01-46.仕切り直し
「戻ったのね。影裡」
うん? あれ? キスイちゃん?
「さっきはごめんなさい。あんなの怖くなって当然よね。私達どうかしていたわ。舞い上がって混乱して、あなたを追い詰めた。あなたの気持ちも考えずに私達の気持ちを押し付けた。本当にごめんなさい。もう二度とあんな真似はしない。これからもどうか私達の側に居てください。お願いします」
「「「「「ごめんなさい!!」」」」」
!? 待って待って!? なんで皆が謝るの!? 皆は何も悪くないよ!? 悪いのは私だよ!? 私が皆を泣かせたんだよ!? しかもそのまま放って逃げ出したんだよ!? 責められるべきは私だよ!? 謝るべきは私なんだよ!?
「違います。影裡さんは何も悪くなんてないんです」
「そうですわ。ワタクシ達は一方的にカゲリを襲った挙げ句、意にそぐわないからと涙まで見せたのです。これが卑劣でなくなんと言うのですか」
けど! それは皆が私の事を!
「影裡ちゃん。私達がどういうつもりで泣いていたかなんて関係がないの。影裡ちゃんから見たら怖くて堪らなかったでしょう? だから逃げ出したのでしょう? 私達は影裡ちゃんにそんな想いをさせたの。だから悪いのは私達なのよ」
ちが……そんなんじゃ……。
「ごめんね、かげりん。うちら意味わかんないよね。もしかしたらかげりんの考えた通りなのかも。うちらはただ寂しいから甘えて悪ノリしてるだけなのかも」
それもこれも私が……。
「けれどそれでもだ。我々の想いは本物だ。どうかそれだけは信じて欲しい。こんな事を言えた立場ではないとわかっている。いくら口にしたとて今はまだ信じてもらえぬ事もだ。だから我々は精進しよう。影裡殿に伝わるまで決して諦めはせん。そう誓おう」
……。
「影裡」
「影裡さん」
「カゲリ」
「影裡ちゃん」
「かげりん」
「影裡殿」
「カゲリちゃん」
「影裡様」
……うん。……わかった。
……えっと……よろしくね? で、いいのかな?
「「「「「「「「こちらこそ!」」」」」」」」
……あはは。…………はは。
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結局、あれから皆は以前の皆に戻ってしまった。まるで何事もなかったかのように優しく接してくれる。強いて変わった所を上げるとするなら、皆からのスキンシップが少し増えた程度だ。
それも優しく手を握ったり、頭を撫でてくれるだけ。ハグやキスはしてこない。私も自分からする事はなくなった。
正直ちょっと寂しい。けれど仕方がない。私のせいだって思う気持ちも相変わらずだもの。だから我慢するしかない。同じ失敗は繰り返せない。
「我慢なんて必要ないわ」
キスイちゃんが皆の目を盗みながら私を抱き締めた。
「私はあなたの恋人よ。あなたの望む事をしてあげたいの」
恋人だから望まない事はしないの?
「そうよ。あなたは玩具なんかじゃないんだから」
……気にしてた?
「もちろん。あなたを酷く傷付けたんですもの」
誤解だよ。私は傷ついてなんかないよ。後悔しただけ。
「同じ事よ」
……。
「キスしていいかしら?」
……ダメだよ。
「……」
……。
「……結局してしまったわ」
……ダメって言ったのに。
「私からは求めないつもりだったの。本当よ?」
それはそれでズルくない?
「だって皆止まれなくなるでしょう?」
……そうか、な……わかんないよ。
「今、『そうかも』って思ったわね」
……思ってない。
「ふふ♪ 影裡も素直じゃないわね♪」
……幻滅した?
「まさか。嬉しくなったわ」
……変態?
「なんでそうなるのよ」
私なんかを好きだって言うんだもん。普通の人は未来ちゃんみたいな人を好きになるんだよ。
「ちょっと。今は他の子の名前出さないでよ」
……ぷっ。
「何よ。笑うこと無いじゃない」
キスイちゃんってもしかして本当に私の事が好きなの?
「影裡って本当に素直じゃないのね。私達は全然影裡の事がわかっていなかったわ」
拗ねてる?
「自分に呆れているのよ。やっぱりもう一度キスしていいかしら?」
ダメ。
「……」
……。
「……影裡こそ私の事好きすぎじゃないかしら?」
……意思が弱いだけかも。
「意地っ張り」
私達似た者同士なのかもね
「意思が弱い事は認めるわ。けれど意地っ張りなんて要素は無いでしょ」
そうかな? キスイちゃんも相当な頑固者じゃない?
「どこがよ?」
私なんかに拘ってるじゃん。こんな面倒くさいのほっといて未来ちゃんでも口説いた方が、むぐっ!?
「……」
……。
「……流石に怒るわよ?」
……もう気軽にキスするじゃん。
「もう少し我慢が利く方だと思っていたわ」
意思ヨワヨワだね。
「もう少し生意気な感じでお願い」
やっぱりドMなの?
「やっぱりって何よ。私にそんな趣味は無いわ」
私なんかに虐められるのが好きなんでしょ? だから私に執着するんでしょ?
「否定はしないわ。けど『なんか』と言うのはやめなさい。難しくともせめて私の前でだけは改めなさい。じゃないとまた泣くわよ。悪いけど我慢できる自信が無いわ。私の意思の弱さはもう十分わかったでしょう?」
……うん。
「良い子ね」
……私に泣かされるのは嫌い?
「そういう意地の悪さは求めてないわ」
だよね。ごめん。
「良いのよ。お互い少しずつ直していきましょう」
キスイちゃんに直す所なんてあったかな?
「あるじゃない。忍耐力とか」
我慢しちゃうの? 私が好きなのに?
「……」
……。
「……そういう意地悪なら大歓迎よ」
……キスイちゃんってキス魔だよね。
「……」
……。
「……皆には内緒よ」
……無理かも。
「綺透さん!!!」




