01-34.想定不足
「~~~~! ~~~~~!」
何言ってっかわかんねぇ……。
調査役を伴った補給部隊が森に到着し、想定通りに遺跡跡地までやってきた。私達は上空に浮かせた不可視化結界の中に入り、眼下を歩き回る人達を観察する事にした。
さくちゃん、サラっとこれ作ったけど、もしかして移動問題解決したんじゃね? 結界を浮かせて自由に動かせるんだから、そこに私達が乗ればいいわけで。空飛ぶ絨毯というか、空飛ぶ箱というか。まんまか。
とにかく後で提案してみよう。これがあれば王都にだって簡単に乗り込める。食料の運搬だってお茶の子さいさいだ。むしろどうして誰も気付かなかったし。まあ今それどころじゃなかったもんね。
調査役と補給部隊の隊長が現地の言葉で何事かを話し合っている。私はまだこの世界の言語を覚えていないから話の内容はわからない。
「あの人が調査役かな。乱暴な人だね」
え? もしかして幼馴染ちゃんも言ってる事わかるの? むしろわからないのって私だけ?
「つうやく。してあげる」
ありがとう、フェアリスちゃん。……あれ? フェアリスちゃん? いつからここに?
「このいせきだ。まちがいない」
ふむふむ。
「さがせ。おうめいだ。なんとしてもみつけださねば」
めっちゃ棒読みだ。翻訳出来る時点で私の何倍も凄いんだけども。いや、零に何掛けても零だよね。私なんかと比べるなんて烏滸がましいよね。すんません。
「へっへっへ。かみってのは、とんでもねえべっぴんのおんななんだろ? たくよぉ。へいかがうらやましいぜ。おれたちにもちぃっとばかし、おこぼれくれたっていいのによぉ」
うっわ。神様への尊敬とか欠片も無いじゃん。というか止めるべきだろうか。フェアリスちゃんにこんな内容を翻訳させるのはマズいのではなかろうか。
「ぶれいものめ。へいかにそのようなくちをきくなぞゆるされぬぞ」
そっちかい。
「それよりおまえもさがせ。わかっているのか。これでなにももちかえれなければ、われわれのいのちはないのだぞ」
え? いのち?
「へいへい」
補給部隊の隊長が動き出した。自らも捜索に加わるつもりのようだ。けれど必死な様子には見えない。命が無いとまで言われても動じていないようだ。調査役の思い過ごしなのだろうか。
「……そんな筈はありません。調査役の方も隊長さんも暫くは変わらずに通い続けます」
リーダーちゃんが呟いた。
それはよかった。けれどおかしい。リーダーちゃんの声が少し震えていた気がする。顔も僅かに青くなっている。まさか未来が変わったの?
「考えすぎよ。未来さん」
「ですが……」
「間接的な殺人だとでも思っているのでしょうけど、余計な心配よ」
そっか。私達がこの作戦を仕込まなければ調査役の人の命が脅かされる事もなかったのか……。
「考えすぎなんかではありません。それが真実です」
「違うわ。彼の命は元々脅かされていたのよ。私達が何もしなくても遅かれ早かれ似たような危機に陥っていたわ」
「だとしてもです」
「なら覚悟を決めなさい。それが出来ないのなら王国と接点を持つ事自体を諦める他無いわ」
「そんな……」
「わかっているでしょう? ここは私達の生まれ育った世界とは何もかもが違うの。嫌なら私達の手で変えるしかない。その過程で喪われるかもしれない命を全く気にするなとは言わない。けれど今回のこれは違うわ。彼の命を脅かしているものはこの世界に存在する悪であって、私達ではないの。そこを履き違えてはダメよ。でないと何も出来なくなるわ」
「……」
リーダーちゃん……。
私達は頼りすぎていたのかもしれない。リーダーちゃんが未来予知のスキルを持っているからって、彼女に全ての判断を委ねる必要は無いのに。
責任感の強いリーダーちゃんはきっと抱え込んでしまうだろう。そんな事最初からわかっていた筈だ。もっと話し合っておくべきだった。
私達は油断していた。クールちゃんの言う通りだ。ここは私達のよく知る世界とは全く違う。それを理解しきれていなかった。
神様に選ばれて、特別な力を授けられて。何があっても私達なら切り抜けられると傲っていた。自分達の事しか考えていなかった。巻き込まれる人々の状況に想像が及びきっていなかった。考えたつもりで見切り発車してしまった。
リーダーちゃんはそんな私達の失敗を全て背負い込もうとしてしまっているのだ。クールちゃんはいち早くその事に気付いた。
「……」
視線を送る。きっと綺透ちゃんなら気付いてくれる筈だ。思念伝達なんかなくたって。
「……そうね、影裡さん。一旦作戦を中止しましょう。もう一度皆でよく考えてみましょう」
ありがとう、綺透ちゃん。
「皆さんは……」
「「「「「「異議無し」」」」」」
「……わかりました。そうしましょう」




