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02-03.高みの見物(強制)

 休憩兼小会議の後、私達は物資を集める為に散らばった。



「カゲリちゃんはここ! 絶対動かないで!」


 私はさくちゃんによって空中浮遊する結界の神輿に乗せられて皆の活動を見守っている。動くなと言われても、そもそも動けない。何故なら落ちればただではすまない高さだからだ。私では受け身も取れないだろう。自分は高所恐怖症のくせによくこんな恐ろしい軟禁方法を思いつくものだ。



「~~♪」


 さくちゃんは私の思いに気付かない。私のスキルはキスイちゃんに取り上げられた。物資を集めながらスキルの研究をするそうだ。皆仕事熱心だね。私も見習いたいよ。マジで。



「ふふ♪ カゲリちゃ~ん♪」


 さくちゃんがテキパキと手を動かしながら時たま笑顔を向けてきてくれる。私もそれに笑みを返しながら手を振った。



「ら~~らら~♪」


 ご機嫌だ。それでこそさくちゃんだ。少し態度に変化があったから心配してたんだ。けどまあ、あれだけ楽しそうにしてくれているなら一安心だ。出来れば私の想いにも気付いてほしいものだけど。いや、マジで。



 もうここまでされると罪悪感も鈍ってくるよね。自分だけ特別扱いされて禄に労働もさせてもらえなくて、複雑は複雑なんだけどさ。かと言って完全に開き直れる程に心が強いわけでもないのだ。結果居心地の悪さと自分は悪くないという想いで揺れ動くしかないわけだ。私がいったい何をした。



 退屈だ。結局はそこに行き着いた。繰り返すけど、いつまでも罪悪感を抱え込める程強い心は持ち合わせていない。だから思考を止めて放り出すしかない。そうなると現実が襲いかかってくる。今の私にこの結界神輿を降りる術はない。



 試しに飛び降りてみようかしら。仮に骨折してもすぐに茉白ちゃんが『治癒』スキルで治してくれる筈だ。けど怖い。やっぱ無理。私には飛び降りる勇気がない。次。


 私の『思念伝達』スキルを持つキスイちゃんに呼びかけてみる? ダメだ。距離がありすぎる。キスイちゃんはさっき私を独占していたばかりだからね。独禁法に引っかかって僻地に飛ばされてしまったのだ。何故か競合他社同士のチームワークが抜群だ。キスイちゃん一人を私から遠ざけるなんて造作もない。困った。次。


 何かリーリャちゃんに合図を送るか。リーリャちゃんなら私の想いに気付くだろう。けどリーリャちゃんはどこだろうか。きっと今も私から目を離さずに仕事を続けている筈だ。ならどこかは気にしなくても良いのか。けどどうやったら近づいてきてくれるかな? 地面を指差していれば気付く? もっと全身で現した方がいいかな?



「カゲリちゃん!! じっとしてて! 危ないでしょ!!」


 げ、見つかった。危ないなら降ろしてほしい。



「じっとしてないなら壁で囲っちゃうんだからね!」


 もういっそその方がいいかもしれない。色付きでお願い。周囲の目がなければ落ち着くからさ。こんな見世物みたいに掲げられていると辛いのよ。ほんと、マジで。



「あ! カゲリ!」


 あ、フェアリスちゃん。良いところに。というかどこ行ってたの? あの蛇女さんが来た辺りから居なくなっていたけど。今日はもう村に帰ったんじゃ? そんなに何度も森に出入りしてて大丈夫? 今更か。



「うん? どしたの?」


 降りたいんです。さくちゃんを説得してください。



「のぼるの?」


「(ふるふる)」


 逆逆。あ、もう見てない。



「ねーねー♪ アカリ♪」


「フェアリスちゃんも乗るの? 気をつけてね」


 違うってばぁ!



「えへへ~♪」


 さくちゃんの結界柱がせり上がってフェアリスちゃんを運んできた。フェアリスちゃんは怖がる様子もなく、私の神輿に飛び込んできた。



「カゲリ~♪ ちゅっ♪」


 もはや今となっては、ほっぺにキスしてくるのってフェアリスちゃんだけなんだよね。皆やたらと要領がいいからね。フェアリスちゃんの前で唇同士のキスをしてくる事は決してないのだ。たぶんフェアリスちゃんが小さいからじゃなくて、これ以上ライバルを増やさない為だとは思うけど。


 フェアリスちゃんは私のお守りになってくれるかもしれない存在だ。どうか私の唇を守っておくれ。でないとそろそろ擦り切れちゃうから。茉白ちゃんがいる限りその心配もないかもしれないけど。茉白ちゃんたら意味もなく私に治癒スキルかけてくるからね。それも結構頻繁に。不思議。



「カゲリ~♪ ぎゅ~♪」


 抱き締め返せと仰せだ。けどダメだよ。私からは出来ないよ。何せ私は彼女持ちだもの。それも八人もいるのだ。皆を裏切る真似は決して出来ない。私には負い目もある。だからどうか離れておくれ。こんな場所じゃ抱き合ってないとかえって危険かもだけど。



「ぎゅー!」


 催促が激しくなってきた。フェアリスちゃんも大概諦めが悪い。私は決して頷かないとわかっているだろうに。



「む~」


 結局、フェアリスちゃんは自分で私の腕を抱え込んだ。私に背を預け、私の腕をシートベルトみたいに強引に自分の身体に巻き付けた。私に抵抗する術はない。フェアリスちゃんの方が腕力は上だもの。だから私は悪くない。けどごめん。一応謝っとく。私は小心者なのだ。どうせ皆怒りはしないだろうけど。フェアリスちゃんには何故か甘いし。何故だ?



「がんば~♪ アカリ~♪」


 フェアリスちゃんはこの高さでも怖くないようだ。足をブラブラさせながらご機嫌な様子でさくちゃんの作業風景を眺めている。


 この空中結界神輿は自動でさくちゃんを追従するようになっている。私達の眼の前には常にさくちゃんがいる。いつの間にか他の皆からは離れてしまったようだ。状況は増々絶望的だ。私も大人しくさくちゃんの姿を目に焼き付けるとしよう。それしかやる事無いし。がんばえ~。



「あきた!」


 唐突に叫んだフェアリスちゃんは躊躇無く飛び降りた。本当に一瞬の躊躇いもなかった。特に受け身を取ったわけでもないのにダメージは無かったようだ。そのまま平然とさくちゃんの隣に立って作業を手伝い始めた。



「もう。危ないでしょ。フェアリスちゃん」


「えへへ~♪ へーきー♪」


 二人とも楽しそうだ。私をほっぽって。ちくせう。



 やっぱ飛び降りてみる? 案外無事で済むんじゃない? フェアリスちゃんなんて私よりずっと身長も低いんだよ? 私だって体重は結構軽い方だし、そんなに衝撃はないんじゃないかな?



「ダメ。影裡様」


「っ!?」


 驚いた。いつの間にか私の背後にリーリャちゃんが立っていた。いったいどうやって神輿の上に登ったのだろう。流石は忍者ちゃん。素晴らしい身体能力だ。もしかしてリーリャちゃんなら私を抱えて飛び降りれるんじゃない?



「降りたい?」


「(こくこく!!)」


 流石私のリーリャちゃん!!



「……ダメ」


 なんでさ!?



「絶好の機会」


 仕事しよ?



「影裡様」


 もう。ダメだってば。近くにフェアリスちゃんだっているのに……。リーリャちゃんのバカぁ……。

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