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02-14.推し活

 あれから三日。未来ちゃんと凜火ちゃんが戻らない。


 私は魔術の案出しを続けながら、入口の方角へと視線を向け続けた。さながら飼い主を待ちわびる忠犬のように。




 ガサゴソ。


 来た!! 未来ちゃん! 凜火ちゃん!



「カゲリー!」


 小さな影が飛び出してきた。



 あれ? 二人じゃない?


 え? マジで連れてきちゃったの?



「影裡さん!!」


「影裡殿!!」


 遅れて二人も駆け寄ってきてくれた。私をフェアリスちゃんごと抱き締めてくれた。




----------------------




「ご心配には及びません。話は付けてきました」


 ご両親に? 挨拶してきたの?



「ずっといっしょ! えへへ~♪」


 あら~。ご結婚おめでとう。未来ちゃんが? それとも凜火ちゃん?


『そんなわけないでしょ。ダメよ、冗談でもそんな事言ったら。未来さん泣くわよ』


 その辺デリケートだもんね。


 それとキスイちゃんはそろそろスキル返して。今日はもう仕事終わりでしょ?


『仕方ないわね』


 なんでさ。



 あ~あ~。よしよし。スキル戻ってきた。


 おかえり! 未来ちゃん! 凜火ちゃん!


「はい♪ 影裡さん♪ ただいまです♪」


「うむ!」



 それからいらっしゃい! フェアリスちゃん!


「えへへ~♪」




「フェアリスちゃん♪ 明日から早速お願いします♪」


「まかせろー♪」


 未来ちゃんも私と同じ事を考えていたようだ。フェアリスちゃんに仲介役を任せる事にしたらしい。けど今日の所は一先ず休息だ。大半は凜火ちゃんが運んできたのだろうけど、それでも三日も戻ってこなかったのだ。三人ともさぞかし疲れていることだろう。今日はもうゆっくり休んでもらうとしよう。家もだいぶ形になってきたことだしね♪



「すっかり見違えました♪」


「おうちーおっきー!」


「うむ♪」


 ふっふっふ♪ 頑張ったんだぜぃ♪ 皆が♪



「影裡のお陰よ。風の刃や水の洗浄魔術がなければもっと時間がかかっていた筈だもの」


 それを実現したのはキスイちゃんでしょ。私はただ適当に便利そうな魔術を提案してみただけだよ。凄いのはキスイちゃんだよ。流石私のキスイちゃんだね♪ 大好きだぜ♪


「くっ! またそうやって雑にゴリ押して!」


「影裡様のお陰。ボクの術も数段使い勝手が向上した」


 リーリャちゃんの吸収と魔術って相性が特に良いもんね。可燃性の物質だけを吸収、放出すれば火の魔術の威力を極端に上げることだって出来るんだし。


 他にも魔術そのものを途中で吸収しておけば、後で溜め無しで放ったりも出来そうだ。別に魔術って詠唱とかは必要無いけど、集中力は居るもんね。スキルもそこは同じかもだからあんまり意味は無いかもだけど。


「ある。意味はある。流石影裡様」


 何か思いついたみたいだね。流石リーリャちゃん。



 それにやっぱりキスイちゃんは凄い。私の思念伝達スキルを使ったとはいえ、わずか三日で、それも建築を進めながらの片手間で、皆に魔術の手ほどきを済ませてしまったのだ。


 既に私、未来ちゃん、凜火ちゃん以外の全員が魔術を習得している。出来ることも格段に増えた。魔術はかなり自由度が高い。別に地水火風四つの属性に拘る必要も無い。念話だっていずれは使えるようになる筈だ。キスイちゃんが私のスキルを解析してくれているのも知っている。きっとそう遠くない内にスキルの貸し借りは必要無くなるだろう。



「私にも教えてください! 今すぐに!!」


「ちょっと。近いわ、未来さん。影裡の前よ」


 あらあら~。



「かげりんってそういう趣味なの? うちとましろんがイチャラブってる時にも嬉しそうに見てるよね?」


「そうだよ。私とリーリャちゃんが仲良くしてる時だって」


 まあ、うん。目の保養になるよね。否定はしないよ。



「未来さん。私と組みましょう」


「ダメだ。未来殿は渡さん」


 あらあら~♪ 未来ちゃんモテモテだぁ~♪



「これがハブられるというやつですの?」


 アリシアちゃんは私だけのものでいて。


「は、はい……」


「うわ。アリリンが照れてる。すっごい破壊力。これもう物理攻撃だよ。心臓ぐわってされたもん」


 あ、浮気だ。


「あらあら~♪」


「ちょっ!? 違うし! かげりんとましろん一筋だし! ってこういうのはダメなの!? もうわけわからんって!」


 色々厳しいんだよ。推し活業界は。



「要するにカップリングの話ね」


 「未来ちゃん☓凜火ちゃん」、「心愛ちゃん☓茉白ちゃん(受け優位)」、「さくちゃん☓リーリャちゃん」。


 私の中で定番なのはこんな所だろうか。あとは「心愛ちゃん☓フェアリスちゃん」なんかも悪くない。


 たった今「キスイちゃん☓未来ちゃん」の可能性も垣間見た所だ。まだまだ広げられそうだね♪


「やっぱりアリシアさんは含まれていないのね」


 アリシアちゃんは孤高だから。私以外に目を向けちゃダメなんだよ。


「なんだかズルいわ」


 惜しかったね、キスイちゃん。キスイちゃんにももう少し自制心があればそっち側になれたのに。


「なんだか偉そうだわ」


 だってこれ私のハーレムだし。


「自信が付いたのなら何よりね」


 キスイちゃんたら甘いなぁ~。


「そんなわけないでしょ。私は例え影裡の望みであっても気に食わない横暴に従うつもりはないわ」


 つまりこの件はお気に召したと?


