01-17.作戦会議
「一先ず得られた情報はこんな所かしら」
「ありがとうございます。綺透さん。短時間でよく集めてくださいました。これ以上の情報を得るには一度王都に入る必要がありそうですね」
「そうね。けれど正攻法で乗り込むのはお勧めしないわ」
「……はい。残念ながら難しいようです」
リーダーちゃんが未来予知を使ったっぽい。
「このまま乗り込めば捕縛されるでしょう」
「この国の人達の強さってどんなもん?」
「……視えた範囲に限りますが、スキル等の使用は確認出来ませんでした。私達のイメージする一般的な成人男性が武装したものと考えて頂いて差し支えないかと」
それでも十分厄介だ。私達にも非戦闘員が多いのだ。そもそも神様は大規模な戦闘を考慮していないのかも。スキル構成がたぶんそういう事に向いていない。私達にやってほしいのは争いなんかじゃないのかもしれない。
「この服では目立ちすぎるのよね」
皆制服だもんね。下手するとどっかの特殊部隊とか思われちゃうかも。
「いっそ神の遣いでも名乗っちゃう?」
「勝手に神聖視してくれる可能性はあるわね。補給部隊が訪れたタイミングで上手いこと姿を表せば誤解してくれないかしら」
「……その作戦には一つ問題があります。補給部隊の隊員達はあまり信心深い方々ではないようです」
リーダーちゃんが苦々しい顔をしている。そんな顔も出来たんだ。よっぽど酷い未来を視たっぽい。
「野蛮な略奪者みたいな連中ってわけね。まあ仕方ないわよね。こんな世界じゃ」
世紀末と言うか、殺伐としてると言うか。ヒャッハーな人たちが幅を利かせるのも致し方無しなのだろう。その様子だと補給部隊も食料をチョロまかしてるんだろうし。真面目な人たちより多くの栄養を取っているのかも。当然摂取できる食事の量は強さにも直結するのだ。それが部隊単位ともなれば調子に乗ってしまう事もあるのだろう。
「けど言う程森の物資って切羽詰まってるん? 私達が最初にいたとこみたいな、森の奥ならまだまだいっぱいあるんじゃない? 地底湖だって見つかってないっぽいしさ」
そうだね。あの周辺に人の痕跡は見つけられなかった。私達は四日かけてここまで来た。森はそれだけ広大だ。
「少し計算してみましょう。私達が森から出るのに三日程掛かりました」
そっか。最後の一日、今日は外側を歩いてたんだもんね。
「単純に計算していきますね。スタート地点を森の中心部としてみましょう。一日10km歩いたとして、半径30km、直径60km。少し半端なので直径を50kmとしておきましょう」
ふむふむ。三日目は一日森の中にいたわけでもないしね。
「この場合面積は約1963.5平方km。これは23区のおよそ三倍にあたります」
結構広いんだね。
「これ以上はより根拠の薄い憶測ですが、これだけの規模の森であれば数万人は養えるのではないでしょうか」
それでも数万人……。あれだけの大都市を賄うには到底足りていないのだろう。もしかしたら都市に住む人も殆ど残ってはいないのかもしれない。
「ただしこれは森の全てを活用出来た場合の話です。実際には大部分が手つかずの状態で放置されている筈です」
「なんで? 食料欲しいんでしょ? 大きな動物だっていないんでしょ? 何も怖がる事ないっしょ?」
「いくつか理由は考えられます。一つは森を神聖視しているが故に、不用意に踏み荒らす事を避けている場合」
村長さんもそんな話してたもんね。
「一つは運搬役、或いはその手段の不足」
補給部隊の人数がどれ程かはわからないけど、何十人だか何百人だかで何万人もの人々を支えなきゃならないわけだ。単純に人手が足りていないのかもしれない。そう長いこと探索を続けられないのかも。
「皆で住んじゃえばいいのに。エルフみたいにさ♪」
森に頼り切りの現状と生活環境がマッチしていないのはあるかもね。なんならお貴族様とかもいるのかも。そういう人が贅沢してるなら一般の民の生活は思っている以上に苦しいものなのかも。
「難しいのでしょうね。神に見捨てられてしまえば本当に全てが終わってしまうんだもの。下手な事は出来ないわ」
