01-50.観察
「ようやく動き出すみたいですね」
「慎重で優しい子達よね」
「ものは言いようですね。その評価は甘すぎるかと」
「ミーシャが情報を渋りすぎたせいじゃない」
「なんでもかんでも導けばよいというものでもありません」
「世界を滅ぼした神の言う事は違うわね」
「あれは貰い事故です。仕方がなかったんです」
「ミーシャが介入していれば簡単に倒せた筈じゃない」
「そんな世界に意味はありません」
「わざと滅ぼしたって言うの?」
「バカなことを言わないでください。これ以上続けるなら流石に怒りますよ」
「……ごめんなさい。言葉が過ぎたわ」
「よく人の事を言えたものです。この世界の現状は全てトリウィアのせいではありませんか」
「そうね……本当に……」
「一々落ち込まないでください。あなた生意気言うくせに打たれ弱すぎるんですよ。そんなんじゃ守護神なんて務まらないでしょうに」
「実際その通りだわ……私が逃げ出したせいで……」
「けれどあなたは戻ってきました。私という助っ人を引き連れて。あなたの逃避にも意味はあったのです。きっとトリウィア一人で頑張り続けていれば私のように世界を滅ぼしていた筈です。というか私の世界は別に滅んでないですけどね。ギリギリで。今もお祖母様が凍結してくれていますから」
「……ふふ。ありがとう」
「それにしても仲の良い子たちですね。これは影裡だけ引き抜くのは難しいかもしれません」
「させないって言ってるでしょ」
「安心してください。あのお方は全員纏めて面倒を見てくれます」
「だからそれがダメなのよ! あの子にこれ以上背負わせないで!」
「後悔しているのですか?」
「……今話す事じゃないわ」
「尤もですね。いいでしょう。この話はここまでです」
「仕事に戻りましょう」
「そろそろ休みが欲しいです」
「悪いけどまだまだ頑張ってもらうわよ。あの子達の為にもね」
「影裡達は街を作るつもりですね。果たして上手くいくでしょうか」
「元々想定されていた事じゃない。思い通りにはいかなかったけど」
「そうですね。正直人間達の愚かさを甘く見ていました」
「なんでもかんでも導くのは違うのでしょう?」
「道端に転がしたヒントくらいは拾い上げてほしいという話です。その点、影裡達には満点を上げても良いでしょう」
「あなたこそ甘いんじゃないかしら?」
「まあそうですね。流石に満点は言い過ぎでしたね。もう少しだけ多くの事に気付いて頂けるとありがたいのですが」
「やっぱりもっと介入するべきだと思うの」
「この件は私の担当です。私が判断します」
「ここは私の世界よ」
「それを口にするなら私は手を引きます」
「……意地悪」
「冗談です。ただの軽口です。一々本気で受け取らないでください」
「……頼りにしてるのよ?」
「わかっています。見捨てたりなんてしません。可愛い妹分くらいには想っているのですから」
「姉は私よ」
「誰が見ても私を姉と思うでしょう。あなたは見た目からして幼いですから」
「……やっぱり意地悪だわ」
「もっと言い返してください。今日は随分と元気がありませんね。いつもはもう少し張り合いがあるじゃないですか」
「……そうかもしれないわね」
「少し力を使いすぎですね。暫く休んでいてください」
「無茶よ。ミーシャ一人で賄いきれる筈がないわ」
「それは私を甘く見すぎです。むしろ私が力を注ぎ込みすぎる事をこそ警戒すべきです」
「本当に?」
「嘘は言いません。これでもお祖母様の地獄の猛特訓をくぐり抜けてきたんです。以前の私とは違うのです」
「……そう……本当みたいね」
「トリウィアも余裕が出来たら鍛え直してもらうといいでしょう。きっと強くなれますよ」
「無茶言わないで。私とミーシャでは才能に差がありすぎるわ」
「ふふふ♪ よくわかっているじゃないですか♪」
「……ほんと、嫌になるわね」
「本当にらしくありませんね。あなたは打たれ弱いですが、根が暗いわけではありません。ただ誰より優しいだけです。人より抱え込みすぎるだけなのです。くれぐれも自分を見失わないでください」
「あら。慰めてくれるの?」
「励ましているのです。あなたがそんなでは勝てるものも勝てません」
「勝つのは私じゃないわ。あの子達よ」
「だから手を貸したいと?」
「……いいえ。今回はミーシャの方針に従うわ」
「それは何よりです。ティポネ。トリウィアを休ませてください。メガイラは私のサポートを」
「「御意」」
「アレクト。あなたはもう一度あの子達の下へ。修行をつけて差し上げましょう。それで少しは自信もつくでしょう」
「御意」
「……ありがとう。ミーシャ」
「はい♪ 今回だけですよ♪」




