01-36.コンボスキル
遺跡を再建できないかな。
「なるほど。その手があったわね」
キスイちゃんが何か思いついたっぽい。
「思いついたのはあなたじゃない」
私のはほら。本当にただ思いついた事を呟いただけで。具体的な事は何も考えてないからさ。
「あなたどういう思考回路しているの? どういうわけか一足飛びに答えを見つけ出してくるのよね。不思議だわ」
私も不思議。私程度の思いつきを毎回ありがたがってくれる皆の優しさが。
「意味がわからないわ。卑屈にも程があるでしょう」
そうかな?
「まあいいわ。その辺は追々わからせてあげるわよ」
わからせ!?
「どこに反応してんのよ!?」
「綺透さん。それよりも」
「ええ。説明するわ。これは先程の手土産の話よ。それは別に物理的なものではなくても構わないの」
「なるほど。それで遺跡の再建ですか。流石影裡さんです」
だからなんで私なのさ。私そこまで考えてないってば。単にここを荒らしづらくなるかなって思っただけなの。
「そう。けど結局は同じ話よ。神の存在を知らしめるのにこれ以上無い程わかりやすくて手っ取り早い手段だわ」
手っ取り早いかどうかは要審議じゃない?
「いいえ。実はその手段については既に思いついているの」
やっぱり流石なのはキスイちゃんじゃん。
「ふふ♪ もっと褒めなさい♪」
今のはキスイちゃんらしくない。ちょっと減点。
「あなたの為にやったのよ!!」
なんでさ。
「はぁ……。まあいいわ。早速実験してみましょう」
神殿遺跡に戻ると、既に補給部隊は引き上げた後だった。調査員さんもいないようだ。王都の皆が食料と水を待ってるもんね。タイムリミットはズラせなかったのだろう。あの人が無事だと良いのだけど。これで本当に処刑されてしまったら寝覚めが悪いなんてもんじゃないし。何よりリーダーちゃんが間違いなく落ち込んでしまうだろう。キスイちゃんの言う実験とやらが上手くいくといいのだけど。
キスイちゃんは先ずリーリャちゃんの『吸収』スキルで私から『思念伝達』を取り出して自分に移植した。
それから『構造把握』で遺跡の材質と同じ素材を瓦礫や周囲の地面から見つけ出し、それを思念伝達でリーリャちゃんに共有して『吸収』してもらい、さくちゃんが遺跡の欠けた部分に合わせて展開した『結界』の型の中に流し込んでいった。
「驚いたわ。想像以上に上手くいったわね」
驚いたのはこっちだよ。『吸収』と『放出』ってそんな使い方まで出来るんだね。取り込んだ瓦礫がまるで固まる前のコンクリートみたいになって出てくるんだもん。しかも流し込んだらすぐ固まってくれたし。便利な力だ。それにしてもよく気付いたね、キスイちゃん。
「やっぱり取り込んだものはある程度自身のイメージした通りに放出出来るのね。負の感情エネルギーが吐き出された時の事は皆も覚えているでしょう? あれはリーリャさんが魔獣達をイメージして吐き出したから似た性質を得ていたの」
気付いたキスイちゃんもだけど、あの意識を失う寸前にエネルギーが霧散しないよう、そこまで考えて吐き出したリーリャちゃんにも驚きだよ。お陰でさくちゃんが結界で捕らえられたんだもん。それもあの日実験していたのを見ていたからだったんだね。皆よく見てるなぁ~。やっぱり私とは頭の出来が違うよね。
「この調子で遺跡を直していきましょう。影裡さん。悪いけど暫くスキルは借りておくわね」
「(こくこく)」
どうぞお使いください。ところでキスイちゃんの心の声が全然漏れ聞こえてこないんだけど、もしかして既に私より使いこなしてる?
「ええ。なんなら読み取る事も出来るわよ」
うそ!? 読心術もセットだったの!?
「なんかまだ他にもありそうなのよね。ついでに調べておくわね。今度コツを教えてあげるわ」
「必要ない。影裡様にはボクが教える」
「そう。私は別にそれでも構わないわ」
流石キスイちゃん。クールだぜ。
「あなたを困らせたくはないもの」
キスイちゃんは私の顎をクイッと持ち上げて、唇のすぐ横に口づけてきた。
「ちょっと!? 綺透さん!?」
何が困らせたくないだ。わざとさくちゃんから見えない角度でやったね?
「なによ。つまらない反応ね。もう少し驚きなさいよ」
驚いてるよ。なんでリーリャちゃんとやり合うのを回避しておいて、わざわざさくちゃんの方を焚き付けたのさ。
「見て。リーリャさんたら灯里さんを抑え込むのに必死よ」
策士!? けど酷い!?
「これは自滅しただけでは? この後二人と作業を共にされるのですよね?」
「……」
ぷっ。
「大丈夫よ。二人の扱い方は把握したわ。問題なくやってみせるわよ」
ちょっと拗ねてる。可愛い。
「うっさい!」




