02-35.影カゲ陰
皆が出発してから数日が経過した。
あれから毎日リーリャちゃんとの勉強の日々だ。時にはフェアリスちゃんやティエラも混ざってこちらの言葉を教えてくれている。
ティエラは他の子達と違って、言葉だけじゃなくて文字までわかるようだ。先日までは、私だけでなく未来ちゃん達にも度々文字を教えていた。
そうだ。どうせなら忍術も教えてもらえないかな?
「(カキカキ)」
今はスキルを貸出中だ。代わりに黒板モドキとチョークモドキを使ってコミュニケーションを取っている。これはキスイちゃんが中心になって作ってくれたものだ。作り方はいつもの方法だ。キスイちゃんが必要な素材をイメージして、それをリーリャちゃんが抽出し、さくちゃんが用意した型に流し込む。実際にどんな素材を使っているのかについてはよくわからない。キスイちゃんが色々説明してくれたけど理解できなかった。別に気にする必要はないと笑っていた。
「忍術……無理。影裡様は先ず基礎体力を付けるべき」
そりゃそうか。
「……」
何やら考え込んでいる。本当は教えたくないのかな? 忍者の修行ってなんか厳しそうだもんね。私に優しいリーリャちゃんとしては、そういうのってやらせたくないのかも。
或いは忍術じゃなくて何か別の呼び方があったのかも? リーリャちゃん達は自分達の事を忍者って呼ばないみたいだし。そういうのも本当は秘密っぽいもんね。あんまり知りすぎると向こうの世界に帰った時に困るのかも。
「影裡様。ここ間違ってる。余計な事は考えないで」
あ、はい。ごめんなさい。
「ボクは少し外す。影裡様は続けてて」
見回りかな? いってらっしゃ~い♪
「(ふりふり♪)」
「……」
笑顔で手を振ってみたけど気付いてもらえなかった。珍しい。あんなに考え込むなんて。私が変な事言ったせいかな?
「~♪」
かきカキ書き♪
「カぁ~ゲ~リ~」
「っ!?」
びっくりしたぁ……。なんだティエラかぁ。
「お勉強中。お絵かき違う」
はぁ~い。ごめんなさぁ~い。
「(ぺこり)」
「♪」
ナデナデしてくれた。すっかり妹扱いだ。元々大勢の子供達を見ていたからか、ティエラのお姉さんっぷりは様になっている。一応私とは同い年なんだけれども。
実は子供達はこの地に来てから身長がぐんぐんと伸びているのだが、中でもティエラの成長は著しい。既に私の身長を追い越してしまった。大丈夫かしら? この森の食べ物ってなんかやばいものでも混ざってないよね? 流石に成長が早すぎないかな? 成長期ったって限度があるでしょうに。
逆にフェアリスちゃんの身長はあんまり伸びていない。これは元々の素質故だろうか。不思議。
「わからない?」
あ、いえ。集中します。
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おかしい。あれから暫く経ったけどリーリャちゃんが戻ってこない。最近は殆ど側に居てくれたのに。いったいどうしたのだろう。何かトラブルだろうか。
「気になるの?」
「(こくり)」
「リーリャなら大丈夫」
そうは思うんだけどね。
「続けてて。見てくる」
ありがとう。ティエラお姉ちゃん。
ティエラがリーリャちゃんを探しに行ってくれてから暫くして、今度はフェアリスちゃんが現れた。
「カゲリ♪」
「(ニコニコ♪)」
おかえり♪ フェアリスちゃん♪
「えへへ~♪」
あれ? なんだか泥んこだね? どうしたん?
「フェアリス♪ がんばる♪」
何をだろう?
「カゲリのかげ。なる♪」
え? もしかしてリーリャちゃんに弟子入りしたの?
「きゅうけーお~わり♪」
え? もう?
リーリャちゃんは私の顔を見に来ただけだったようだ。またすぐに戻っていってしまった。
ティエラもあれから戻らない。二人揃ってリーリャちゃんの弟子になったのかも。
どういう心境の変化だろうか。あまり多くを語らないリーリャちゃんが自分の技を他の人に教えるなんて。それが必要な脅威でも迫っているのだろうか。町に人が集まれば、私の護衛にもっと多くの人手が必要になると考えたのだろうか。
よくわかんないけど頑張ってね。フェアリスちゃん。それからたぶんティエラも。私も陰ながら応援してるぜ♪




