01-32.ファーストコンタクト
「プロジェクト・ルミナス! 始動です!」
「「「「「「らじゃ!」」」」」」
らじゃ!
プロジェクト・ルミナス。別名、光の柱作戦。
さくちゃんの結界を使って遺跡跡地に光の柱を出現させ、王都の人達を誘き寄せる作戦だ。
まるで誘蛾灯みたい。とか思っちゃいけない。だからって別に神秘的な何かである必要も無い。ただ森に何かあったと示す事が重要だ。私達が神様に派遣されたこの世界の救世主であるとザルバール王国の人達に示さなければならない。
神様から裏付けを取れたお陰で私達の特異性と正当性は証明された。好き勝手していいというお墨付きを貰えたのだ。
ならば身の破滅と他人様の迷惑にさえ気をつければ多少派手な事をしても問題は無い筈だ。先々のことを考えれば神様の遣いであると名乗ってしまうのが手っ取り早いだろう。
問題はザルバール王国の人達が神様に対してどう思っているのかだ。村人の反応を見る限りでは、大多数がその存在を頼りにしていると言えるだろう。ただし素直な感謝を向けているとは言い難い。敵意とまではいかなくとも、内心頼りない存在と考えているのは間違いない。
要は諦めかけているのだ。神は自分達を見捨てたのだと。半分くらいそう信じてしまっている。だから遺跡も放置されているのだ。神の恩恵を享受しながらも、恵みを齎す大切な森を切り開いてまで信仰を取り戻そうとはしていない。
先ずはその認識を改めさせよう。あの遺跡を建て直してもらおう。私達がその扇動役となろう。きっと信仰は前を向く活力となる筈だ。神様は人々を見捨ててなんていないのだと示すとしよう。そうすればきっと人々は力を取り戻す筈だ。
人々が自ら道を切り開かねばこの世界に先は無い。待っていれば神様が助けてくれるだなんて都合の良い話がある筈もない。だから神様は私達に期待すると言ったのだ。
そして同時に、私達の力だけでは神様の足元にも及ばないのだと遠回しに伝えてきた。もし届かせたいのならこの世界の人々と協力する他無いと言ったのだ。
つまりそれは、もし皆の力を一つに纏める事が出来たのなら、神様にすら成し得ない奇跡を起こせるという意味でもある。それこそが神様の言う「期待」なのだ。
私達は勇者じゃない。パーティーメンバーだけで魔王城に乗り込んで世界を救えるわけじゃない。
私達に出来るのは「扇動」だ。神様の期待した役割はまとめ役になる事だ。私達に与えられたスキルはその為のものなのだ。決して悪を討つ為のものじゃない。
リーダーちゃんの「未来予知」は最善の未来を掴み取る為に。これは考えるまでもない。
ノーブルちゃんの「影メイド」は生活水準の向上に欠かせない生活必需品や技術を伝える為の存在でもあるのだろう。ノーブルちゃんの出す物品が一時的な幻に過ぎずとも、サンプルとして研究する事は可能なのだ。いつかこの地で同じ物を再現する事だって夢ではない筈だ。
クールちゃんの「構造把握」も様々な分野に役立てられるだろう。ノーブルちゃんのスキルと合わせれば、調味料や薬剤等の再現だって可能な筈だ。更にリーダーちゃんの未来予知とも合わせれば、実験効率は格段に向上する。やはり私達の強みは皆の力を合わせる事にこそあるのかもしれない。
ギャルちゃんの「魅了」はわかりやすい。人々が団結するのにこれ以上に手っ取り早い手段はない。使うかどうかはともかく、これのお陰で私達が詰んでしまう可能性は格段に減るだろう。この先ギャルちゃんが成長して小動物と感覚の共有なんて事が出来るようになれば、森の調査も捗るだろう。
茉白ちゃんの「治癒」は言うまでもない。健康な肉体は大切だ。そしてこれは最もわかりやすい奇跡でもある。私達がこの先宗教ごと立て直すのであれば、茉白ちゃんにはその象徴たる聖女の役割を務めてもらう事になるのかもしれない。
武士道ちゃんの「身体強化」も同様だ。戦いが目的でなくともこの過酷な世界で生き抜くのに最低限の力は必要だ。組織を作るには秩序も必要となる。武士道ちゃんには秩序の番人、或いは聖女を守る聖なる騎士を務めてもらう事になるだろう。
さくちゃんの「結界」は便利過ぎる力だ。さくちゃんの才能もあるのだろうけど、出来る事が多すぎて逆に何が目的なのかは読みづらい。本当は身を守る以上の理由は無いのかも知れない。
