02-26.ペナルティ
「そんな事が!? ありがとうございます! 影裡さん! フェアリスちゃん!」
「ダメよ、カゲリ。意識の無い人に無理に水を飲ませたりなんてしたら。最悪気管に入って窒息してしまうわ。それから何か口に入れて寝かせる時は横向きに寝かせなさい。他はよくやってくれたわ。ありがとう。お陰で助かったわ」
「普通そういう時はお礼から言うものです! 綺透さん!」
「未来さんが言ってくれたじゃない」
「それでもです!」
「ごめんなさい」
よかった。皆元気になってくれて。
「心配をおかけしましたわ」
「かたじけない」
「ありがとね~♪ かげりん♪ フェアリスちゃん♪」
いえいえ~♪
「お外出たの? 走ったの? 怪我してないかしら?」
うん、大丈夫。そんな間髪入れずに治癒かけなくて大丈夫だよ、茉白ちゃん。
「さっすがカゲリちゃん♪ やっぱり頼りになるね♪」
でへへ~♪
「……不覚」
リーリャちゃん。
今にも腹でも斬りそうな顔のリーリャちゃんの頬を挟んで軽く口付けた。そのまま唇を離して正面から目を見つめると真っ赤になって泣き出してしまった。
「なに泣かせてんのよ」
そんなつもりは無かったんだけどね。
「カゲリちゃん」
さくちゃんがリーリャちゃんを抱きしめて回収した。リーリャちゃんも大人しくされるがままになった。
「それで、子供達に姿を見られてしまったのよね」
うん。ごめんね。
「それは仕方がないわ。影裡が謝るような事じゃないわよ」
ありがと♪
「問題は子供達の方よね。もう少し聞き分けが良いのかと思っていたわ」
「その点に関しては我々にも落ち度があります。信頼関係の構築が不十分でした。これからは定期的なコミュニケーションを心がけましょう」
流石未来ちゃん。大人な対応だ。
「甘いわね。二人とも」
と言うと?
「どんな理由があるにせよ、決まりを破ったのだから相応のペナルティを与えるべきよ」
確かにその考えには一理あるのかもだけども。
「厳しすぎませんか?」
「性善説で済ませるべきではないわ」
「悪意を持って覗こうとしたと?」
「秘されていれば気になるものでしょ。その一人が影裡のような美少女だってバレてしまったんだもの。興味を抱かない筈はないわ」
誰が美少女だって? まだ寝ぼけてんの?
「「「「「「「「……」」」」」」」」
ちょっと? 皆さん?
「仕方がありません。ケジメは必要です」
「「「「「「「だね」」」」」」」
もう……過保護なんだから……。
「具体的にはどんな罰を与えるべきかしら」
そこはノープランなのね。
「影裡が考えてもいいのよ」
考えるって言ってもなぁ~。
「誰に罰を与えるべきかという問題もあります。現状の我々の力関係を考慮するなら、当事者だけに罰を与えるべきではないのかもしれません」
どういうこっちゃ?
「我々は神の代理です。彼らは神の信徒です。神が個人を罰すれば必要以上に周囲から敵視される可能性があります」
えっと、つまり、罰を受けた子達が居場所を無くすかもってこと?
「はい。その通りです」
「場合によっては私達が恐れられる事もあるでしょうね。当然内容にもよるでしょうけど。かえって舐められる可能性もあるわ。ならいっそ連帯責任にでもするべきかしらね」
そっちの方が嫌われちゃうんじゃない? お前達のせいだーって。
「問題はその出力の仕方よ。ただ忌避されるのではなく、互いに問題行動を起こさないよう働きかけあってくれれば、その先の成長に繋がるわ」
「難しいところですね」
「そうね。当然軋轢を生む可能性も無くはないわ」
やっぱりかえってギスギスしちゃうかもね。
「チーフ君に任せるのも手よ」
なるほど。中間管理職として頑張ってもらうんだね。
「具体的で説得力が無ければ狭量と取られる可能性もあります」
ちゃんとこちらが怒っているって理由まで含めて示せないと、なんかちょっと覗いただけで不機嫌になってるみみっちいやつらだ、とか思われちゃうわけか。
「けれど私達にとっては死活問題よ。今は子供達だけだからすぐには問題にならないけど、多くの人々、とりわけ大人達が集まってくればその限りではないわ。私達を追い出して、或いは私達ごと奪い取ろうって輩も現れるでしょう。だから私達は舐められるわけにはいかないの。かと言って力尽くで抑えたいわけでもない。だからこそ神秘性が必要なの。ただの小娘達だと露見すればどれだけの力を示したって軽く見られるのは避けられない。とはいえこれを馬鹿正直に説明するわけにもいかないの。相応しい度量を示しつつ、毅然とした対応もしなくちゃならないの」
なるほどね~。
「厳しすぎず、甘すぎず。適切なペナルティを与えねばなりませんね」
とは言えな~。別にもう、私達が生活の面倒を見なくてもあの子達はやっていけてるわけじゃん? 罰って言ったって難しくない? まさか水や食料を制限するわけにもいかないしさ。それこそ大人げないわけで。だからってお尻ペンペンで済ましていいって話でもないんでしょ?
「いえ……案外いいかもしれないわね」
え? まさか洞窟を結界で塞いじゃうの? 流石にそれは……。
「違うわよ。お尻ペンペンの方よ」
なんでさ。
「私達が大人であると示せるわ」
何を言ってるのさ。
「力尽くで組み伏せて痛みを与えるの。もちろん実行役は影メイドよ。どうしてそんな事になったのか全員に伝わるようにしましょう。子供達を集めてその様子を公開しましょう。二度と覗こうとは考えなくなる筈よ」
それこそみみっちくない? それに結局力尽くなことには変わりないじゃん。
「少しばかり馬鹿げている方が親しみが持てるでしょ」
余計羞恥心を煽るだけじゃないかなぁ。
「だからこそいいんじゃない」
反省じゃなくて反感を抱くんじゃない? なんならもっと構ってもらおうって余計ちょっかいをかけてくる子だって現れるかも。神秘性は間違いなく薄れちゃうよ。
「場合によっては子供達に協力者になってもらいましょう。どうせ影裡の事はバレてしまったんだもの」
いっそ私だけ別枠にしちゃえば? 私は女神様の遣いの中でも唯一幼いみたいにしちゃってさ。たまに町を出歩いちゃったりなんかしちゃってさ。
「思念伝達の制御が出来ていないじゃない」
そうだった。私は嘘が付けないんだった。
「もう少し考えてみましょう。他になければ影裡さんの案を採用するということで」
「「「「「「「「異議無し」」」」」」」」
えぇ……別に提案したわけじゃ……いつものことかぁ……。




