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01-04.思わぬ弱点

 なん……だと……。



「ほら♪ カゲリちゃんはこっち♪」


 おお! さくちゃん! 我が女神よ!



「マジぱない! こんなベッドどっから出てきたし!」


 摩訶不思議だよね。でも出来る事ならもう一つ出してほしかった。完全無欠インチキチートに思われた高慢ちゃんの能力にも欠点はあったのだ。



 そうそれは! 出せるベッドが一つだけという事だ!


 あくまで影のメイド達に出来るのは主人のお世話だけなのだろう。ベッドメイキングを誇張解釈しているに過ぎない。


 だからってベッドごとメイキングするのはやり過ぎだと思う。そのおかげで硬い地面に寝なくて済むのだからありがたくはあるのだけど。欲を言えばベッドも複数出してほしかった。お皿とかカップとかはいくらでも出せるっぽいし。


 一応サイズは八人でも収まる大きさだ。普段からこのベッドで寝てるの? 住む世界が違いすぎる……。



 ともかくこれは私にとって地獄の始まりだ。広いとはいえ、流石に八人で寝れば手狭にもなる。幼馴染ちゃんが唯一の救いだ。他の誰かに接触した途端に私は気を失うだろう。


 ある意味、何時でも瞬時に眠れるという……いやいや。普通にそれは辛い。毎回気絶は身体に毒だ。そんな事してたら寿命が縮んでしまう。どうにかしてベッドの端を確保しつつ、皆に面する部分は幼馴染ちゃんバリアで……。



「影裡さん♪ 私お泊まり会って初めてです♪」


 あれぇ……。なんでリーダーちゃんが隣にぃ?


 いや、うん。わかってる。現状私が一番貧弱だもの。皆私を守ってくれているんだ。中心に放り込まれてしまった事も致し方のない事なのだ……なのだ……なのだ…………。




----------------------




 どうしよう。普通に朝まで寝こけてしまった。見張ったりとかしなかったのだろうか。影メイドに任せたのかな。高慢ちゃんが一定距離離れると家具とかも消えちゃうっぽいけど、寝てる間は特に消えたりしないようだ。でなきゃ寝てる間に地面に叩きつけられていた筈だ。だからたぶん影メイド達も問題は無いのだろう。本当に便利な能力だ。もう高慢ちゃん一人で良いんじゃないかな?


 とはいえだ。本当に高慢ちゃん一人で全てが解決するわけでもない。あくまで生み出せるのは一時的なものに過ぎないわけで。言わば実体を持った幻だ。紅茶とかお菓子も無限に生み出せるっぽいけど、飲み食いした所で栄養にはならないらしい。それはそれで便利だよね♪ ダイエット要らずだ♪


 けれど今の私達に必要な便利さはそういうものじゃない。だから皆は昨日から食料やら水源やらを確保していたのだ。実際昨晩の晩御飯も木の実や小動物なんかを調理したものだった。あれが具体的になんだったのかはわからない。少なくとも蛇ではなかった筈だ。たぶん。きっと。おそらく。




「さあ皆さん! 今日も元気に行きましょう!」


 リーダーちゃんの号令で朝礼が始まった。今日の予定は昨晩の内に話し合ってある。今日も二組に分かれて行動する。


 先ずは周囲の探索と長距離移動の準備だ。一先ずの目標は人里を見つける事だ。元の世界へ帰還する為にも先ずは情報を集めなければならない。そういう時は知ってる人に聞くのが一番だ。過去に転移してきた人がいないとも限らない。文献とか漁れば何かしら情報は出てくるかもしれない。或いはこの世界が私達の知らない高度な魔法や科学を有しているなら、そこに方法が眠っているかもしれない。とにかく何をするにしても、先ずは文明を探す事が先決だ。



「それではアリシアさん! 凜火りんかさん! 茉白ましろさん! 綺透きすいさん! どうかご武運を!」


 探索チームは昨日と同じだ。万能支援、剣士、ヒーラー、斥候で、バランスが良すぎるからね。欲を言うなら遠距離攻撃役も欲しい所だ。能力を割り振った神様には物申したい。一人くらい魔法職が居たってよかったろうに。もしかしてあれかな? 魔法は別にスキルじゃなくても覚えられるとかかな? なら私にもチャンスある? 実は能力も魔力無限とかだったりしないかな? まだ魔力を感じ取れないから気付いていないだけとか? ないか。私なんかに。



「それでは影裡かげりさん! 灯里あかりさん! 心愛ここあさん! 私達も頑張りましょう!」


「「お~!!」」


 お~! ……取り敢えず手は上げておいた。既に皆も私が喋らない事は気にしていないようだ。清楚クールちゃんのお陰で私の能力は『言霊』って事になったからね。迂闊に喋るわけにはいかないのだ。うんうん。マジありがとう。



「最初は籠作りです!」


 籠の作り方なんて知ってるの? なんて聞くまでもなく、皆散らばって昨日と同じように草木を集め始めた。このお嬢様達って自己判断でなんでも出来ちゃうんだよね。リーダーちゃんは最低限の指示しか飛ばしてないのに、誰にも迷う素振りがない。


