02-16.ロックオン
「ねえ、影裡」
な~に~? キスイちゃん?
「なんであの話の後で私に引っ付いてるのよ」
先ずはキスイちゃんを落とそうかなって。
「あなた全然反省していないのね」
うん。
「あのねぇ……」
私は私の意思で決めたんだよ。全力で甘えるって。
「今更何言ってるのよ」
だから安心して。安心して私にメロメロになって。キスイちゃんさえ落ちれば未来ちゃんは落とせるもんね。未来ちゃんさえこっちにつけば皆も賛同してくれると思うの。
「浅はかだわ。びっくりするくらい浅い作戦だわ」
作戦はキスイちゃんに立ててもらうから大丈夫。
「あなたねぇ……」
愛してるぜ♪ キスイちゃん♪
「流石に流されないわよ!?」
本当に大好きなんだよ?
「それはわかってるわよ! ちょっとあなた! どうしてそういう使い方ばかり上手くなるのよ!?」
使い方って? もしかしてスキルのこと?
「そうよ! 何よその使い方!? 私知らないわよ!? 特定の感情だけ強く流し込んでくるなんて!?」
私の好き好き~って気持ちが伝わってるの?
「無自覚なの!?」
うん。
「うんじゃないわよ! ちょっとは抑えなさいよ!!」
まあまあ落ち着いて。今更私がキスイちゃんを好きだって気持ちが流れ込んだくらいで何を騒いでいるのさ。とっくにわかっていた事でしょ?
「落ち着かないのよ! あなた洗脳でもする気なの!?」
それはとっくに手遅れじゃないかな?
「やっぱり疑っていたのね!?」
いやそういう話じゃなくて。
「影裡」
急にすんってするじゃん。
「いったいどうしたの? 私達の事が信じられなくなってしまったの?」
うん。結局キスイちゃんは約束破ったし。私の石像放置されてるし。
「あ……ごめんなさい」
もういいんだけどね。皆が私を求めてくれるなら石像でもなんでも好きにすればいいよ。何なら型採りしてもいいよ。皆が指定したポーズとるからさ。それぞれ思い思いの影裡ちゃん像を作るといいよ♪
「……」
ちょっと良いかもって思った?
「……そんなわけないでしょ」
や~ん♪ キスイちゃんのえっち~♪
「違うって言ってるじゃない」
キスイちゃんはどんなポーズをしてほしい? 取り敢えず服脱ごっか。
「やめなさい!」
あ、ごめん。こういうのは二人きりがいいんだね。そのまま勢いで次のステップに行っちゃうかもだもんね♪
「ないわよ! あんな話の後で手を出せるわけないでしょ!?」
なんでさ。
「なんでわからないのよ!?」
やっぱり私って魅力無い? もっと食べた方がいいかな。せめて運動はしないとだよね。
「そういう話じゃないってことくらいはわかるでしょ!?」
魅力が無い事は否定してくれないんだね……ぐすん。
「そんなわけないでしょ! 影裡は魅力的よ!!」
ふふ♪ ありがとう♪ キスイちゃん♪ だぁ~い好き♪
「くっ! なにこれ!? 新手の拷問なのかしらぁ!?」
今試される! キスイちゃんの忍耐力!
「この! そういうとこだけ理解してんじゃないわよぉ!」
ほらほら~♪ 影裡ちゃんのどこ触ったって良いんだぜ♪
「やめなさいってば!」
影裡ちゃんの全てはキスイちゃんのものでもあるんだぜ♪
「くっ!」
ふっふっふ♪ どうやら揺れ動いているようだね♪ 落ちるのも時間の問題だね♪
「いい加減にしなさい!!」
キスイちゃんに後ろから抱き締められてしまった。
なんでわざわざひっくり返したの? どうせなら正面から抱き締めてほしいんだけど。
「押さえつけてるのよ! 抱き締めてるわけじゃないわ!」
なぁ~んだ。キスイちゃんでもその程度か。
「なんですって?」
キスイちゃんならあっさり踏み越えてきてくれるかなって期待してたんだけどなぁ~。
「チョロいと思ってるだけでしょ!?」
まあぶっちゃけ。
「少しは隠しなさいよ!」
心の声がダダ漏れなのにどう隠せと? 私はキスイちゃんに嘘なんて付きたくないんだよ?
「嘘も時には必要よ。そういう嘘なら誰も咎めたりなんてしないのよ」
それはどうかな? キスイちゃんならそれはそれで怒るんじゃないかな。
「もう。少しは信じなさいよ」
信じてるから真っ先に来たんだよ?
「そういうのは利用しに来ただけって言うのよ」
お互い様でしょ?
「……」
キスイちゃん!? なんで!? どうして泣いてるの!?
「……気の所為よ」
けど!
「私だって未来さんと同じ気持ちなの。もう二度と影裡に涙を見せたりなんてしないわ」
でも……。
「しつこいわよ」
キスイちゃん……。
「大丈夫よ、影裡。不安に思う必要は無いわ。全部私達が解決してあげる。あなたは自然体で過ごしなさい。私達に任せて呑気に笑っていなさい。きっとそれで上手くいくわ。あなたはまず何より幸せに生きる事が先決よ。難しい事は忘れてしまいなさい。あなたが本気で求めてくれるなら私だって身も心も差し出すわ。あなたの好きに使いなさい。私はあなたのものよ。私はあなたの恋人よ。どうか忘れないでね」
それからキスイちゃんは私を後ろから抱き締めたまま、耳元で囁き続けた。私の事がどれだけ好きなのかと丁寧に語って聞かせてくれた。その日私が眠りにつくまで愛を囁き続けてくれていた。




