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01-48.空回り会議

「我々は決断を下さねばなりません」


 そうだね。ちょっとゴタゴタし過ぎてザルバール王国関連が数日保留されちゃってたもんね。そろそろ動き出さないとだよね。あの調査員さん日に日にやつれていってるし。



「影裡さん? 何故茉白さんの膝に座っているのですか?」


 何故? それは私も知りたい。


「うふふ~♪」


 最近気付くと座っちゃうんだよね。不思議。


「降りなさい」


 まさかの命令口調。いつも丁寧な未来ちゃんとは思えない威圧感だ。


「影裡さん」


 はい。真面目に参加します。


「私はいーのに~」


「茉白さん。今から大切な会議を始めるのです。そういう事は後にしてください。メリハリも大切です」


「は~い♪」


 は~い♪



「一時はどうなる事かと思ったけど、かげりんってばすっかり元通りだね♪」


 本当はもう少し距離を置くべきかなって思ってはいるんだけどね。私にそんな忍耐力は無かったよ。ところで心愛ちゃんはいいの? フェアリスちゃんを膝に抱えてるんだけど?



「開き直りすぎですわ。それはそうと、カゲリ。次はワタクシの膝にお座りなさい」


「アリシアさん!」


「こちらでも構わぬぞ」


「凜火さんまで!?」


 未来ちゃん未来ちゃん。スマイルスマイル♪ にっ♪


「はぐぅっ!!」


「ほら、影裡。未来さんをからかって遊ばないで。会議が進まないでしょ」


 別に遊んでるつもりはないよ。怒ってる未来ちゃんなんて見たくないだけ。私、未来ちゃんの笑顔が大好きなんだもん。


「ぐぼぁっ!!?!」


 今のは美少女が出していい声じゃなかったね。減点。


「なっ!?」


「カゲリちゃん。一回黙ろっか。リーリャちゃん、お願い」


「承知」


 あら。さくちゃんたら最近なんだか大人しいね。それにリーリャちゃんも、さくちゃんの頼みを聞いてくれるようになったんだね。ちょっと複雑かも。


『なら聞かない』


 ダメダメ。嬉しくもあるんだから。そのままでお願い。


『承知』


 それはそうとスキルは返してくれない?


『ダメ』


 なんでさ。


『不毛な会議が長引く。影裡様の時間をこれ以上無駄にはさせられない』


 なんて素晴らしい忠誠心。それで? 本音は?


『影裡様を独り占め出来る絶好の機会。手放せない』


 リーリャちゃんも段々調子出てきたね。


『ボクは影。だけど影裡様の恋人。両立してこそ出来る女』


 だいぶ公私混同してる気もするけど。まあ悪い気はしないよ。


『流石影裡様。さすかげ』


 えっへっへ~♪



「ここで結論を出しましょう」


 王国との関わり方についてだね。この第一歩は今後の趨勢を決める大きな決断だ。私達もただ無為に時間を浪費していたわけじゃない。この数日は各々の考えを纏める為の時間だった。だいぶ桃色に染まっている人達もいたみたいだけど、そこはパーフェクトお嬢様達だ。ちゃんと現実にも視線を向けていた筈だ。たとえ桃色思春期真っ只中だからって、成すべきことを疎かにする子達じゃない。……筈だ。



「「「「「「「……」」」」」」」


 あれ? 皆?



「未来さん。参考までに未来さんの意見を聞かせてもらえるかしら?」


「……はい。そうですね。私が言い出したのですから」


 あれ? 未来ちゃん? 今なんか間が無かった?



「……私の結論はこの地に新たな聖域を生み出す事です」


 聖域?



「礼拝堂を中心として、一つの町を築きましょう」


 町? 人を集める為に? けどそれじゃあ……。



「王はどうするつもりかしら? 軍を差し向けてくるのではなかったの?」


「戦います」


「どうやって?」


「ある程度建て直しが済んだ所で、王都外の村々から人を集めます。その次は王都に侵入して反乱組織を中心に下層の人々を連れ出します」


「武器はどうするの?」


「木材ならばいくらでも確保できます」


「相手は鉄を使うかもしれないのよ?」


「幸い武具の数はそう多くはありません。王国の戦力も疲弊しきっています」


「木々の伐採は反感を買うわ。村人達が味方につくとは限らないわね」


「神の威光を借りましょう。正直そこは賭けになるかと。現時点では未来も視えませんので」


 まず私達が賛成しないってわけか。



「私達の手で人を殺すの?」


「極力命は奪いません。敵わぬと示せればそこまでです」


「そう上手くいくかしら? 水源や食料についてはどう考えているの? 完全に占有してしまえば王都に残った民が飢えるわよ? かといって、こちらが押さえなければ向こうが押さえるだけでしょうね」


「可能であるならもう一つ確保します。地底湖は距離があるので難しいですが、掘れば湧く可能性もあります」


「掘る手段は一旦脇に奥として、下手な事をして湖が干上がれば意味がないわ。見切り発車が過ぎるんじゃないかしら。未来予知だってあまり遠い未来は見通せないでしょう?」


「そうですね。多分に賭けの要素が含まれます。細かい事は改めて考える事を前提とした不完全な方針です。ただこれは第三の選択肢になり得るものと考えます。現状、王家との和解は不可能です。かと言ってただ待ち構えるだけでは時間がかかり過ぎます。能動的に動く策は必要です」


