01-24.異なる見解
「いらっしゃい。フェアリス」
クールちゃんがそんな感じの事を現地語で伝えてくれた。
「~~~~!! ~~~~~~!!」
相変わらず何を言っているのかはわからない。けど少し、いや。かなり焦っているのは見て取れる。こんなに食料盗ったらダメとでも言っているのだろう。
「~~~。~~~~~。~~」
クールちゃんが冷静に言葉を返す。もう現地語もペラペラだ。流石クールちゃん。
「『ごめんなさい。反省しているわ。今回限りよ。あなたも協力して。私達だけでは多すぎるから』だそうです♪」
え!? リーダーちゃんも!?
「!? じゅるり……」
あ、今のは私でもわかった。
結局食欲に負けたフェアリスちゃんは席に着いた。しかも凄い食べっぷりだ。瞬く間に三人前くらい平らげたのに、まだまだ止まる気配がない。お魚足りなかったかもしれない。
「~~~♪ ~~~~!」
「『どれも美味しい♪ 食べたことないものばっかり!』だそうです♪ ご満足いただけたようですね♪」
影メイドさん達が調理してくれたものには調味料もしっかり使われているからね。能力で生み出された調味料だから体内で消えちゃってエネルギーにはならないけど、味付けとして問題無いのだ。
それにしてもお腹パンパンだね。大丈夫? 帰ったら怒られない?
私達は幼気な少女を悪の道に引きずり込んでしまった。今日だけこんなお腹いっぱいになったって、明日以降も食べられるとは限らないのに。
「心配要りませんわ。カゲリ。ワタクシ達がこの国の窮状を打開するのです。いずれ誰もがお腹いっぱいに食事を食べられる世界になりますわ」
ノーブルちゃんは私の心を見透かしてしまったらしい。私ってそんなにわかりやすい? 気になる。けどありがと。
「(ニコニコ♪)」
「……」
なにその表情。
「~~~~。~~~~~」
「~~! ~~~! ~~!」
食事が終わるとクールちゃんとフェアリスちゃんが再び話を始めた。情報収集の時間だ。食べた分はきっちり吐いてもらわないとね♪
「あ~♪ 何か悪いこと考えてるわ~♪」
茉白ちゃんが後ろから抱きついてきた。ふかふか。でへ♪
「うふふ♪」
「あ! 茉白さん!?」
「ちょいちょい♪ まだ話し中っしょ♪ あかりん♪」
賑やかだなぁ。
「……」
リーリャちゃんが無言で私の前に座った。そのまま私の両腕を自身の肩と腰に通して襷掛けに巻き付けた。可愛い。
「がるる!」
「どうどう♪」
後でね。さくちゃん。
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「新しい情報を伝えるわね」
フェアリスちゃんを村に送り返した後、クールちゃんが新たに聞き出した情報を整理して報告してくれた。
「今回はこの森について改めて聞いてみたわ」
ふむふむ。
「森の奥には朽ちた建造物があるそうよ。かつてはそこで神への祈祷が行われていたらしいの」
かつては? どうしてやらなくなってしまったんだろう。
「前にこの森は神が守る地だって話はしたわよね。あれ正確には少し違うみたい。いえ。違うというと語弊があるわね。人によって考えが少し異なると言った方が正しいかしら」
まあ信心深いかどうかは人それぞれだもんね。
「多くの村人達はそれを過去形だと考えているみたいなの。実際森は少しずつ小さくなっているそうよ」
なるほど。つまり神の加護は途絶えたけど、その残滓が残っているだけ。なんて考える人もいるわけか。
逆に信心深い人も残ってはいるのだろう。きっとお歳を召した方こそ神の存在を今でも尚信じているのだろう。たぶん村長さんとかそっちのタイプだ。
「けれどこうして私達が現れた。きっと神はまだこの世界を完全に見捨てたわけではないと思うの」
ふむふむ。
「ただしその力が衰えつつあるのも事実かもしれないわね」
だから森の中にまで魔獣達が現れるのかな? 耐えきれずに朽ちるとはいえ、神様が見守っているにしては中途半端な気もするし。
残り少ない力を振り絞って異世界から勇者を呼び出した。ありそうな話だ。神様本人が出てこないのは、私達の召喚で力を使い果たしてしまったからか。
「神には三体の従僕がいたそうよ。それぞれ蛇、犬、蝙蝠の特徴を有していたらしいわ」
蛇? それってまさか?
