02-29.ヌケガケ・ツツヌケ
勝負の日はまた数日後となった。皆やる気満々だ。
作戦の一環なのか、或いは準備に時間を掛けているのかはわからないが、あれから皆があまり構ってくれなくなった。
私を孤独にさせるとすぐに沈んじゃうんだよ? 知ってるでしょ?
「なんでそれを私にだけ言うのよ。マブダチのティエラさんはどうしたのよ」
ティエラも何故か張り切ってるんだよ。あれから一度もこっちに顔を出してないの。趣旨が上手く伝わってなかったのかなぁ。
「必要以上に伝わってるんでしょうよ」
そうなの?
「ねえ、私まだ忙しいの」
……ごめん。
「もう。冗談よ。そんな顔しないで」
キスイちゃんは私を抱きしめて座り込んだ。
「ねえ、影裡」
なぁ~に~?
「私を勝たせなさい」
直球だね。
「灯里さんや未来さんではなく私のところに来たって事は、決してあり得ないわけでもないのでしょう?」
もちろん有力候補の一人だね。全員がそうだけど。
「なによそれ。浮気者」
浮気は私のせいじゃないよね?
「あら。そういう事を言うのね」
ごめんて。
「私ならいくらでも甘やかしてあげるわよ」
リーリャちゃんで間に合ってるかな。
「ちょっと。どこ見て判断してるのよ」
茉白ちゃんと比較しなかっただけ温情だよね。
「なぁんですってぇ?」
キスイちゃんには包容力より気安さを大切にしてほしいかなって。
「あなた私の事を舐めているのね?」
もちろんそんな事は無いよ。
「なら私の事も呼び捨てなさい」
どこが「なら」なのさ? 普通逆じゃない?
「つまりあなたはティエラさんを見下していると?」
そんなんじゃないよ。意地の悪い事言わないでよ。
「意地悪してるのは影裡の方でしょ」
なんでさ。
「いいから呼びなさい」
今は時期が悪いと思う。
「やらない人の常套句じゃない」
いや、そうじゃなくてさ。勝負を控えてるからさ。
「そういう意識があるならどうして一人だけ特別扱いするのよ」
ある意味特別じゃない? 他の皆は恋人かそれに準ずる存在なんだし。
「フェアリスはまだ含まれてないのね。キスだって散々してたくせに」
私は意思が強いからね♪
「どの口で。ただ頑固なだけでしょ」
そうとも言う♪
「最近お気楽っぷりに増々磨きが掛かっているわね。未来さんの教育はどうしたのよ」
お陰様で自信がついてきたのかも♪
「あなたって単純ね」
今更気付いたの?
「……」
ごめん。怒らせるつもりはなかったんだよ。
「別に怒ったわけじゃないわ」
じゃあ呆れたの?
「それを聞いてどうするのよ」
私はいつだってキスイちゃんの心を知りたいんだよ♪
「……」
今日は変な顔してばかりだね。
「……」
あれ? キスイちゃん? どこ行くの? 家から離れちゃうの? そんなに引っ張ったら痛いよ? キスイちゃん? なんで何も言ってくれないの? ちょっと怖いよ? え?
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「……ごめんなさい」
謝るくらいならやらなきゃいいのに。
「なんで平然としてるのよ……」
大丈夫♪ まだラインは越えてないよ♪
「基準が緩すぎないかしら」
今更じゃない?
「ここまでした事なんてなかったじゃない」
そうだっけ?
「ちょっと。誰と勘違いしてるのよ?」
え~っと……。
「言わなくていいわよ!! まったく!!」
あ、アリシアちゃんだ。
「言うなって言ったわよねぇ!?」
それからリーリャちゃんも。
「影裡!!」
また後悔するよ?
「やかましい!!」
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「申開きはありますか?」
「……アリシアさんとリーリャさんもやってました。影裡が証言しました」
「「……」」
「本当ですか?」
「……何の話かわかりませんわ」
「右に同じく」
そもそも二人は見てないもんね。決定的瞬間を目撃したのは発見した未来ちゃんだけだもんね。
「影裡さん。説明を」
え? キスイちゃんとのプレイ内容を思念伝達で事細かに流すの?
「やっぱやめ、うっ……」
「「「「「「「うわぁ……」」」」」」」
あ、ごめん。
「あなたねぇ……」
ごめんてば。加減とか出来ないんだってば。
「辱められたわ……」
キスイちゃん真っ赤だね。
「誰のせいよ……」
元気ないね。
「誰の……はぁ……」
本気で落ち込んでるね。
「……」
「影裡さん。流石にやり過ぎです」
未来ちゃんに掴まれてキスイちゃんから引き剥がされてしまった。
「綺透さんもこれに懲りたのなら反省してください」
このタイミングで抜け駆けするのは悪手だよね。私ってば嘘が付けないし。八百長なんて……あ。ごめん。
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
優しさ故なのか、呆れ果てたのかはわからないけど、それ以上皆がキスイちゃんを咎める事はなかった。