或いは聖女っぽい力を三つに分けた結果が、リーダーちゃんの「未来予知」、茉白ちゃんの「治癒」、さくちゃんの「結界」なのかもしれない。ギャルちゃんの「魅了」も含まれるかな? いっそ皆でアイドルでもやってもらう? 一大旋風を巻き起こすのは間違いないね♪
リーリャちゃんの「吸収」は一番謎だ。そもそも能力自体も謎過ぎる。リーリャちゃん本人があまり語ってくれないのもあるから、謎が解ける事はこの先も無いのかもしれない。
一応、特定成分の抽出なんて事も出来るみたいだから、ノーブルちゃんの齎す生活必需品の再現に必須の存在なのかもしれない。さくちゃんの結界は無菌室やビーカーの代わりにもなるだろう。よくよく考えられたスキル構成だ。私の分が割り振れなかったのも致し方なかったのかもしれない。
ただ一つ気になるのは、リーリャちゃんが私達からスキルで吸い出していた負の感情エネルギーが、魔獣の纏う霧と似ていた点だ。あれはもしかしたらヒントになっているのかもしれない。そう考えれば、リーリャちゃんの力は私達がこの世界の秘密に近づく為にも必要なものなのかもしれない。
私の「思念伝達」は受け取った経緯が異なるから別枠って可能性もある。けどこれだけのシナジーを考えた神様だ。私のスキルにも何かしら意味はあるのかもしれない。
単に私の事情に配慮してくれただけという可能性も高い。クールちゃんがいれば意思の疎通は問題ないわけだし。
それでも使いこなせれば役には立つだろう。言葉だけでなくイメージの伝達まで出来るのだ。これも人々から信頼を得る一助にはなる筈だ。ノーブルちゃんのスキルで持ち込めない物品の概念を伝えるにも役立つかもしれない。肝心の私に大した知識はないけど。
とはいえ今回の接触ではリーリャちゃんに預かってもうけどね。余計な事伝えちゃうかもだし。早く自分で制御出来るようにならないとだ。
なんならもう預けてある。未来予知に影響が出ちゃうかもだからね。未来予知を上手く扱うコツは現在の準備を怠らない事だ。未来予知だって無制限に未来を覗けるわけじゃないからね。
「視えました!」
「了解!」
リーダーちゃんの合図で即座に光る円柱型巨大結界を消し去るさくちゃん。狙い通りに王国の誰かが気付いてくれた。これ以上はまた様子を見ながらだ。見たはず、見間違いかもって迷ってもらう事も印象付ける上では重要だ。適度な謎と両極端な意見こそ、人々の興味と議論を引き立てるものなのだから。
「今日の補給部隊には調査役が同行します!」
役って事は班までは作れなかったのね。とはいえきっと専門家の類だろう。何の専門家なのかまではわからないけど、わざわざ同行させるって事は有識者ではあるのだろう。
「その方は私達を王様の下へと連れて行こうとします!」
完璧だね。後は王様と話が通じると良いのだけど。
「王の様子は?」
「王様は……ダメです。まだ足りないようです」
残念。説得には失敗するようだ。私達が神の遣いであるとは信じてくれないのだろう。
「足りない?」
「……この王様と交渉するのは難しいかもしれません」
あらら。ある意味最悪のパターンだ。
「そうそう上手くはいかないものね」
だね。もっと情報を集めてからにするべきだったかな。
「すみません」
「未来さんのせいじゃないわ。それより未来さん。私達がこの場に残った場合はどうなるかしら?」
出頭要請を拒否した場合だね。
「その場合は……兵を差し向けて来ます」
「姿を隠した場合は?」
「……当面は調査役を同行させますが……その先は視えません」
未来視の範囲外か。
安牌を取るなら今回は姿を表さずに隠れ潜むべきだ。どこかで調査役さんと話せるタイミングを見つけ出して接触し、同行せずに情報だけを抜き取っていくのがいいだろう。
今はまだ王様とまともに話が出来ないのだとしても、私達が得た情報やタイミング次第では結果も変えられるかもしれない。現在の選択に応じて未来は変化していくものだ。不都合な未来なら避けてしまうのも一つの手だ。
「作戦第一段階の収獲としては上々よ。王様との謁見の様子が垣間見られたんですもの。調査役や補給部隊がこの森に到着するにはまだ時間がかかるわ。その間に王様の人柄や主張について、視えた範囲で教えてくれる?」
「了解です!」
よしよし。作戦通りだね。




