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01-08.わんふぉーおーる

「もう! ダメだよ! 次からトイレもついてくからね!」


 あらま。はしたないですわよ。幼馴染ちゃん。



「それでは出発しましょう!」


 私のせいで余計な時間を食ってしまった。私だけ歩きもしないのに。次は絶対気をつけよう。



「ふふ♪ 少し見直しましたわ♪」


 高慢ちゃんがわざわざ側に寄ってきて小さな声で囁いた。影メイドさんを通じて見ていたらしい。イヤン♪ エッチ♪



「もう! アリシアさんもなの!?」


 幼馴染ちゃんは気が気ではないようだ。昔から独占欲の塊みたいな子だったもんね。私はお気に入りのお人形みたいな扱いだったけど。腕もげなくてよかった。まさか私の接触恐怖症って幼馴染ちゃんのせいじゃないよね?



「カゲリはアカリのものではありませんわ」


「私のなの! 私のカゲリちゃんなの!」


 あかん。初めての喧嘩が何故か私の取り合いだ。皆仲良しだったのに。どうしてこうなった。



「やめなさい」


 清楚クールちゃんが割って入ってきた。



「影裡さんは皆のものよ」


 え?



「そうだよ~♪ 皆仲良くしようね~♪」


 天然母性ちゃんのほんわか援護射撃が効いたのか、特に反論の声が上がる事もなくその場は収まった。幼馴染ちゃんは不満そうだけど、それでもぐっと堪えてみせた。母性ちゃんは何か癒やし物質を放っているのかもしれない。癒やしちゃんに改名する?



「にっしっし♪」


 ギャルちゃんが怪しい笑みを浮かべている。面白いものを見たって顔に書いてある。これ他人事じゃないからね?



「ふふ♪ 影裡さんは人気者ですね♪ 私も影裡さん大好きです♪」


 あかん。眩しすぎて溶けそう。リーダーちゃんの笑顔は反則だ。



「「「「……」」」」


「あら? 皆さんどうかしましたか?」


「「「「なんでもない」」」」


「にょほほ♪」


 ギャルちゃんの笑い声どうなってるの? やっぱりまだ平常心じゃなかった? キャラ崩壊してない?



「……」


 あれ? 武士道ちゃん? 今一瞬こっち睨まなかった?



「気を抜きすぎだ」


 ああ。皆を心配してたのか。ごめんちゃい。




----------------------




「目的地に到着しました! 皆さんお疲れ様でした!」


 リーダーちゃんのカーナビみたいな合図でその日の行軍は終了した。キャンプの準備は影メイドさん達がやってくれるようだ。私も自分の担当ちゃんを泣く泣く見送った。ありがとうメイドさん。一日お疲れ様。また明日もよろしくね。


 あれ? もうベッド出すの? まだ晩御飯前だよ?



「食事の前に身体を拭きましょう♪」


 ああ。なるほど。高慢ちゃんの能力でお湯とタオルは出せるもんね。流石に湯船は無理だけど。できればシャワーカーテンは欲しかったなぁ。こんな大自然の真ん中で素っ裸になるのは中々お辛いものがある。


 いやまあ、既にタオルで拭いてもらうのも経験済みだし、なんなら最終日は皆で地底湖にも入りましたけども。だけどあそこは洞窟の中だったからね。まだマシだったよ。


 と思ったら、流石にそこは考えがあったようだ。メイドさん達がベッドの回りでシーツを持ってくれている。あの中で一人ずつ拭いてもらうらしい。どんな環境でも恥じらいだけは捨てちゃダメだよね。年頃の乙女としては。うんうん。



「カゲリちゃんは私が拭いてあげるね♪」


 結構です。そこは本職の方にお願いしたく。


 なんて私の本音は届く事もなく、幼馴染ちゃんに連行されてしまうのだった。ぐすん。


 ベッドは出し直す度に真新しくなるようだ。濡れようが汚れようがお構い無しだ。ベッドの上でどれだけお湯を使っても特段問題がないらしく、頭もバシャバシャと洗われてしまった。ちなみにメイドさんはそんな事しないでも綺麗に洗ってくれた。単に幼馴染ちゃんがガサツなだけだ。ハゲそう。


 都合良くシャンプーとかは出せるらしい。例え一時の幻であっても、身体の汚れを落とすという役目は何の問題も無く果たせる。想像以上に便利な力だ。感謝感謝。


 もしかしたら先の繋がっていないシャワーヘッドくらいは出せるのかもしれない。メイドさんが御主人様のお世話をする際に手に持つ物はだいたい何でも出せるっぽいし。その状態からでもお湯が出るのかどうかは知らんけど。


 何にせよ、無限の可能性を秘めた最強能力だ。年頃の乙女達にとっては欠かせない存在だ。高慢ちゃんなんて呼び方はやっぱり改めよう。今日からノーブルちゃんだ。私の事も褒めてくれたし。あ、そこは自分で拭くよ、幼馴染ちゃん。




----------------------




 シクシク。



「やり過ぎですわ。アカリ」


「え~? 変な事してないよ~?」


 ツヤツヤしおってからに。



「灯里さんだけズルいわ」


 そうだ。母性ちゃんはギャルちゃんと組んでみたらどうかしら? ちょっとそこでニヤニヤしてる不届き者を懲らしめてあげてください。



「次はうちが拭いてあげるね♪ かげりん♪」


「無理に決まってるでしょ! カゲリちゃんには私だけなの!」


 あかん。またこの子は噛みついて。



「その問題もいずれどうにかするべきね。森の外にはどんな危険が潜んでいるとも限らないわ。仮に影裡さんだけがはぐれてしまえば生きていく事すら出来ないでしょうね」


 だよね。スペランカー並だもの。けどクールちゃんも直接的な戦闘能力は持ってないんだから気をつけてね。



「そんな事にはなりえませんわ。このワタクシが守ると決めたのですから」


 あら。いつの間にそんな決意を。まさかノーブルちゃんにそこまで想ってもらえるなんて。光栄でございます。



「私も決して目を離しませんよ!」


 未来予知を持つリーダーちゃんにそう言って頂けるなら心強い限りでございます。



「そもそも私が離さないもん!」


 幼馴染ちゃんに腕をへし折られるのが先かもしれない。その時は母性ちゃんに治してもらえばいっか。よくない。



「かげりんに敵対する奴らはうちが全部『魅了』しちゃうもんね♪」


 なるほど。世界中の全員が味方になれば問題解決か。



「もし影裡ちゃんが傷ついちゃったら私が癒やすわ!」


 母性ちゃんも何か危うい感じがしてきた。もしかしてギャルちゃんと組ませたら共依存みたいにならない? ちょっと注意深く様子を見るべきかもしれない。



「……」


 武士道ちゃんは特に無いようだ。というかちょっと機嫌悪い? 私達浮かれすぎ? だよね。気をつける。私に何が出来るとも思えないけど……。

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