 どうやら皆はツルっぽい植物を集めているみたいだ。昨晩の内にメイドさん達が拵えてくれた石のナイフを使って慣れた手つきで切り取っていく。もしかして皆経験ある? あと虫とか怖くないの? 逞しいお嬢様達だ。あの学校の教育方針なのかな? 皆は中学もあの学校だったみたいだし。そう考えればやたらと段取りが良いのも納得かも。私が同じ教育を受けていたとしても同じ動きが出来るとは思えないけど。



「あ! 待ってカゲリちゃん! そんな持ち方したら怪我しちゃうよ!」


 過保護な幼馴染ちゃんが飛んできた。



「大丈夫だよ! カゲリちゃんは休んでて!」


 流石にそれはちょっと。



「カゲリちゃんもやりたいの?」


「(ぶんぶん)」


 取り敢えず首を縦に振っておこう。



「そっか♪ じゃあ私と一緒にやろうね♪」


 それから幼馴染ちゃんは、文字通り手取り足取り教えてくれた。お陰で日が暮れる頃には不格好ながらも、立派な籠(底だけ)が出来上がっていた。むっふ~♪



「上手♪ 上手♪ さっすがカゲリちゃん♪」


 とか言いつつ、私の分と合わせて二つの完成品を背後に隠した事は見逃してないからね? マジごめん。私が足引っ張らなかったらもっと作れたのに……。



「ふふ♪ 心配は要りませんよ♪ 影裡さん♪」


 リーダーちゃんは一人で四つも作ってくれたらしい。マジぱねえ。



「見て見て♪ うちのちょー可愛くない♪」


 ギャルちゃんが作ったのも二つだけど、なんかやたらと完成度が高い。飾りまで入ってる。なんなら今すぐ売りに出せるレベルだ。あの石のナイフだけでどうやって作ったし。



「(カキカキ)」


「あれ? かげりん何か書いてる?」


「(すごい。みんな)」


「だっしょ~♪」


「(ありがとう)」


「影裡さん!!」


 なっ!? リーダーちゃん!?



「いいんです! 気にしなくていいんです! 私達お友達なんですから!」


 あかん……。



「未来ちゃん!」


 幼馴染ちゃんが慌ててリーダーちゃんを引き剥がしてくれた。ギリギリのところで遠くなりかけていた意識が戻ってきた。



「あっ! ごめんなさい!!」


「(こちらこそ……)」


「影裡さん!」


 何故この子は一々感極まるのか。感情豊かな子だなぁ。



「(さくちゃんも。ありがと)」


「カゲリぢゃぁぁん!!」


 今度はこっちかぁ~。



「良がった! 良がっだよぉ! 覚えててくれたんだぁ! わだじもじがじだらって! 不安だったのぉ!!」


 あかん。泣かせちゃった。ごめん、さくちゃん。



「あら。これはどういう事ですの?」


「心配は要らんだろう」


「あらあら~♪ まあまあ~♪」


「何か重大イベントを見逃した気がするわ」


 四人も帰ってきた。大泣きする幼馴染さくちゃんに驚いたものの、すぐに状況を察してくれた。




----------------------




「今日の所は何も見つけられなかったわ」


 食事も済ませて昨晩と同じように会議を始めると、清楚クールちゃんが代表して今日の成果を報告してくれた。



「少なくとも近くに人の入った形跡は無いわね。それに川の類も見当たらない。明日も探ってダメなら拠点を移す事も考えましょう」


 判断早くない? そういう時ってもう少し慎重に進めるものじゃないの? ここなら水とか食料もあるんだしさ。



「幸いこの森自体はそう広くもないみたい。凜火さんが木に登って確認してくれたわ。二、三日も進めば境目に辿りつけるそうよ」


 なるほど。森から出られさえすれば人の痕跡も見つけられるかもしれないもんね。



「提案だ。明日は一人で行かせてもらいたい」


 武士道ちゃんの身体強化なら私達と一緒に行くより断然速いもんね。



「ありがとうございます。凜火さん。ですが今はやめておきましょう。もし万が一凜火さんを失えば、私達だけではどうにもなりません」


「承知した」


 最高戦力を単独で動かすのは愚策だ。こっちには未来予知と構造把握って便利な力もあるんだし。結界で守ったり影メイドを囮にしたり、皆で力を合わせれば並大抵の脅威からは逃げられる。けれど武士道ちゃんを失ったら逃げる事しか出来なくなってしまう。きっとこの子達の能力は誰一人欠けてはならないやつだ。そしてこれは能力だけの話じゃない。誰かが犠牲になれば皆の心も折れてしまうかもしれない。明るく振る舞ってはいても、決して不安が皆無なわけじゃない。慎重さは必要だ。



「皆も知っての通りこの世界には魔物が存在するわ」


 なにそれ知らない。



「最初に現れた蛇女も逃げただけで倒せたわけじゃない」


 蛇女? え? あの蛇が? そういえば私、尾の方しか見てなかった。幼馴染さくちゃんがずっと抱き締めてくれてたから。



「心配は要りません。近づいてくれば私にはわかります」


「能力を過信しすぎてはダメよ」


「はい。油断はしません」


 そっか。その蛇女を警戒してたんだ。だからすぐに動き出そうって。いつまた襲ってくるとも限らないもんね。それに他の魔物だっているかもしれない。長居は無用だ。早く森から脱出して人里を見つけ出さないとね。

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