「おそらくあの蛇女、さんは……神の遣いだったのね。私達を試していたのではないかしら」
はた迷惑な……。そこで色々説明しておいてくれたら話も早かったのに。なんなら私達の事をザルバール王国に紹介してくれればもっと楽なのに。そもそも神様自身の信用も地に落ちているから出来ないのかもだけど。
「悪いことをしてしまいました」
「そうじゃないわ。そもそも攻撃を仕掛けてきたのは向こうからでしょ。私達がこうして無事にいるのだからきっと試験は合格だったのよ」
もし不合格だったら強制送還とかしてくれたのかな? ないか。そんな余裕は。
「明日はその遺跡を見に行きましょう。補給部隊は二日に一度森を訪れるわ。ザルバール王国と接触するのは後回しでも構わないでしょう。先に遺跡を調査しておけば、お芝居の内容についてもより説得力が高められるはずよ」
「「「「「「異議無し」」」」」」
「結構よ。今日の所はこんなものかしら」
「そうですね! 今日は早めに休むと致しましょう!」
「その前に一つ話し合っておくべき事があるよ」
「なんでしょう? 灯里さん?」
「皆! よく聞いて! カゲリちゃんは私の婚約者なの!」
おっと?
「距離感に気をつけて! 触れ合えるようになったからって気軽に抱きつかないで!」
「待ちなさい。その影裡さんがキョトンとしてるわよ」
「だよね! カゲリちゃんも困ってるよね!」
「(ふるふる)」
「カゲリちゃんは優しいからそう言うけど」
「(ふるふる)」
違うってば。
「カゲリちゃん。私だって怒るんだよ?」
「影裡様はお前を婚約者と認めていない」
「リーリャさんは黙ってて!」
「迷惑なのはおま、むがっ」
「(ふるふる!)」
迷惑じゃないよ! ただちょっと困ってるだけだよ! 私さくちゃんの事大好きだよ! お嫁さんにはなれないけど!
「ほら見なさい!」
「(ふるふる! ふるふる!)」
「全力で違うと言っていますわよ?」
「カゲリちゃん!」
「ぷはっ! 影裡様は皆友達だって言ってるの! お前も含めて! 現実を見ろ! 桜庭 灯里!」
「なっ!?」
「さくらば?」
「なんで知ってるのよ!? あなたいつからカゲリちゃんのストーカーしてたの!?」
「ストーカーじゃない! ボクは影! ストーカーはそっち! 主様困ってる!」
「(ふるふる!)」
困ってない! やっぱ困ってない! だから喧嘩やめて! 仲良くして!
「皆さん落ち着いてください」
「そうよ。先ずは影裡さん本人の意思を聞きましょう。私達がああだこうだ言う事ではないわ」
「同意する」
「……カゲリちゃん。信じてるからね」
私は取り敢えずさくちゃんを抱き締めた。
「それが影裡さんの答え?」
「(ふるふる)」
「影裡さんと灯里さんはお付き合いされているのですか?」
「(ふるふる)」
「影裡さんは灯里さんの事が好きなのね?」
「(こくこく)」
「けれどそれはお友達として? 恋人としてではなく?」
「(こくこく)」
私は一度さくちゃんを離して、リーリャちゃん、リーダーちゃん、クールちゃん、ノーブルちゃん、茉白ちゃん、ギャルちゃん、武士道ちゃんを順番に抱き締めていった。
「全員お友達と。それが影裡さんの望みなのね」
「(こくこく)」
「カゲリちゃん……」
さくちゃんがまた暗い顔をしている。私はもう一度さくちゃんに抱きついて、今度は頬に口付けた。
「カゲリちゃん!!」
「結局どっちよ。どうしてまたそういう事するのよ」
「つまり友達以上恋人未満というやつかしら?」
「かげりんって、あくどいよね」
なんでよ!?
「やっぱり悪いのは影裡さんなのね」
「それは間違いありませんわね」
「すみません、影裡さん。色恋でチームが崩壊する事は避けたいので自重して頂けますか?」
リーダーちゃんまで!? 私が悪いの!?
「未来さんが若干不機嫌だわ。こんな未来さん初めてよ」
「同意する。やはり影裡殿は不可思議だ」
何その評価!?
「影裡様の初めてはボ、むが」
何口走ろうとしてるの!?
「今慌てて口止めしたわよ」
「中々良い動きであった」
「カゲリちゃん!? まさかその子と寝たの!?」
「やましい事があるのは間違いないようです」
「この際ですわ。いっそ全て洗いざらい吐いてみてはいかがですの?」
「そんでもって♪ うちらも同じ事すればいっしょ♪ 皆でかげりん共有しよっぜ♪」
「賛成~♪」
やっぱモテ期来てる!? それともこれが陽キャの平常運転!? 陽キャ怖っ! もうやだ! お家帰りたい!




