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01-44.モヤモヤハーレム

 あっら~。私ったら一気に八人も彼女が出来ちゃった。


 そういう設定なのかな? 皆が心細さを紛らわせるのに必要なのかな? だからってわざわざフェアリスちゃんを追い返して今やらなくても。折角協力してくれたのに。可哀想。



 そういえば前に凜火ちゃんが言ってたよね。疑似家族を形成するのも悪くないって。つまりはそういう事か。私達はただの友達じゃなくて、家族を目指そうというわけか。恋人関係というのはあくまでその為の第一歩なんだね。


 ふむふむ。面白い試みだ。どのみち運命共同体だもんね。より強い絆を結ぼうと思うのは理に適っている。別に恋人になったからって本当に恋人らしい事がしたいわけでもあるまい。私みたいなチンチクリンとあれこれしたいって話なわけがないんだし。


 きっとこれは自覚の問題だ。運命共同体として、具体的な関係に落とし込んだだけに過ぎない。私達はハーレムを形成する事でより一丸となれるのだろう。


 その中心に私が選ばれた理由もなんとなく理解出来る。他の子達同士だとガチになっちゃいそうだもんね。下手をすると崩壊の一助となってしまうかも。その点私相手なら気安かったのだろう。



 とはいえだ。ふふ♪ これは役得ってやつだね♪ こんな美少女達がこぞって私を祭り上げてくれるんだから♪


 正直、恋人だとかは無理って思ってたけど、こういう役回りなら話は別だよね♪ 皆と一緒にやるごっこ遊びでいいなら、さくちゃんの要求にも少しは応えてあげようかな♪



 皆の気持ちを思うと調子に乗るわけにはいかないけど、喜びを抑えるのも無理そうだ。精々調子に乗らないようにだけ気をつけよう。下手なことをして早々にハーレムの主役を降ろされたら堪らないもの。




 …………まあね。この考えに無理があるのかもと思う自分もいないわけじゃない。もしかしたら。万に一つでも。皆はただ純粋に私を好きになってくれたのかもしれない。少なくともさくちゃんは本気だ。それがわからないわけじゃない。


 だとしてもだ。これはあれだ。吊り橋効果ってやつだね。特異な環境が私にありもしない魅力を備えさせてくれたのだろう。少なくとも彼女達の目にはそう映っているのだ。


 だからきっと目覚める時がくる筈だ。本当の私にそんな価値は無いと知って皆の心が離れていく時が訪れる筈だ。


 そう心しよう。期間限定のハーレムだ。皆の心細さが生み出した幻想を一秒でも長く維持してみせよう。そして同時に踏み込む距離に気をつけよう。いつでも皆が引き返せるように心がけよう。大好きな皆を傷付けない為に。そして少しでも心の支えとなれるように。私に出来る限りの精一杯を成すとしよう。



「「「「「「「……はぁ~~~~~」」」」」」」


 あら。皆して一斉に溜息なんてついちゃって。なんで囲むの? 皆? ちょっと? え? なに? キスするの? 唇に? さくちゃん? キスイちゃん? リーダーちゃん? ノーブルちゃん? 凜火ちゃん? 茉白ちゃん? 心愛ちゃん? リーリャちゃん? またさくちゃん?


 なんで皆無言なの? あかん。目が回りそう。皆が抱き締めて口付けては次の人に放っていく。まるでボールをパスするみたいに。これはあれか。思い上がりを正そうとしているのかしら。私はただの共有財産に過ぎないと。皆の欲望の捌け口として扱われるだけなのだと。


 流石に傷付くなぁ……ぐすん。けどごめんなさい。私が悪いんだよね。嫌だよね。私なんかに本気だなんて思われるのって。私はお人形さんなんだね。さくちゃんも本当は……あれ? なんだか少しゆっくりになった? 頭も撫でてくれるの? 皆優しいね。こんな私の事も気遣ってくれるんだね。


 けどちょっとキスがねちっこくないかな。段々放り投げられるんじゃなくて奪い合いみたいになってきた。いや。私に注文を付ける権利なんてないのかもだけどさ。私は皆の彼女役として……ここまでするの?



 ……これいつまで続くんだろう? なんか皆ムキになってない? 張り合ってるのかな? やっぱハーレムなんてやめておけば? ほら。心愛ちゃんと茉白ちゃんなんて二人でも良い雰囲気だったじゃんさ。なんだかんださくちゃんとリーリャちゃんも相性悪くないと思うんだよね。痛い痛い。つねるのやめて。わかった。もう余計な事は考えないから。暫くはお好きにどうぞ。私も素直に皆の感触を楽しませてもらうよ。そのくらいはいいよね。完全に思考を無にしろって言うならいっそスキルを取り上げてもらっても構わないし。