過剰に踏み荒らしてしまう事を恐れているのはあるかも。人の住処が森の中に移れば、それだけ食料を生み出す土地の面積も減ってしまうという問題もある。
「問題は他にもまだまだあります。ですが一度話を変えましょう。少し前向きに考えてみましょう。私達はきっと人々のお役に立てる筈です」
そうだね。あんまり暗い話が続くと気が滅入っちゃうし。それに神様が私達をこの地に呼んだ理由もきっとある筈だ。
「なにする? もっと森の中探索してみる?」
何か窮地を脱するヒントが見つけられるかもしれない。
「砂塵の調査も必要かもしれないわね」
脱出を目指すのも悪くない。
「当初の予定通り、王都で文献を探してみるのも大切です。この国の歴史を紐解く事で視えてくるものもあるかもしれません」
そうだね。一先ずざっくり現状は把握したけど、どうしてこんな世界になってしまったのかはわかってないもんね。最初からこういう世界だったって言われたら絶望だけど。
「一先ずはこの三つね。森と砂と人。全て調べて良い方向へと導く。私達の成すべき事としてはそんな所かしら」
「はい! 共にこの世界を救いましょう!」
「ひひ♪ みくちー燃えてるね♪」
「異論はありませんわ」
「同じく」
「私も頑張るね~!」
「結界を使えば砂壁の外に出られるんじゃない?」
空気読んで。幼馴染ちゃん。
「試してみる価値はあるわね」
「けどあかりんは運搬役にも最適じゃん?」
「皆で動きましょう♪ 先ずは砂壁の調査です♪」
「いきなり危険じゃないかしら?」
「慣れたら行けばいいじゃん♪ それまで森の探索するとかさ♪」
「ならば補給部隊に志願しましょう♪ 我々の有用性が認められれば国に溶け込めるかもしれません♪」
「悪くない案ね。それなら森の探索も進められるわ」
「皆からも好かれて一石二鳥だね♪」
「具体的な手段はどうしましょう。村からは門前払い。正面から王都に乗り込むのはダメ、補給部隊との接触も危険。そうなってくると後はもう忍び込むくらいよ?」
「直接王様の所行っちゃう?」
「補強部隊との接触方法を再検討してみましょう。私が結果を観測します。皆さんも案を出してみてください」
未来予知便利。
「なんか天使っぽい服でも着て厳かに現れてみる?」
「アリシアさんの服にそれらしいものはあるかしら?」
「ナイトウェアでよろしいんですの?」
あまり薄くないネグリジェとかなら。まあ……。
「あかりんはステージと照明担当ね♪」
「照明かぁ……。うん! やってみる!」
早速幼馴染ちゃんは手の平結界で試行錯誤を始めた。
「どない?」
「う~ん……もう一声お願いします」
あとなんだろう……。
「(かきかき)」
「あ! かげりんが何か思いついたみたい!」
いやん♪ そんな注目しないで♪
「演劇? 影メイドさん達に悪役を演じて頂くのですか?」
「仕方がありませんわね。そのオファーお受け致しますわ。もちろん内容次第ではありますが」
「ふむ。殺陣は任された」
「ふふ♪ 治療もするのね♪ ヒーリング効果付きの舞台なのね♪ 皆を楽しませながら癒やすのもとっても素敵ね♪」
「上手くすれば王様の下まで一直線じゃん♪」
「下手をすれば神の御遣いではなく旅芸人として扱われかねないわ。どのみち王の下へは行けるかもだけど」
「娯楽には飢えてそうだもんね♪ 流石カゲリちゃん♪」
ふふふ♪ 私はプロデューサーとして裏方頑張るね♪
「いけません! 主役は影裡さんです!」
なんですと!?
「ですわね。ワタクシの大切な従僕達を差し出すのです。カゲリにも身体を張ってもらわねば割に合いませんわ」
需要無いでしょ!?
「言い出しっぺだ。やれ」
有無を言わさぬ強い口調!
「影裡ちゃんが主役なら成功間違いなしね!」
何その信頼!?
「ぷ~くすくす♪」
ギャルちゃん笑いすぎ!
「プロデューサーは私に任せなさい。というより私が舞台に立つのは避けるべきね」
まさか髪色の事気にしてる!?
「カゲリちゃんがヒロインなら王子様はもちろん私だね♪ リハーサルは何回やる? キスシーンも当然あるよね♪ まさかその先も!? きゃっ♪ カゲリちゃんたら♪ 大っ胆♪」
そういう演劇じゃないから! 王子様役とかいないから!




