03-35.流行り
「ひー」
「あら♪ 影裡♪」
キスイが満面の笑みで振り返った。
うん? 何してるの?
「何って。見たまんまよ?」
なんか手元が……うげ……。
それは? 魔物なの?
「でしょうね。ここはダンジョンだもの」
……食べる気?
「そのために調べているのよ」
キスイは水着姿でしゃがみこみ、足元に転がった魔物の死骸を解体している。スキルを使って一つ一つの部位を確認しているようだ。
「毒性は無いわね」
それは何より。
「味は……まあ悪くないわね」
……よくそのまま口に入れられたね。
「構成物質がわかっているもの」
お陰で助かってます。
「もっと感謝なさい♪」
こちらに向かって唇を突き出してきた。
……ええい。ままよ!
「……あら。まさか本当にしてくれるとは思わなかったわ」
まさか口の中に押し込まれるとは思わなかったよ……。
「美味しい?」
キスイの味しかしないよ。
「もう一口いかが?」
普通に頂戴よ。
「気を遣ってるのよ。見えない方がいいでしょ?」
なにか間違ってると思う。
「なら目を瞑りなさい」
それはそれで怖いかも。
「少しは信じなさいよ」
「ひー」
「ふふ♪」
……うん。美味しい。
「どっちが?」
「……ひー」
「そうよね~♪」
もっと。
「ええ♪ ええ♪」
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「むっ。影裡の唇が綺透の味になってます」
なんでわかるのさ。
「間接キスですね♪ うんちゅ~~!」
「やめなさい」
「あいたっ!? 叩くことないじゃないですかぁ!」
「普通に気持ち悪いわよ。未来」
「……」
あ、リーリャ。
「あぁ!! ズルいです! リーリャさん!!」
「……ごち」
お粗末様でした。
「酷いです! 私も欲しかったです! 綺透味の影裡!」
「やめなさいってば!!」
「げふんっ!?」
悪は連行された。
「カゲリちゃん♪」
今度はさくちゃんが口付けてきた。
「えへへ♪ リーリャちゃんと間接キスしちゃった♪」
流行ってるの?
「次はうちらの番ね♪ やろ♪ ましろん♪」
「え~♪ 恥ずかしいわ~♪」
もう普通にキスしなよ。別に浮気だなんて思わないから。
「えへへ♪ それはまだ恥ずかしいかも♪」
私とキスするのは恥ずかしくないと? 私を使って間接キスするのも?
「え? だってかげりんとはもう何度もしたじゃんさ」
ちょっち安売りしすぎたか……。
「ふふ♪ 冗談冗談♪」
心愛ちゃんがキスしてきた。それから少し離れて真っ赤な顔で言葉を続けた。
「ちゃんとドキドキしてる。ほら」
それから私の手を持って心臓に押し当てた。
ほんとだ。バクバクだ。
「もう……かげりんの意地悪。ドキドキだってば」
ふふ♪ かわい♪
今度は私からキスを返す。
「……ストップ。うちはもう十分。次はましろんの番」
やっぱり間接キスするの?
「そっそうじゃなくて!」
ふふ♪ わかってるわかってる♪
「もう! かげりんの意地悪!」
心愛ちゃんってなんでか虐めたくなるんだよね♪
「ひどい! ましろ~ん! かげりんが虐めるよぉ~!」
「まあ♪ 心愛ちゃんを虐める悪い子にはお仕置きね♪」
ふふ♪ どんなお仕置きされちゃうのかなぁ~♪
「こうよ~♪」
今度は茉白ちゃんに包まれた。
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「取っ替え引っ替えしてますわね」
「アリシア殿は参加せずともよいのか?」
「そういうリンカこそ。いいんですの?」
「うむ」
「あなたは真面目すぎますわね。少しくらい気を抜いたって問題ありませんわ」
「ならば我らも羽目を外してみるか?」
「あら。あなたワタクシに興味ありましたのね」
「無論だ。アリシア殿は美しい」
「当然ですわね」
「外見もそうだが、内面は特に」
「……そういうことはカゲリに言えばいいんですの」
「ふふ♪」
「さてはからかいましたわね?」
「心外だ。紛うこと無き本心だとも」
「……水着で気が大きくなっているんですの?」
「だとしたらまだまだ修行が足りておらんな」
「……そうですわね」




