02-02.力の種類
「少し面白い事がわかったわ」
キスイちゃんが楽しそうだ。私を膝に乗せているからだろうか。或いは魔法の習得がよっぽど嬉しかったのだろうか。そのどっちもかな。
「私のスキルは他者の魔力量を見る事も出来るの。これまでは魔力を認識出来なかったから気付けなかったのだけどね」
ふむふむ。
「皆それなり以上に魔力があるわ。先程の炎弾なんかだったらほぼ打ち放題ね。一発の消費量なんて皆の魔力量からしたら極わずかよ。ほとんど誤差みたいな量ね。影裡以外は」
うん?
「影裡は魔術を使ってはダメよ。あなた魔力が空っぽだわ」
なんですと!?
「その代わりと言ってはなんだけど、多分この地に満ちる力と同じ物が注ぎ込まれているの。女神様がスキルを授けてくださった影響かしら。いえ、もしかしたら少し違うのかもしれないわ。似ているだけで別物なのかも。影裡から漏れ出た力ってこの森の力とは僅かに色が異なるのよ。二つの色が溶け合っていく、なんだか幻想的な光景よ。不思議だわ。綺麗よ。影裡」
また唐突に口説いてくるね。
「ふふ♪ だって本当に綺麗なんですもの♪ あなたはこの世界に満ちるものとも違う力で守られている。けど残念ね。私達がその力を借りる事は出来そうにないわ。それが出来たのなら砂塵の壁だって突破できたかもしれないのに」
なるほど。私が電池みたいな役割を果たせればよかったんだね。
この国の外周を覆う砂塵の壁までは、この森に満ちる力も届かない。距離の問題なのか、砂が力を吸い取ってしまうからなのかは不明だ。私達のスキルはこの森のバックアップを受けてその力を増している。砂塵の壁に近づいてしまうと、スキルが大きく力を落としてしまう。さくちゃんの結界で無理矢理押し通るような事は出来ないし、未来ちゃんの未来予知で砂の先を見通す事も出来ない。
「ともかく、今この場には四つの力が存在しているわ。一つは魔力、一つは森の力、一つは影裡の力、一つはスキル」
え? それ全部バラバラなの?
「ええ、そうよ。推測だけどそれぞれの力の出処について仮説を立ててみたわ」
ふむふむ。
「魔力はこの世界そのもの、或いは人が元来持つ力」
私は持ってないけどね。或いは持っていたけど、アルテミシア様の力が大きすぎて塞がっちゃったのかだ。でも皆のスキルの方がチート感あるし、特別にアルテミシア様の力が大きいと言うより、雑に突っ込まれたからとか、私の身体がスキルに馴染んでいないからとか、何かそういう理由があるのかもだけど。
「森の力はこの世界を守る神の力」
アルテミシア様とは別に存在するかもっていう神様だね。たしかヘカテーって神様がいるかもしれないんだよね。
「影裡の力はアルテミシアと名乗った神の力」
そうだね。直接貰ったわけだし。この森に満ちる力とも違うならあの女神様固有の力だったのだろう。
「そして私達のスキルは『お祖母様』と呼ばれた神の力。それを分け与えられたもの。『お祖母様』はこの世界の神やアルテミシア様の上位に当たる存在なのでしょうね」
その正体は教えてくれなかったけど、アルテミス様はその「お祖母様」とやらから授かった力を私以外の八人に振り分けたんだよね。
「とはいえ、後者三つについては殆ど同じ力よ。力そのものが違うというよりも、そこについた色みたいなものが若干異なっているだけなの」
色?
「色水を思い浮かべて。全て同じ水ではあるのだけど、それぞれに若干異なる色がついているの。それに対して魔力だけは明らかな別物よ。液体の種類が違うわ。だから魔力と神々の力は混ざり合う事がないの。より重い神々の力は下へと沈み、魔力だけは表面へと浮き上がる」
ふむふむ。水の上に浮かぶ油みたいなものだね。
「色水は混ぜる事も出来る。何故なら密度が近しいから」
そうなの? けど私の力は皆のスキルを強化するのには使えないんでしょ?
「ええ。今のままではね」
?
「この世界の神様ってとってもお優しい方なのかも」
??
「この森の力が何故私達のスキルを底上げしてくれていると思う?」
その神様が働きかけているから?
「ええ、そう。その通りよ。混ぜるにも力が必要なの。今度は水ではなく絵の具に置き換えてみましょう。三つの絵の具をパレットに絞り出しても、ただそれだけで混ざり合う事はあり得ない。パレットナイフを使って混ぜる必要がある」
ふむふむ。
「私達の身体は絵の具の入ったチューブよ。このまま状態で力が混ざる事はない。私達がパレットに乗せた時、初めて絵の具は混ざり合うの。この世界の神様は意図的にそういう後押しをしてくれているのよ」
なるほどなるほど。
「おそらくだけど、影裡の力も同じだと思うの。影裡の力を私達が引き出すか、或いは影裡の側から私達に押し込んでくれれば同じ事が出来ると思うの」
つまり電池運用も実現出来るかもって事だね。
「失礼しちゃうわ。私の影裡を電池だなんて言わないでほしいわね」
影裡は私のものでもある筈なんだけどなぁ。
「無いわよ。あなたに所有権なんて。あなたの全ては私、達のものよ」
今私のものって言いそうになった? というかさっき言ってたよね? 今度はギリギリ理性が回避した? あんまり言ってると戦争だもんね。話進まなくなるもんね。そろそろ休憩は終わりにして物資を集めなきゃだし、争っている場合じゃないもんね。
「ツッコむ所はそこなのかしら?」
話進めようぜ。
「それもそうね。実際余裕は無いわけだし」
「心配要りませんわ。今もワタクシのメイド達が集めておりますもの」
流石アリシアちゃん……の影メイドさん達。
「カゲリ? なんですの? その含みのある言い方は」
気の所為気の所為。ほら。脱線してる場合じゃないんだってば。
「あなたの所為ではありませんの」
ごめんて。
「ともかく、似たような事は既に実現しているわ」
リーリャちゃんの『吸収』スキルだね。
「そうよ。影裡の『思念伝達』を私達が扱えているのは互換性がある証拠よ。そうでなければ扱い方を理解する事だって出来なかった筈よ」
なるほど。元々各自のスキルで慣れていたからなんだね。
「ええ。同じく力だけを吸い出す事も出来る筈。とはいえ混ぜられるのかは要検証ね。今の私達には攪拌棒もパレットナイフも無いんですもの。私達が力そのものを扱えるようにならない限り、机上の空論の域を出ないのかもしれないわ」
同じパレットに絵の具を出して二色を使い分ける事は出来るけど、その二色を使って新しい色を作り出す事は出来ないわけか。そこには道具と経験が必要なんだね。
「完璧よ♪ 流石私の影裡ね♪」
「綺透さん!」
未来ちゃんがキレた。