「なんなんですの。この子の心はいったいどうなっているんですの」


 やっと喋ってくれた。正直怖かったよ。



「ここまでして伝わらない意味がわからないわ」


 ごめんね。察しが悪くて。皆は何が目的だったのかな? そろそろ言葉で教えてくれると助かるな。ほら、キスイちゃん。一回唇離したら次の人に回すんでしょ。玩具で遊ぶなら順番は守らなくちゃ。でないと喧嘩になっちゃうよ。



「うちのせいかな? 正直半分ノリで参加してたし」


「たぶん違うと思うわ~」


 何が正解なのか私にもわかんない。



「綺透さん! 長すぎです! 代わってください!!」


「……」


 す、吸われる……。



「ぐすん。こんな初めてになるなんて……」


「安心しろ。影裡様の初めてはとっくにボクが頂いた」


「「「「なんですって!?」」」」


「……接吻だけだ。誤解するな」


 本当の初めてはとっくの昔にさくちゃんが奪っていったよ。昔もいっぱいキスしてたもん。あの時は私も抵抗とかしなかったし。今もか。



「未来さん! もうお終い! カゲリちゃん返して! これ以上私達の邪魔しないで!」


「影裡さんは皆の恋人です。灯里さんだけのものではありません」


 あかん。喧嘩はやめて……。



「カゲリちゃんもカゲリちゃんだよ! なんでされるがままなの!? 少しは抵抗くらいしてよ! 本意じゃないんでしょ!? 彼女なんてほしくないんでしょ!?」


 それがわかってるならそろそろ解放してくれないかな。今あった事は忘れるからさ。皆も我慢の限界だったんだよね。わかるよ。中々一人になれる機会もないからさ。色々溜まってるものもあったんだよね。でも流石にこれ以上はね。あんまり軽率な事はするもんじゃないよ。そういう事は本当に大切な相手の為にとっておかないとさ。ね?



「全く! これっぽっちも! わかってないわよ!?」


「まだまだ続ける必要があります!」


「しかしこれ以上は! せめて屋内に移りますわよ!」


「礼拝堂が使えるじゃん♪」


「罰当たりだわ~」


「ダメ。これ以上は許さない」


「うむ。この先は影裡殿の心が追いついてからだ」


「もうとっくにライン越えだよ!?」


 それはそう。



 まあなんとなく足りないものがわかってきた。皆私に本気になってほしいのだ。



「「「「「「「「やっと!!」」」」」」」」


 そうだよね。一方通行のお人形遊びなんて物足りないもんね。やるなら徹底的にだよね。



「「「「「「「「わかってない!?」」」」」」」」


 あれ? 違うの? 私に没入型の名演技を期待してるんじゃなくて?



「「「「「「「「全然違う!!!」」」」」」」」


 あら~。困ったわね~。



「「「「「「「「こっちのセリフ!!」」」」」」」」


 なんかごめん……。せめて言葉にしてもらえると……。



「「「「「「「「さっき伝えたのに!?」」」」」」」」


 はて?




「カゲリちゃん。私は本当にカゲリちゃんの事が好きだよ。愛してるんだよ」


 うん。それは伝わってる。私もさくちゃん大好き。



「私だって同じです! いいえ! 灯里さんにだって負けません!」


 そっか。嬉しいな。私も未来ちゃん大好き。



「私達はそう伝えあって恋人になったのよ? なんでごっこ遊びだなんて思うのよ。私も好きよ。影裡さんのこと。本当の本当に本当よ? 私の初めても全部影裡さんにあげるわ」


 え? でも……。本当に? キスイちゃんが?


 いや、けどさ。冷静なキスイちゃんならおかしいってわかるよね? ハーレムなんて普通じゃないよ。いくら私達が追い詰められてるからってそうやって逃げるのは……あれ? キスイちゃん? なんで泣いてるの?



「カゲリ。あなた本当は認めたくないだけなんですのね」


 ……違うよ。やっぱりおかしいのは私じゃなくて皆だよ。普段のアリシアちゃんなら暴走する皆を諌めてくれたもん。こんな風に取り合うなんてはしたないって言う筈だもん。



「かげりんって変な所だけ常識的だよね。意図してそうあろうとしてるん?」


 意味がわからないよ、心愛ちゃん。常識って元々意図して守るものでしょ。



「その返答こそが理解している証拠ね。心愛ちゃんの言葉のニュアンスが違ってるってわかっているんだもの」


 茉白ちゃんまで私を責めるの?



「誰も責めてなどおらぬよ。影裡殿」


 ……元はと言えば凜火ちゃんが始めた事だよね。



「影裡様。皆は影裡様の為になる存在だよ。でなきゃボクが許さない。とっくにこの場から連れ出してる」


 心配しなくても喧嘩なんかしないよ。私だって皆の事が大好きだもん。チヤホヤされるのは嬉しいんだよ。けどさ。やっぱり信じられないよね。皆少しおかしくなってるんだよ。でなきゃ……なんで……なんで皆泣いてるの?

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