01-39.スキル検証
「視えている未来に変化は無いのよね?」
「はい。当面は同じ事の繰り返しです。彼らは二日に一度この森を訪れます。今のところ王は強い興味を抱いていないようです」
調査員さんが無事なのもそのお陰かな。王様にとってどうでもいい事だから怒っていないのかも。もしも綺麗な女神様が手に入ればラッキーくらいな。或いは部下達の言葉をまるっきり信じていないのかも。
そもそも王様本人は光の柱を見ていなかったりして。結局物理的な手土産も無かったわけだし、消えた調度品と同じで礼拝堂まで幻だと思われているのかも。
「ありそうな話だわ。むしろそうでもないなら調査人員の追加が無いのはおかしいもの」
だよね。
「約束ですわよ」
「もちろんよ。次はどう接触していくかを考えましょう。このまま黙って眺めていても意味は無いもの」
だね。今はそれが確認出来ただけでも良しとしておこう。
「一つ一つ考えていきましょう。先ずはわかりやすく、それぞれのスキルを使って介入した場合よ」
「そーゆー話ならうちからだね♪」
「そうね。調査員と隊長を魅了して味方につけた場合の結果を見てもらいましょう」
「……視えません」
視えない?
「その未来は起こりえません。私達に本気で実行するつもりが無いからです」
そっか。やっぱり例え話だけじゃダメなんだ。
「構わないわ。必ずしも未来予知に頼る必要は無いもの。私達で考えてみましょう。その思考にだって意味がある筈よ。途中で考えが変わって未来も視えるかもしれないわ」
だね。これまでやってきた事と同じだ。望む未来に到達する為には今を変えていくしかない。今は些細な変化でも遠い未来では大きく変わっていく筈だ。
「はい♪ その通りです♪ 流石ですね♪ 綺透さん♪ 影裡さん♪」
「皆もよ。この場の誰もが諦めたりなんてしていないわ。先ずは出来る事を確認しましょう。心愛さん。『魅了』スキルについて詳しく教えてくれるかしら?」
「りょ~、て言いたい所なんだけどさ。うちもよくわかんないんだよね~。前に言ってた視覚の共有とかもむりっぽい。テイマー系のスキルって言うより、本当にただ好きになってもらう為のスキルっぽい」
「あらそうなの? 以前魔獣を操っていたじゃない」
「なんて言うのかなぁ~。たぶんなんだけど、このスキルって相手にもう一つの人格を植え付ける? みたいな感じ?」
ふむふむ。
「鳥とか兎とか虫とかも魅了は出来るんよ。けど普通虫とかって懐かないっしょ? だから一時的に人間と同じくらいの思考を持たせてるみたいな?」
なる、ほど? え? それ凄くない?
「それが人と違えば違う程反発も大きくなるのね」
「そうなんよ! ぐぅ~!! って追い出されちゃうの! 人に使えた事ないからわかんないけど、魔獣はあんまり長く魅了出来ないんだよね~。そんで虫とかも? やっぱ難しいかなって。かげりんの思念伝達? 程じゃないけど、それっぽく伝える事は出来るからお願いは遠くからでも聞いてくれんだけどさ」
心愛ちゃん好き好き大好きな人格を植え付けるスキルか。その上であくまでお願いを聞いてもらっているだけだから、細かい指示を送るのは難しいかもしれないと。
「そんな感じ♪」
「草木や他の無機物に対しては使えるのですか?」
「ううん。無理」
これって私の思念伝達を心愛ちゃんに渡せばもっと扱いやすくならないかな?
「だね♪ 精度上がるかも♪」
「試してみましょう。それからどうせならフェアリスに協力してもらいましょう。未来さん。どうかしら? この未来は視える? 危険はありそう?」
「……視えました。人に使った場合は……一先ずは問題無いようですが、元々フェアリスちゃんは心愛さんの事も好いていますから。他の人に使った場合の影響は未知数です」
だね。植え付けられた人格の方が本来の人格を乗っ取っちゃうかもしれない。不可逆の干渉は出来れば避けたいところだ。どちらが良いか悪いかは一旦置いておこう。
「心愛さんには普通にスキルを使ってもらいましょう。私が影裡さんのスキルを使ってフェアリスの心を覗いてみるわ。それで変化がわかる筈よ」
「私にやらせてください」
「そうね。そうしましょう」
「……あれ? ダメですね。未来が視えません」
「そう。こういうのもダメなのね。先に練習してもらいましょう。大丈夫よ。未来さんならきっとすぐよ」
そっか。リーダーちゃんはまだ私のスキルを使った事がないもんね。なら想像力不足かな? それとも技術を身につけていないから? 何にせよ、スキルを移してみれば解決するだろう。リーリャちゃん。お願いね。
「承知」
「先に私によ。私が使い方を教えるわ」
早速リーリャちゃんが私のスキルをキスイちゃんに移してくれた。キスイちゃんはスキルを使ってリーダーちゃんに使い方を流し込み、それから改めてリーダーちゃんにスキルを移した。
「ありがとうございます♪ これでバッチリです♪」
流石リーダーちゃん。キスイちゃんの助けがあったとはいえ、こんなに早く使い方をマスターするなんて。私は未だに使いこなせていないのに。
「やっぱり私が教えてあげましょうか?」
「(ふるふる)」
この件はリーリャちゃんの担当だからね。取り上げたりなんてしないよ。
「影裡様!」
期待してるぜ♪ 手間をかけさせてる私が言うのもあれだけど♪ 取り敢えずぎゅっちゅ♪ スキル返して♪
「すみません。やっぱり未来は視えません」
なんですと?
「未来さんは律儀ね。そうよね。まだフェアリス本人の許可を貰っていないものね」
なるへそ。今覗いちゃうとフェアリスちゃんの許可を貰う前に心の中を覗いてしまうからか。未来の事とはいえ、リーダーちゃん的にそれは認められなかったのだろう。
「うっかりしていました。先に気付くべきでした」
「ふふ♪ 未来さんでもうっかりする事があるのね♪」
「綺透さんの言い方はなんだか意地悪です……」
「未来さんが可愛いからよ♪ よく言うでしょ♪ 好きな子は虐めたくなるって♪」
「光栄です。ですがすみません。私には既に心に決めた人がいますので」
えぇ!? まさか婚約者!? それか彼氏!? 誰だ! 私のリーダーちゃんを寝取ったのは!
「「「「「「「「……」」」」」」」」
え? なに?




