02-11.接触
王都侵入二日目夜。リーリャちゃんが予定通りに戻ってきた。
「(ぎゅっちゅっちゅ♪)」
「!?」
抱き締めてキスの雨を浴びせかける。丸一日程度離れていただけで、こんなにも愛おしい気持ちが溢れてくるとは。もう二度と離したくない。リーリャちゃんは私のものだ。
「影裡様……報告が……」
ぎゅうぎゅうぎゅう。ちゅっちゅっちゅ。
「カゲリちゃん、落ち着いて。リーリャちゃん困ってる」
「別に……困って……ない……ふひ♪」
困ってないってさ。ちゅっちゅっちゅ♪ はむはむ♪
「ひゃんっ♪」
リーリャちゃんの耳たぶうまうま♪
「ここまでしておいて口にはしないのって焦らしているのかしら? それともいつもの自信の無さの現れかしら?」
「どちらかと言うなら後者ですね。頬や額なら好意の現れで済むのですが、唇にキスをするのは緊張するようです。ちなみに本人はしたがっています。ただのヘタレです」
実況はやめて頂けませんかねぇ?
「影裡様ぁ……」
あ、やば。
気付くと押し倒されていた。リーリャちゃんが暴走モードに入ったようだ。完全に身動き取れないくらい抱き締めていたのにあの体勢からどうやってひっくり返されたのだろう。
「そこまで」
凜火ちゃんがリーリャちゃんの肩に手を置いた。
「二人とも。続きは後になさい。時間が無くなりますわ」
後ならいいんだ。アリシアちゃんも丸くなったね。
リーリャちゃんは素直に立ち上がって、続けて私を起こしてくれた。
「出発するよ。皆集まって」
さくちゃんも変わったね。正直ちょっと寂しいよ。前はもっと独占欲拗らせてたのに。最近全然騒がなくなったよね。こんな事言ったらめんどくさいって思われちゃうかな。でももしさくちゃんがあの出来事を後悔してるなら気にしないでほしいな。こんな事考えても今は伝わらないだろうけど。
「灯里さん。影裡さんを抱き締めてあげてください」
「え? うん。おいで、カゲリちゃん」
さくちゃん!
「どうしたの? カゲリちゃんも本当は心細かった?」
「(ふるふる)」
「灯里さんが落ち着いているので不安がっているのです」
「私? 私だって時と場所は弁えるんだよ?」
そっか。ごめん、さくちゃん。でももう少しだけ。後ほんの少し。抱き締めさせて。
「カゲリちゃん」
さくちゃんが私の顔を持ち上げて優しく口付けてくれた。
「カゲリちゃんは本当に私の事が大好きなんだね」
「(こくこく)」
「なら自分から出来るよね?」
「(……こくり)」
……緊張する。自分から誰かの唇にキスしたことってあったかな? 既に皆と何度もキスをしてきたけど、いつもされてばかりだった筈だ。さっきだってリーリャちゃんの唇に触れる勇気はなかった。ヘタレと言われるのも当然だ。
「カゲリちゃん? もう出発しちゃうよ?」
ええい!! 勇気を出せ影裡! さくちゃんを引き戻す為じゃい! 根性!!
「「っ!?」」
痛っ!
「へたっぴ♪」
さくちゃんがもう一度キスしてくれた。
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「なんだ貴様は!?」
突然姿を現した案内人に驚き、反乱組織の一人が声を上げた。
「待て!」
リーダーっぽい人が皆が騒ぎ出すのを制止した。
「もしや御遣い様ですか?」
『如何にも。我は神の代理。人々に救済を齎す者』
「「「「「「!?」」」」」」
彼らは頭の中に直接響いた未来ちゃんの言葉に更なる驚きを示した。
『皆の助力が必要です』
未来ちゃんは説得を始めた。こちらから伝えたい内容は二つ。森の奥に新たな町の建設を予定している事。その町に王都の人々を移住させたい事。
その話を聞いた反乱組織の人々の反応は半々だ。素直に喜びを示す者と明らかな警戒の意思を示した者に二分された。
『人々を集めなさい。弱き者を導きなさい』
「どのように連れ出されるおつもりで?」
『時がくればわかります』
「信用しては頂けないのですか?」
『信じられぬのはこの国の王です』
「……裏切り者がいると?」
『信じなさい』
未来ちゃんはそれだけ言って切り上げてしまった。未来予知を使いながら一言一言確認している様子だった。たったこれだけのやり取りで彼らは上手くやってくれるようだ。再び迎えに来るのがいつ頃なのかすらも伝えていないのに。
それから私達はすぐに反乱組織のアジトを脱出した。昨日と同じように空き家に忍び込み、昨日よりずっと騒がしい外の様子を耳にしながら眠りについた。




