02-12.脱出
翌朝早くに子供達を回収し、王都の入口へと向かった。
「……」
未来ちゃんが難しい顔をしている。未来予知を使って脱出の流れを再確認しているのだろう。
現在王都全体が厳戒態勢だ。そこかしこで兵士達が巡回している。私達の姿はもちろん見えないままではあるものの、今回は相手も見えないとわかっている状態だ。そうとわかってさえいれば手の打ちようもあるというものだ。
「どう?」
「……対策は施されています。ですが心配は要りません。彼らに我々を止める手段はありません」
「止められないだけ? 見つかる心配は?」
「脱出と同時に騒ぎが起きます。門に近づけば気付かれます。最高速で補給部隊の上空を通り抜けましょう」
「どうやって気付いたのかしら。この結界って影だってないわよね」
そうだね。不思議技術で完全に光やなんやらも透過させているもんね。音だってなんだって一切合切の情報が漏れていない筈だ。
「砂だ。死の砂とその力の濃度を観測する装置がある」
「そう。ありがとう、リーリャさん。それは盲点だったわ」
なるほど。さくちゃんの結界はその力も完全に遮断しているからか。空にぽっかり穴が空いているみたいなものかな。私達がいる部分だけは死の砂が皆無だってわかるんだ。
「ごめんね、やりすぎちゃった」
「いいえ。灯里さんのせいではありません。私が見抜けなかったことが原因です」
「そんなの無茶よ。未来さんの力は想像もしていない情報をピンポイントに抜き取れるものではないもの。だからリーリャさんに情報を集めてもらったんじゃない。これは誰のせいでもないわ。二人とも気に病まないで」
その通りだね。それに理由がわかったなら手の打ちようもあるってものさ。それは向こうもこっちも変わらない。
「はい。綺透さん。影裡さん。今更ですが一つ手を打ちましょう」
今のところ兵士達が視線を向けてくるってこともないもんね。ある程度装置の数は限られている筈だ。少なくとも兵士一人一人が持ち歩ける程の数は無い。なら今からでも意味はある筈だ。
「灯里さん。子供達の方だけフィルターを弱めてください。我々はこのままで。王都を脱出したのは我々だけであると思わせてください」
「了解」
今現在、結界は三重構造になっている。私達の乗る下層とは別に、回収した子供達を上に二層に分けて乗せている。入る時より結界が大きくなっていると気付かれれば何かを持ち出したとバレてしまう。
出来る事なら子供達より私達のフィルターを弱めるべきなんだろうけれど、子供達の人数は私達の倍以上だ。こればかりは致し方ない。
けれど心配は要らないだろう。元々子供達はこの世界の住人だ。この環境で生きてきた人達だ。むしろ私達より耐性はある筈だ。今のところ死の砂が直接人体に影響を及ぼすところも見ていない。王都の外には村人達だって住んでいる。何の心配も要らない筈だ。
それでも急いで森に向かうとしよう。あそこに戻りさえすれば死の砂の力は浄化されるはずだ。
「補給部隊が出発します。私達も行きましょう」
「うん。出すよ」
空飛ぶ結界が動き出した。すぐに速度を増して開いた門を一瞬で通り抜けた。それでも人々の騒ぐ声が聞こえてくる。やはりバレたらしい。優秀な観測装置だ。次回はもっと動きづらくなってしまうかも。まあその時はその時だ。皆ならきっと大丈夫。私の恋人たちは凄いんだから。
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森に帰還し、少しだけ湖に寄って補給を済ませた後は、未来ちゃんの未来予知を頼りに森を奥へ奥へと進み続けた。
きっといつもより早いペースで補給部隊も来るはずだ。なんなら追跡隊だって。けれどこちらの結界を使った移動には追いつけまい。今のうちに進めるだけ進めておこう。
今も未来ちゃんが私のスキルを持っている。さくちゃんに未来予知で得た情報を瞬時に伝える為だ。実質カーナビだ。いいな。私も私専用未来ちゃんカーナビ欲しい。いつでも私の頭の中に声を響かせてほしい。
「影裡さん!? 気が散るのでやめてください!!」
怒られてしまった。……あれ? 私悪くなくね? だって未来ちゃんは思念伝達スキルだって完璧に使いこなしているんだよ? 誰の意識を覗くか選べるんだよ?
そもそも私だけ未来ちゃんから何も聞かれてなくない? 未来ちゃんは礼儀正しいから人の心を読む時は必ず相手に了解を取るのに。けど私には一言も無かったよ? ふふ♪ 私だけ特別扱いしてくれるんだね♪ なんだか嬉しいな♪
「影裡さぁん!!」
「影裡。やめなさい」
「(ふるふる)」
私は何もしてないってば。悪いのは未来ちゃんだよ。覗くのやめたらいいじゃない。そんなことされたら寂しいけど。
「私にどうしろと!?」
「未来さん! 次は!?」
「あっ! すみません!!」
あらら。
「影裡。もう少し辛抱なさい」
私のせいじゃないのにぃ~。
「……ぷっ」
キスイちゃん今笑ったでしょ? 実は想像ついてるんでしょ? いじわるめ~。




