プロローグ
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あなたのストライクゾーンど真ん中にドロップキック!何も間違ってないでおなじみのかなちゃんでーす。かーなかなかな!
「ひゃっほう!」
ついに、ついに!
あの窮屈でつまんねぇ都内名門お嬢様中学から脱出できました!卒業証書さえ貰えば、もうこっちのものだ。
はー、ほんと、これであの規律でギッチギチの学校に二度と行かなくてすむと思うと、ウッキウキが止まらねえな!
ほんと、よく耐えたよね、私。
だいたいあの女子校、今どき不純異性交遊禁止ってどういうつもりなの。
「じゃあ同性ならオッケーですか!?」
って質問に行った私を鼻で笑った、カマキリ顔のあの教師だけは、絶対に許さないから。
女の子を愛でたいという私の気持ちは、純度百パーセントの美しい感情なのだから。
……でも、卒業した今となっては、些細なことか。
無理やり私のメイクを落としやがったカラスみたいなあの教師も、ヘッドフォンを没収しやがったクマみたいなあの教師も、ゲーム機を没収しやがったキツネ顔のあの教師も、寛大な心で許してやりましょう。
「ふふふっ、これでようやく私も大人の女の仲間入りだ!覚悟してなさい、オジサマ!」
私は心の中のオジサマに語りかける。
だいたい、私の中のオジサマも頑固なのだ。
『君がちゃんと人を愛して、愛され、女性として幸せを掴んだ時。その時は僕も安心して君の一部だってことを認めるよ』
まったく、オジサマだって私の一部なのに、往生際の悪いこと。
前世があるくらい、ただのハーフと似たようなものでしょうに。
「ただいまあそばせー」
そんな天才お嬢様アイドル(自称)の「白佐藤かな」がルンルンで家に帰り、玄関の扉を開く。
すると……
「……ちゃ、ちゃうやん」
母が鬼のような形相で、私をお出迎えしていたのだった。
「関西出身でもないのにその関西弁をやめなさい!あなた一応名家のお嬢様なのよ!そろそろ白佐藤家のお嬢様という自覚を持ちなさい!」
くそ!学校のやろう!親に伝えやがったな!
こ、これは……早急になにか言って誤魔化さなくてはっ!
「お母様!違うんです!全部前世のオジサマが悪いんです!かなちゃん何にも悪くない!」
「前世はただの弱者男性でしょうが!」
「お母様!?」
やばい!いつも綺麗で冷静で、美しい言葉を何よりも大切にしているお母様のお口が、激烈に悪い!
お母様も私の前世のオジサマにはとても感謝しているはずだ。それでもこの言い方ってことは……
これは、ガチギレしてるパターンだ。
私は知っている。お母様が強火の時は、何をしようが許してくれない。
こういう時は……逃げろっー!
「グエッ」
お母様は無駄な動きの一切ない美しい所作で、私の自慢のふわふわピンク髪ハーフツインを掴んだ。
「娘の行動なんてお見通しよ。さあ、卒業式を途中退場してラーメンを食べに行った件について……弁明はあるかしら?」
美しいアイスブルーの瞳が私を射抜く。
……それにしても、いつ見てもお母様は美しいなあ。いい匂いがするし、指先一つまでビシッとして品があるし、ピンクダイアモンドに光る長い髪の毛も艶があってなんかエロいし……やっぱり私、お母様のこと大好きだわ。
母親としてだけではなく、女性としても。
うん、我が母ながら、マジ性癖に刺さる。
「ぐへへ……」
「あら?この状況でよだれを垂らすなんて、随分余裕じゃない?それに、いつも言っているでしょ?実の母や双子の姉に性的な視線を向けないでって」
「……はっ!?つい見とれてしまった。違うんですお母様!私ってお腹が空くとわけわかんなくなるじゃないですか。だから、ちょっとラーメンをお腹にぶち込みに行っただけなのです!」
「その“ぶち込みに”っていう言葉遣いについては、また後で怒るとして……そんなので言い訳が成り立っていると思っているのかしら?」
それからお母様は、やれ品位がどうたら、やれ優雅さとはどうやら、やれ教養とはどうたらなどを、徹底的に私に叩き込み始めた。
お母様のお口から紡がれる美しい言葉を右から左に聞き流しながら、私は思う。
それにしても、昔は「氷の令嬢」なんて呼ばれていたお母様が、これだけイキイキと娘を怒れるようになれて、本当に嬉しい。
それも全部、私の中にいるオジサマのおかげ。要するに私のおかげだな!
……ま、正直に言うと、あんまり小さい頃のことは覚えてないんだけどね。
かなちゃんは今を生きる女だから、ちかたないね。
「あなた、どうやら庶民の皆様から『クソボケお嬢様』って言われているのよ?ホント、情けない……だからね。あなたはもう少し猫を被ることを覚えなさい?分かった?」
「はい!完璧に理解しました!要は、いつでも素直な私は最強に素敵ってことですね!」
「全然違う!はあ……今からもう一度、礼儀作法について徹底的に再教育しますからね」
「うげっ!」
お母様、教育に関しては厳しいんだよね。
でも、こんなダメな娘を一向に諦めずにかまってくれるところも、大好き。いやんいやん。
「かな。中学までは義務教育だから、こんなあなたでも卒業できたわ。でも、高校からはそんなのではいつまで経っても卒業できないわよ?」
その言葉で、嫌な事を思い出してしまった。
私は春からとんでもない高校に通う予定だ。
私立華凛主真高等学校。名門のお嬢様、御曹司と、各地方から集められた天才たちが集う名門学校だ。
あの高校は特殊だ。にっぽんを支える真のカリスマでないと、決して卒業できない。
特徴的なのは、超実践的なカリキュラムだけでなく、カリスマレベルという厄介な……
「あっ!やばい!お母様!時間です!愛しのお姉様とのラブコメに遅れてしまいます!」
「ああ、今日はゆりと狼牙君とお出かけにいくんだったわね。ちゃんと狼牙くんの言うことを聞くのよ?」
「はーい。でも、狼牙も私の許婚なんだから、もっと私を甘やかしてくれてもいいのに……って、やばい!いってきまーす!」
「狼牙くんはこれでもかってくらいあなたを甘やかしてるわよ……」
その言葉は、すでに外に走り出していた私の耳には届かなかった。
さて、何がどうしてこの「クソボケお嬢様」が生まれたのか。
それは、かなが生まれた時まで遡ることになる――
❀❀❀ 第一章 ❀❀❀
白佐藤かなが産まれ、オジサマが諸悪の根源をぶっ倒すまで
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