02-40.まだまだ足りない
「影裡さんは何を頂いたのでしょう?」
さあ? 結局私にもわからないままなんだよね~。
「無理。剥がせない」
今回はリーリャちゃんの吸収スキルでも取り出せないようだ。以前の思念伝達スキルとは全く違うものなのだろう。
「……」
キスイ? どったの? 怖い顔して。
「……いえ」
大丈夫? 無理しないでね?
「……なんでもないわ。きっと気の所為よ」
そう?
「心配しないで。大丈夫よ、影裡」
わかった。キスイを信じるよ。
「ありがとう♪ 嬉しいわ♪」
ラブラブ♪ ちゅっちゅ♪
「「「「「「「「ジトー……」」」」」」」」
いやん♪
「すっかり仲直りされたようですね」
「前にも増して仲が良すぎませんこと?」
えへへ♪
『影裡。影裡』
あら? キスイ? 早速念話を使ってみたの?
『反応してはダメよ。何も考えずに聞いていなさい』
無茶言うねぇ。
「内緒話ですか? 影裡さんのは筒抜けですよ?」
そらそうなるよ。
『頑張って』
無茶だってば。相変わらず制御なんて出来てないんだからさ。
「悪巧みはそこまでです。早速今後の事を話し合わねばなりません」
だね。全員が念話を使えるようになったことは、何も私との会話手段だけじゃなくて、"案内人"の運用にも利となり得ることだもんね。
「はい♪ 影裡さんの仰るとおりです♪ 現在村には多くの人々が集まっています。毎日のように諍いも起こります。彼らが一丸となるにはまだ暫くの時間を必要とするでしょう。我々もこれまで以上に動かねばなりません。移住こそ落ち着きましたが、真の本番はここからです。安寧秩序の維持継続こそが我々の今最もなすべきことなのです」
うんうん。
「折角ですから、今日は皆さんで村の査察をしながら会議をしてみましょう♪」
未来ちゃんのそんな提案で、私達はさくちゃんの結界に乗って村の上空に移動し、人々の生活を見下ろしながら話し合いを始めた。
「高度は大丈夫ですか?」
「うん。なんとか」
さくちゃんも少しずつ慣れてきたのかもしれない。屋根の上くらいの高さなら顔色に出ることもなくなってきた。
「無理はなさらないでください」
「ありがとう、未来さん」
「こちらこそ♪」
私達は一先ず村の様子を見守ることにした。既に村々の間の木々は取り払われている。小さな集落の集合体から一つの大きな村へと姿を変えた。
人々の主食は木の実だ。野生動物の狩りはあまり流行っていない。この森の木の実は特別に栄養素が豊富なファンタジー物質だからか、人々も必要以上の食料を採ろうとは思わないようだ。たぶんそこにはこの森への敬意とか、そんなものも含まれてはいるのだろう。
町作りまではまだまだかかる。まだこの地には想定の半分の人数も来ていない。そもそも家も足りていない。ここからは彼らにも手を貸してもらう必要がある。キスイ達がどれだけインチキスキルで家を建てていったって時間が掛かりすぎるのだ。先んじて労働に勤しんでいた子供達と同じように、村の大人達にも働いてもらわないとだ。
ただその前に、皆には体力を付けてもらう必要がある。十分な食料と十分な水があるこの環境でなら、以前よりも強い身体が出来上がるだろう。
問題はその後もこちらの言う事を聞いてくれるかだ。喉元過ぎればなんとやら。既にその兆候は現れ始めている。どれだけ喧嘩するなと言っても聞いてくれないし。酷い時は案内人にまで怒鳴りつけてくるし。私達が攻撃しないからってだいぶ調子に乗っていらっしゃる。
「村同士の仲が深まりませんね。何かイベントでも開催してみましょうか」
「それよりも住む場所を変えてしまいましょう。今のように以前の村毎に纏ってもらうのではなく、全体でランダムな配置になるよう入れ替えましょう」
「明確な統治者も必要ですわ。案内人だけでは神秘的に過ぎるのですわ。もっと人々に近しい存在が必要ですわ」
なら巫女とかどうかな? フェアリスちゃんとティエラを私達の正式な巫女にしてさ♪ 私達の言葉を神託として伝えてもらうの♪ それから象徴も必要だよね♪ 取り敢えず石像でも建ててみる? そこに毎日お祈りしてもらうの♪ ゆくゆくは本殿も用意してさ♪ どうせイベントやるなら会場も必要でしょ♪ 毎年そこでお祭りしてさ♪ いずれは屋台なんかも♪ もっと料理とか広まるといいよね♪
「良いアイディアです♪ 私は賛成です♪」
「そうね。異論は無いわ」
「ワタクシもですわ」
「うむ」
「「さんせー♪」」
「石像と言えばあれだよね♪」
「流石灯里。わかってる」
「もってくる!」
「無茶だよ! フェアリス!」
ダメだよ? 私の石像じゃないよ? 建てるのは女神様の石像だよ? 私を信仰させてどうするのさ。
「心配は要りません♪ 影裡さんは我々の女神です♪」
ナニヲイッテルノカナー?
その後すぐに石像作りが始まった。さくちゃんの隠蔽結界を使って村のど真ん中の広場を真っ昼間から占拠した。
村人が近づかないように案内人達を立てると、それがかえって興味を引いてしまったようだ。人々が何事かと集まってくる。もしかしたら娯楽に飢えていたのかもしれない。
「流石に全裸はダメよ。布の質感を再現するのは難しいかしら? ちょっと影裡。型を取らせなさい。ええ。脱ぐのよ。今ここで。アリシアさんは丁度良い布を出して。影裡! 待ちなさい! ほら、大丈夫よ。結界があるわ。私達以外には見えないから。そういう問題よ。観念なさい」
ぐすん……。




