15話 約束する 3/3
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僕のお姉ちゃん、三女は、なんというか、こう……言い方をマイルドにすると、姉御肌で、独特の哲学を持つ人だった。
『そう、自分という生き様で、相手を削るんだ』
『ダメだと思った時、意外と一歩なら前に進めるやつもいるんだ。だから、私は二歩進む』
『姉たちが言っているのは、全部嘘だ。あの二人は“自分ルール”に縛られているからな。いいか、弟よ。この世には、破ってもいいルールがたくさんある。それをしっかり見極めるんだ』
ああ……懐かしい。お姉ちゃんが言っていた言葉の数々が、今なら鮮明に思い出せる。
喧嘩っ早いし、血を見ると興奮する危なさを持つ人だけど、何をやっても優秀で、我が家の姉妹の中で唯一旦那さんをもらい、幸せに暮らしているくらい、いつだって生き方が上手い。
姉妹の中で一番、まっすぐなブラコンで、ダセえ生き方を何より嫌って、お気に入りのバイクで僕を色んなところに連れ回してくれた、面倒見のよさを持つ。
そんなお姉ちゃんが僕は大好きだったけれど……子供にはちょっと刺激の強い人でもある。
でもまあ、かななら大丈夫だろう。かなは幼くても、しっかり自分というものを持っているし、そのうえで柔軟さまで兼ね備えている。
本来なら刺激が強すぎる三人の姉たちの記憶も、かななりに上手く使いこなしてくれるはずだ。
その日一日、僕は懐かしさにふけっていた。
その日の夜のこと。
僕とかなは心のなかで、対面していた。
(ねえ、オジサマ)
ん?なんだい?
(あの時、オジサマと私が一体化したようなことがあってから、オジサマの考えていること、気持ちが、よりはっきり理解できたの)
そっか。実は、僕も同じなんだよ。
(その時ね、なんでオジサマがかなの一部とならないのか、分かっちゃった)
……。
(オジサマにはお母様やお父様みたいに、しっかりとした軸がある。大切なものを守りたいって気持ちが、とっても強い)
そうかもしれないね。
でも、なんでかなは、ちょっとだけ僕に怒っているの?
(そう、別に大切なものを守りたいのはいいの。でもね、オジサマは自分のことを蔑ろにするクセがあって、自分の命を軽く見積もるクセがある。それが、かなは許せない)
それは……痛いところを突くね。
(うん。でもね。それはオジサマにとって、とっても強い軸だから、きっとかなが何を言っても変わらないっていうのも、なんとなく分かる)
……。
(だからこそ、かなは決めたの。かなは自分のことを、絶望的に大事にする!!!)
えっと……どういうこと?
(だって、やっぱりオジサマはかなの一部で、かなはオジサマでもあるもん。だから、自分のことを大事にすれば、オジサマが自分のことを大事にすることと一緒でしょ?)
ふふっ、たしかにそうかもしれないね。
(だから、かなはいっぱい、いいいっっぱい!自分のことを大事にする!それはきっと、かなにしかできないことだよ!かながオジサマを幸せにしてあげるから、覚悟してね!)
そうだね。僕もかなには幸せになってほしいし……いいね、その考え。
僕たちは、もっとお互いのことを大事にしていけるってことか。
(それでね、かなもオジサマもいっぱい、いっぱい幸せになって、オジサマがかなのことを心配する必要がなくなるくらい立派なレディになったら。その時は、オジサマもかなの一部ってことを潔く認めてね!)
そっか、それがかなの望みなんだね。
うん、そうだね。どうも僕はかなりの心配性みたいだ。ちゃんとかなが幸せを掴み取るまで、完全に安心できないみたい。
それこそ水と油みたいな関係だ。僕が心配事を抱えている限り、僕は水に溶けない油となってしまう。
そんな僕の一番の心配事。それはね。
――白佐藤かなはその後、「地雷女」としての噂が広く広まり、生涯男からは愛されず、独身の道を進むことになる。
心配性な僕は、この未来が来ることを、とっても恐れているみたいなんだ。
……そうだなあ。
君がちゃんと人を愛して、愛され、女性として幸せを掴んだ時。その時は僕も安心して君の一部だってことを認めるよ。
(言ったからね!約束だよ!)
ああ、約束だ。
心の中で僕たちは、小指を交わした。
それからは、僕たちは眠れるまで、ただただ楽しいことだけをいっぱい話した。
小学生になったら、オジサマの記憶を上手く使って、「生きた経験」にしていきたいという目標。
女性としての幸せっていうのは、お姉様やお母様と結婚することで手に入れる幸せでもいいのかっていう交渉。
今日あった出来事や、家族や友達、どんぐりの話。
いつの間にか、自然と眠りについていた。その寝顔は、いつもより幸せそうだったそうだ。
それから――
かなは無事幼稚園を卒園し、小学校へ入学。
母が考える、にっぽんの小学生時代を無双するための「4種の神器」である、ピアノ、水泳、そろばん、お絵かき教室。それらをしっかり習っていたゆりとかなは、母の狙い通り、一目置かれるような立ち位置となっていた。
かなはその時期を、僕の記憶や経験を利用し、どんどん生きた経験にしていくことに費やす。
ただし、どんどん男勝りになっていったのだけは、少しだけ僕の気にするところだ。
それから、無事に中学生となる。
ルールが厳しい名門女子校だ。男勝りで型破りなかなには、窮屈な場所ではあった。
ただ、ずっと続けていた品格の授業や、ダンスなど、色々なお稽古のおかげで、問題児ながらに、多くの人に慕われる存在と成長していた。
そうして、なんとか卒業章賞をもぎ取り、ドレスよりスニーカーの舞台である私立華凛主真高等学校へ入学。
そこで一年間を過ごし、問題児として扱われながらも、なんとか進級することができた。
「さあ、ついに『ドレスよりスニーカー』の本編が始まる学年。2年になりましたわ!オジサマと一緒に、奥様が描かれた世界を楽しんでいきましょうか!」
❀❀❀ 第二章 ❀❀❀
白佐藤かながオジサマの家族に悪影響を受け、自分にしかできないことを見つけるまで
完
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