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7.ひとやすみ

 森には川が流れているので、水に困ることはない。

 木々の屋根が途切れた広場のような場所では、誰にも邪魔されずひなたぼっこができる。


 というわけで、わたしとジャンは森の中の広場で休憩中だった。

 さっき熊にもらった魚を焼いて食べると、さすがにお祝いにとくれた魚だけのことはあって、すごく美味しかった。


「まだ着かないのか?」


 倒木の幹に並んで腰掛けているジャンが、やや疲労を滲ませた顔で息を吐く。


「あと半分くらいかなぁ」

「は、半分っ!?」


 ジャンは俯きがちだった顔を上げて何か言いたそうにしていたけれど、結局それを呑み込んでまたひとつため息をついた。

 少し顔色がよくないかもしれない。


 ジャンは金細工師だ。


 いつも工房に閉じこもって何かを作っている。

 ひとりで彫金鍛金鋳金となんでもこなすらしい。


 しかもジャンの作品はどうやら人気のようで、買い付けにくる商人が尽きない。


「ジャン、もしかして昨夜は寝ていないの?」

「あ、いや。仮眠はとったけど」


「仮眠だけ!?」

「いやまあ、一晩くらい寝なくても平気だし」


「ご、ごめんなさい! ジャンの都合も訊かずに連れてきてしまって」


 お兄さまの言葉がよみがえる。


 婚礼中止――。


 まさかこのくらいのことでジャンが破談を言い出すとは思わないけれど、婚礼前に旦那さまに倒れられるのは問題だ。


 しかもわたしが原因だなんて! 


 結婚したら、夫の体調管理は妻であるわたしの役目なのに。

 ジャンは出不精だから、この機会に外に連れ出そうと思った。

 いい運動になるだろうとも思った。


 それなのに、無理をさせていたなんて。


「いや、だからそれはいいんだけど。それにここまで来たんだからもう色々と諦めてるんだけど。ただ、まさかこんなに遠いとは……」


「誰かに家まで送ってもらうというのはどう? それならすぐに戻れるわ」

「誰かって?」


「馬やロバはどう?」

「……馬やロバ?」


「うん。迷い込んでくる馬やロバも結構いるの。どうする?」


 馬もロバも、わたしの大事な人を落とすようなことはしないと思うから、大丈夫なはず。


「いや、このまま先へ進もう。体力には自信がないこともないし」


 ジャンのその言葉に、わたしは数度瞬きをした。


「ジャン、嘘はよくないわ。わたしの前で見栄を張る必要はないわよ。わたしはありのままの貴方が好きなんだから、安心して」

「別に見栄を張ったわけじゃないけど……。まぁいいか、とにかくおれは大丈夫だ」


 ジャンがぽりぽりと頭を掻く。


「本当に?」

「本当に」


 ジャンの目を覗き込むと翡翠色の瞳にわたしが映っているのがわかった。

 視線を真正面から受けとめられて、思わず鼓動が速くなる。


「つっ、辛くなったら言ってね。今度こそ誰かに頼むからっ」

「わかった」


 動揺して視線を逸らしながら言うと、ジャンの生真面目な返事が聞こえた。

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