「そうね。その意見には賛同するわ。どの道戦いを避ける手段は存在しないのかもしれない。だから準備を進めようというのも理には叶っているわ」


 そうだね。なんだかこれまで話し合った事の間を取ったみたいな作戦だね。今の王家とは別の勢力を作り出す事で人々の団結を促そうってわけだ。しかし、当然今の王家とは完全な敵対関係になるから、戦う事を前提とした策でもある。


 私達のスキルが森のバックアップを受けているという仮説に基づいて考えるなら、この森に拠点を作って待ち構えるのが定石だよね。


 私達には神様の使者という大義名分もある。人々の支持を集めるにはその点を上手く活用していかないとだね。人を集めるには様々な責任も伴うのだから、体制作りにも細心の注意が必要だ。



「次は私から提案させてもらうわね」


 キスイちゃんは別の意見を持っているんだね。



「私の策はシンプルよ。補給部隊を寝返らせましょう。それで王国は落とせるわ」


 あらら。確かにシンプルだけど、未来ちゃんの以上に過激な提案が出てきちゃった。



「まず大前提なのだけど、私達に長期戦は向いていないわ」


 まあそうね。守りの要であるさくちゃんの結界は就寝中の維持ができないわけだし。



「だから王国の要所を的確に突き崩しましょう。これまで観察を続けていた限り、補給部隊はあの人達だけよ。日によって上下する事はあるけれど、原則交代制でもなく、あの百数名だけで王国の全国民を維持しているのが現状よ。だから補給部隊を押さえれば必ず勝てるわ。それこそ戦う必要も無いでしょうね」


「いいえ。兵士は別に存在しています。補給部隊の方々は軍の末端に過ぎません」


「末端? 末端ですって? 意味がわからないわ。魔獣以外の外敵もいないのにどうしてそんなに軍人が必要なの? 魔獣達は王都の中には発生しないのでしょう?」


 魔獣は風に乗って運ばれた死の砂が集まって発生する。王都は高い壁で囲っているから王都内には魔獣が発生しない。それは既に未来ちゃんが確認済みだ。



「民を押さえる為です。王を守る為だけに存在しているのです」


「だとしても、たった百人で確保できる食料でそこまでの人数は養えないわ。しかも彼らは二日に一度しか森を訪れていないのよ?」


「この森の食料は特別なのです。木の実一つあれば大の大人が二日は持ちます」


「まさか!? そんな筈ないわ! 私が調べた限りでは普通の木の実だったもの! それに私達は毎日幾つも食べていたじゃない! そこまで過剰なカロリーを秘めていたなら身体に影響を及ぼす筈よ!?」


「綺透さんの能力の弱点は綺透さん自身が一番理解している筈です。身体への影響はわかりません。すみません。私も今知ったのです。もっと早く視てみるべきでした」



 まあね。そこら辺はしかたないよ。二人ともらしくないとは思うけど。


 キスイちゃんのスキルは構造把握だ。物質、非物質は問わないけど、あくまでその構造をバラして視れるというだけのものなのだ。そもそも知らない物質については理解出来ないし、理解できたとしてもキスイちゃんのよく知る常識とは別のものなのかもしれない。何せここは異世界だからね。なんなら現地住民と私達では身体の構造だって違うのかもだし。


 そして未来ちゃんの未来予知は視ようとしなければ視られない。疑問に思わなければ答えが示される事は無いし、そもそも今の私達は王都に近づかない方針を取っている。よっぽど強く意識しないと王都でしか得られない情報は覗けない。


 未来ちゃんだって王都全体の知識を持っているわけじゃない。なにも王都内で全く食料の生産が行われていないと思っていたわけじゃない。畑や家畜だって育てているかもしれない。中型以上の動物が存在しなくたって、鶏みたいなのもいるかもしれない。



 やっぱり私達の知識は足りていない。まだまだ推測に頼る部分が多すぎる。冷静に考えれば違和感を持つ事だってどうしても抜け落ちてしまう。ここは焦らず調査員さんから情報を引き出すべきではなかろうか。当初の予定通りに。



「全員清聴。影裡様はこのように仰られている」


 お♪ 代弁してくれるんだね♪



「これ以上は時間の無駄。即刻王を討つべし。と」


「(ぶんぶんぶんぶん!!)」


 言ってない言ってない!! 捏造しないで!?



「違うらしいわよ」


「影裡さんがそんな事言うわけないじゃないですか」


「……チッ……冗談。ほんの茶目っ気」


 嘘だ!? 今舌打ちしてたぁ!



「主の言葉を騙って自分の意見を出すなんて、とんだ不良忍者だね。リーリャちゃん」


 なんでさくちゃんはちょっと嬉しそうなの? 私の知らない所でリーリャちゃんと何かあった?



「必要なのは情報」


「(こくこく!)」


 そうそれ!!



「お前達浮かれすぎ。禄に考えも根回しもせず思いつきをペラペラと。挙げ句当初の計画を忘れて過激な提案ばかりしやがって。もっと真面目にやれ」


 オブラート!!

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