「心愛さんとリーリャさん、或いはフェアリスなんてどうかしら?」


 ふむふむ。ギャルロリコンビだね。悪くない。


「アリシアさんも加えていいならフェアリスと組ませるのも悪くないわね」


 一考の余地があること自体は否定しないよ。高貴なお嬢様と村娘。悪くない組み合わせだね。それは認める。けどダメだよ。アリシアちゃんは私一筋なの。それ以外は認めない。


「そこだけ強火なのね。解せないわ」


「もうやめません? この話。二人とも、アリシアさんを見てください」


「これ以上は耐えられませんわ……」


 真っ赤になっていらっしゃる。可愛い。



「ねえカゲリちゃん! なんでアリシアさんだけなの!? 私だってカゲリちゃんだけのものだよ!?」


 なに、さくちゃん。私のリーリャちゃんじゃ不満だって言うの?


「逆ギレ!?」


「押し付けはダメよ。そんなの推し活とは呼べないわ」


 そうだね。ごめん。私が間違ってた。


「カゲリちゃん!」


 さくちゃんとリーリャちゃんはライバル関係も込みで楽しむものだよね。


「カゲリちゃん!?」


「全然わかってないわね」


 冗談冗談。さくちゃんが私だけを好きで居てくれたのは嬉しいよ。正直不安に思う気持ちが無かったわけじゃないの。


 リーリャちゃんにさくちゃんが取られちゃうんじゃって思ったことも一度や二度じゃない。


 二人が仲良くなってくれたのは嬉しいんだけど、やっぱり寂しいとも思っちゃうの。さくちゃんが、リーリャちゃんが私だけのものじゃなくなっちゃうんじゃって。怖かった。


 だから二人が仲良くなるのを茶化したくなっちゃったの。ごめんなさい。反省してます。勝手過ぎるよね。こんな風に考えちゃうのって。


 皆のこともきっと同じ。自分だけを好きになってほしいって気持ちもある。けれど皆が仲良くしてくれたらとっても嬉しい。どっちも間違いなく存在する気持ちなの。だからって押し付けちゃダメだよね。ごめんね、みんな。



「カゲリちゃん!!」

「影裡様!!」


 さくちゃんとリーリャちゃんが抱き締めてくれた。



「いいの! カゲリちゃんが望むならなんだってやるよ! けど誤解しないで! 私もリーリャちゃんも一番大切なのはカゲリちゃんだよ! だからこそ歩み寄る事にしたの! カゲリちゃんを一人ぼっちにする為じゃないの! カゲリちゃんをもっと大切にする為なの! 私達はその為に力を合わせようって決めたの! だから!」


 うん。ありがとう、さくちゃん。大丈夫。本当はちゃんとわかってる。ただ素直になれなかっただけ。長々と言い訳しちゃったけど、結局はそれだけなの。私はさくちゃんとリーリャちゃんを、他の皆を独り占めしたいの。その気持が悪いものだからって誤魔化そうとしてただけなの。全部わかってる。皆が私の事を大切にしてくれてるって。もう植え付けられた偽物の感情だなんて言わないよ。みんなのことが大好きだから。皆の事を否定してしまったら私のこの気持ちまで否定してしまう気がするから。だからね。私も遠慮しないからね。もっと皆に好きになってもらうよう頑張るからね。さくちゃんとリーリャちゃんは一番近くで応援していてね。許してくれるかな? こんな勝手なお願い。


「「もちろん!!」」


 ありがとう。二人とも。だぁ~い好き♪



「そういうことなら遠慮は要らないわね」


「ダメですよ、綺透さん。今はフェアリスちゃんだっているんですから。服を脱ごうとしないでください」


「問題ないわ。フェアリスだって私達と歳はそう変わらないじゃない」


「ちゅーするの~?」


「ほら。問題あるじゃないですか。わかっていない子を巻き込むわけにはいきません」


「何を勘違いしているのかしら? 私はただ浴場へ向かおうとしただけよ。生憎脱衣所はまだ完成してないの。未来さんとフェアリスもここで脱いで行きなさい」


「え!? それってまさか!?」


「ふふ♪ このリビングの次に作ったわ♪」


「それならそうと早く言ってください! 行きますよ! 皆さん!! もちろん全員で入れるサイズですよね!」


「当然でしょ♪」


「素晴らしいです!」


 未来ちゃんが服を脱ぎ散らかしながら待ち切れないと駆け出していった。当然まだお湯は張られていない。魔術かアリシアちゃんのスキルが必要だ。



「皆さん! 早く早く!」


 未来ちゃんの珍しい燥ぎっぷりに皆で微笑みながら浴場へと移動した。

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