01-18.情報収集
「来ました! 皆さん隠れてください!」
翌日、ザルバール王国の補給部隊が森へとやってきた。私達は湖の対岸から様子を伺う事にした。
「随分軽装なんだね。部隊って言うからもっと兵隊みたいなの想像してたよ」
だね。ぶっちゃけ盗賊にしか見えない。失礼だけど、見た目の時点で粗野な印象を抱いてしまう。
「重い装備は必要無いのでしょう。唯一脅威となり得る黒い獣達はこの森が対処してくれます。輸送力と逃げ足を優先した結果かと」
なるほど。人数も百人くらいはいるもんね。あの村の人達より多いくらいだ。最低限の装備でも襲われる心配は無いのだろう。
「うっへぇ……もうここの水飲みたくないなぁ……」
「……安心なさい。成分に問題は無かったわ。おそらく女神特製のインチキ自浄作用でもあるのでしょう……たぶん」
けど見なきゃよかったね……。あんなバシャバシャと入っていくとは思わなかった……。
補給部隊は暫く湖のほとりで休憩を済ませてから、再び森の奥を目指して歩き始めた。
「私達も行きましょう」
「「「「「「「お~」」」」」」」
皆テンション下がってる。無理もない……。
あの人達だって飲水に使う筈だし、この森は神聖視されているって話だからもう少し丁重に扱うものかと思っていた。
ともかく現代っ子な私達には考えられない衛生観念だ。私達の場合は地底湖での水浴びだって最終日に限ったものだったし。
町の方はもっと酷いのかもしれない。清掃や身体を洗うのに使える水だって少ないんだろうし。
一先ず今日のところは情報収集に徹するつもりだ。何か急を要する事態でも無い限り彼らの前に現れるつもりは無い。
「ねえ、きっすー。あの人達何話してるん?」
「……仕事終わりに飲みに行こうだとかそんな感じよ」
今言葉濁した? もっと変な事言ってたのかも。
「お酒ってあるんだね」
「嗜好品としてだけでなく衛生面も考慮した結果ね。停滞した水って結構すぐ痛むのよ」
私も聞いた事がある。水道関連が発展していない場合はむしろ水の代わりってくらい飲まれてたんだよね。
「まだ進むみたいだね」
「この辺りにはあまり食料も無いものね」
既に取り尽くしてしまったようだ。この周囲には食べ物となるようなものが見当たらない。……うん? あれ?
「(ちょいちょい)」
「どうしたの、カゲリちゃん?」
「(あれあれ)」
「あそこに行くの? 結界を広げればいいんだね」
「(こくこく)」
「二人ともどうしましたか?」
「カゲリちゃんがあそこ気になるんだって」
「……ああ。なるほど。やっぱりカゲリさんは凄いです」
凄い? なんの話? 私はただ影が見えたから忍者ちゃんがそこに居るんじゃないかと思っただけだよ?
「こんな風に突然現れることもあるのですね。それとも今回限りのイレギュラーでしょうか」
え?
「凜火さん。アリシアさん。迎え撃ちましょう」
「うむ」
「見過ごせませんわね」
えっ!? うそっ!?
「「「~~~!! ~~~~~~!!!!」」」
影が急激に広がり、魔獣達が地面から湧き出すように突然現れた。明らかに狙いは補給部隊だ。いち早く気付いた者達から慌てて駆け出した。
「灯里さん!」
「うん!」
幼馴染ちゃんが黒霧を纏う魔獣達を結界で囲い込む。武士道ちゃんと影メイドさん達が早速斬りかかっていった。
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「状況終了です! 皆さんお疲れ様でした!」
お疲れ様。皆早くも手慣れてきたね。もしかしたらあの魔獣達がまともな生物ではないとわかった事もプラスに働いたのかも。やっぱり命を手にかけるのは抵抗があるもんね。相手が砂の塊みたいな存在なら多少はやりやすくもなるよね。
「影裡さんもありがとうございました! お陰で広がりきる前に対処出来ました!」
「(ふるふる)」
偶然だよ。
「やっぱり直感系のスキルを持っているんじゃない? きっとまだ無自覚なだけなのよ」
絶対違うんだってば。私は忍者ちゃんに会えるかと思っただけだもん。
「未来予知の弱点は視ようとしない限り視れない点です。影裡さんの力は私の弱点を補ってくださるものなのですね♪」
違うのにぃ……。
「むぅ。カゲリちゃんと相性良いのは私なんだもん……」
もう。幼馴染ちゃんたら。
「(すりすり)」
「えへへ♪ カゲリちゃんはすぐ気付いてくれるね♪」
大好きな幼馴染ちゃんの事だからね♪
「またラブラブしてますわ」
「アリリン、ジェラッてる?」
「……」
「ごめんて」
「……そんな事よりもですわ」
「はい! 追いましょう!」
追いつけるかな? もうすっかり見えなくなっちゃった。
「待って。何人かここに残りましょう。砂に還るという話の真偽を確かめておくべきよ。今回は全て倒してしまったけれど、放っておいた場合にどれだけ経てば形を保てなくなるのかも把握しておくべきだわ」
それもそうだね。クールちゃんはやっぱりクールだね。
「残るならば全員で残りましょう。補給部隊の追跡は後日でも構いません。彼らは定期的にこの森を訪れるのですから」
だね。逆に魔獣達はいつ現れるかもわからないもんね。この機会を逃したら次がいつになることやらだ。現れないに越したことはないけど。
それに補給部隊の人達なら放っておいても大丈夫だろう。あの人達もすぐに気付いていた。逃げ切れるのかまではわからないけど、少なくとも慣れている様子ではあった。私達が付きっきりで守らなければならない相手でもない筈だ。
「そうね。なら今日は予定を変更してこの魔獣達を調べましょう」
「はい!」




