投稿】  作者: ながつき おつ
第一章

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4/5

3話 思考整理

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 さて、ここが「ドレスよりスニーカー」の世界だと判明し、僕が悪役令嬢だと認めた上で、これからの人生どうやって生きていくか、方向性を決めよう。


 物語のメインはあくまで高校二年生からだ。サブキャラの幼少期のことなんてほぼ描かれていない。


 それでも落ち着いて、順序立てて行けばきっと大丈夫。


 僕はどうしたいか。かなにどうなってほしいか。


 まずは大きな感情から、順に思い浮かべていく。



 前提1 悪意を見てみぬフリはできない。


 これからかなは、この一見優しそうな専属ナニーの、歪んだ悪意に晒されようとしている。


 そんなの、大人として許容できるわけがない。


 子供にはなんの悪意にも晒されず、ただ幸せに笑っていてほしい。愛情深い親の元で、すくすくと育ってほしい。


 そう思うのは当たり前だ。


 ……そうだな。せめてかなが悪意と戦える歳になるまでは、僕が悪意の盾となろう。



 前提2 かなの人生の邪魔をしたくない。


 かなは、可能性に溢れた素晴らしい赤ちゃんだ。僕という異物の存在は、かなの精神衛生上あまりよろしくない。


 だから、表に出てくるのは最小限。専属ナニーが居る時だけにしておこう。



 前提3 かなには女性としての幸せを掴み取ってほしい。


 原作のエピローグでは、白佐藤かなは生涯独身の道を進むと描かれていた。

 

 なぜ白佐藤かながその道を進むことになるのか。それは、妻が仕掛けたある種の「ざまあ展開」の結果だ。


 物語では、かなは双子の姉と別れ、父親のいる「アメリカン」という国で暮らすことになる。ああ、アメリカンというのは、にっぽんと同じでパラレルワールドだから、それが正式名称ね。


 別に海外で父と暮らすこと自体はなんの問題もない。父は人格者で、いわゆるスパダリと描写されるような人だからね。


 ただ、父の近くには、かなにとって危険人物である、この専属ナニーも同行するのだ。


 彼女はとても優秀な人らしく、今は僕たちの専属ナニーをしているけど、本来の役割は父のお手伝いさんらしい。それも、雑用からどんどん成果を挙げ、有能さのみで信頼を勝ち取り、這い上がってきた人でもある。


 妻の原稿にも、父の仕事、プライベートの両方を管理する、一番身近な人と説明があった。


 しかし、いくら有能だろうが、彼女の心にはとんでもない悪意が備わっているのは確かだ。一見図書委員のような大人しそうな雰囲気を持つ彼女だが、見た目と性格はかなりアンバランスなのだ。



 なぜそんなことをするのか。


 原因は父への歪んだ恋心だ。有能でありながら、そんな幼稚さをも兼ね備えている存在。それがあの専属ナニーの正体だ。


 彼女はまず、母の「とある弱点」を利用し、母と父の関係にすれ違いを起こさせる。


 そのせいで夫婦間が上手く行かず、そのことで傷ついている父の心に常に寄り添い、自分という価値を上げる。


 それから、父の血が入っているかなを引き取り、一緒に子育てをすることで、擬似的な夫婦関係まで楽しむ。


 そのうえで、かなに産みの母を憎ませるような嘘まで教え込んでしまう。


 大まかな彼女の計画は、こんな感じだ。



 物語では、見事に主人公ちゃんが我が家のややこしい問題を丸ごと解決してくれるのだが……


 それは、主人公ちゃんの親友である、ゆりのためだ。救う対象として、かなは入っていない。


 それもそのはず、かなは悪役令嬢だからな。


 かなはエピローグで「地雷女」としての噂が広く広まり、この専属ナニーとともに見習いからやり直すことになる。そして、かなと彼女は生涯男からは愛されず、独身の道を進むことになるってわけだ。


 もしこのルートに入ってしまうと、かなが女性としての幸せを掴む機会がなくなってしまうかもしれない。


 僕の力で、なんとしてでもそうならないように頑張ってみよう。

 


 前提4 主人公ちゃんが解決するよりも早く、家族仲良くしたい。


 物語の筋書き通りならば、現在父と母は、微妙にすれ違っているはずだ。お互いに想い合っているのに、相手が自分の事を想っているのかを信じられていない。


 これも原因は専属ナニーのせい。


 彼女は、完璧令嬢とまで呼ばれていた母の唯一の弱点を偶然知ってしまい、それを利用して二人の関係を歪ませているのだ。


 母の弱点、それは――機械に弱いこと。


 妻の原稿ではその詳しい方法については触れられていなかったが、なんとなく想像することはできる。


 例えば、父に「奥様からは絶対に電話がかかってきませんね。もしや、愛情が……いえ何でもありません」などと含ませた言葉を散りばめたり、母には父がいろんな女と楽しそうに海外で暮らす合成写真を送ったりと、やろうと思えば色々できるだろう。


 だから、僕は専属ナニーの一挙手(いっきょしゅ)一投足(いちとうそく)に気を使わなければならない。もし具体的な手段が分かれば、対処法も分かるかもしれないからな。


 

 前提5 妻の描いた世界観を楽しみたい。

 

 全ての問題が解決したら、僕はかなの心の奥深くに引っ込んで、ゆっくりかなの人生と、妻の描いた世界を楽しませてほしいと思っている。


 せっかく転生したのだ。愛する妻の描いた世界を人生をかけて楽しみつくしたいと思うのは、自然な思考。死人の僕のできる最高の余生の過ごし方だろう。


 それにだ。そもそも、まだ妻の書いていた物語は未完成だった。僕が読んだ原稿は初稿(しょこう)初稿(しょこう)だからね。キャラの詳細な見た目や設定なども、まだ未定な部分も多かった。


 いつもの流れと同じならば、あそこから改訂(かいてい)推敲(すいこう)、校正を重ね、ゆっくり完成度を上げていくはずだ。


 だけど、僕は「ドレスよりスニーカー」を妻が完成させる前に、事故で死んでしまった。


 物語の大まかな流れしか、僕は知らないってわけだ。


 ただ。


(もしここが完成された「ドレスよりスニーカー」の世界だとすれば……?)


 僕の読んだ原稿の行間にも、おそらく、色々な物語が詰まっているはず。


 あの時完成していなかった部分を、僕は隅から隅まで楽しみ尽くしたいのだ。


 さて、とりあえず今思いつくのはこれくらいかな。



 ……うん、方向性は決まった。


 できる限りかなの邪魔はしないが、悪意の盾にはなる。これは確定。


 そして、その他の問題に関しての解決策として……諸悪の根源である専属ナニーさえなんとかなれば、全て上手く進むはず。


 そして、その対処法は……僕は妻の作り出したキャラクターたちを信じることにする。


 もっというと、父と母を信じることにする。


 父も母も、キャラ設定として有能な人物ではあった。今はお互いの歯車が噛み合っていないためこんなことになっているが、本来頼れる人だ。


 だから、僕のすることは……


「おぎゃあ!」


 ちょっとでもこの専属ナニーに違和感を持ってもらう。


 きっと少しの違和感から、この人の悪意を見抜いてくれるはずだ。



感想、ツッコミ等、じゃんじゃんお待ちしています。


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