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01-13.自己肯定感バグ

「ぷくー……」


 幼馴染ちゃんが膨れっ面だ。私がクールちゃん達に相談した事が不服で堪らないらしい。



「(すりすり)」


 取り敢えず幼馴染ちゃんの肩に頬を擦り付けてみる。



「カゲリちゃん♪」


 よかった。一発で機嫌を直してくれた。御しやすい。



「あなたはまたそうやって」


 代償にノーブルちゃんの冷たい視線が突き刺さる。いや、それは大袈裟か。精々ジト目止まりだ。ごめんちゃい♪



「実際この森の中にはどれだけの脅威が存在するのかしら」


「おそらく数はそう多くない」


 武士道ちゃんは気配察知も出来るのだろうか。自前か?



「そうゆーきっすーはどう思ってん? きっすーの事だから痕跡は探してたっしょ?」


「ええ。排泄物や足跡、食べ残しなんかはね」


 そういうのも『構造把握』のスキルで探れるわけか。素の観察眼もあるかもだけど。



「けれど特段脅威と成り得る痕跡は見つけられなかったわ。どころかこの森には中型以上の動物が居ないようなの」


 それはそれでおかしな話だ。生態系はどうなっているのだろうか。



「間違いありませんわ。これまで捕獲出来たのは鳥や兎なんかに限りますの。それ以外はとんと見かけないのですわ」


 影メイドさん達が用意してくれる食事には肉もよく入っているけど、それらは全て小動物の肉だけだったようだ。



「あの蛇女に怯えて去ってしまったのかしら?」


「魔物はうんちしないとか?」


「それでも足跡は残るわ」


「これだけの規模の森です。よっぽど孤立しているのでもない限り、中型以上が皆無という事はないでしょう。或いは偶然我々の散策したエリアに存在しなかったのでしょうか。この辺りはあの蛇女さんのテリトリーなのかもしれません」


 もしかしてその蛇女がボス枠だったのかな?



「どうかしらね。あの蛇女は普段から森に住んでいるような存在とも思えなかったのだけど」


「同意する。あれは異質だ。分けて考えるべきかもしれん」


「う~ん~。そうね~」


 母性ちゃんも何か気になってる?



茉白ましろさんはどう思われましたか?」


「えっとね。たぶんね。あの蛇さんは悪い人じゃないのかな~って思うのよね」


「攻撃してきたのは向こうからじゃない」


「けどね~。本気じゃなかったでしょう?」


「そうですね。茉白さんの言う通りです」


「たしかにね。あれが本気だったのなら今頃私達は生きてはいなかったでしょうね」


 それほどかぁ……。



「あと探索はどれだけ続けられるのかしら?」


「三日が限度です。それ以上は引き返さねば飲用水が不足するでしょう」


「一度戻るのも手かもね♪ そしたら今度は私がいっぱい水を運んであげる♪」


 幼馴染ちゃんが結界の箱を頭上に生み出し、自在に動かしてみせた。



「凄いです! 灯里さん!」


「もうそこまで使いこなせているのね」


「努力は認めましょう。ですが、それは睡眠時にも継続されるものなのですか? 片手落ちでは困りますのよ?」


「あ~……練習頑張ります……」


 練習でどうにかなるの? むしろ主の意識が無くても動いてる影メイドさん達がインチキ過ぎるだけじゃないかな?



「次は人数を減らすべきかもしれませんわね」


 そうだね。結局ノーブルちゃんさえいれば持ち歩ける物資の総量は変わらないもんね。いつもの偵察チーム四人に任せた方が人数が減る分は捜索日数も増やせるよね。


 とはいえ長期間チームを分けるのにも当然危険はある。ここまで来るのに三日掛かっているのだ。往復で六日。私のような足手まといが減ればその分日程も縮められるかもだけど、同時により広い範囲を調べる必要が出てくる。一週間以上も主戦力を欠いた状態で、残された私達は生き残れるのだろうか。



「それは最後の手段にしましょう。今後私達は可能な限り共に進み続けるべきです」


「無難ですわね」


 こればかりはね。そういえば忍者ちゃんは物資足りてるのかな? あの子にはメイドさん便みたいな運搬役もいない筈だ。水や食料は足りているのだろうか。



「(ちょいちょい)」


「な~に♪」


 幼馴染ちゃんの気を引くと、ハートマークでも付いてそうな甘い声が返ってきた。この状況で忍者ちゃんの事聞いたら怒られないかな? けど聞くしかないもんね。ごめんよ、幼馴染ちゃん。決して君を傷付けたいわけじゃないんだ。



「(カキカキ)」


「あはは♪ もう♪ くすぐったい♪」


 横着して幼馴染ちゃんの手の平に書いてみたけど伝わらなかったようだ。



「カゲリ」


 あかん。ノーブルちゃんまで何か勘違いしてる。



「(カキカキ!)」


 慌てて地面に文字を書き直した。



「忍者ちゃん? なぁ~んだ。あの子の事が聞きたかったんだ。そっか。ふ~ん」


 想像通り幼馴染ちゃんは機嫌を損ねた。スリスリ。



「もう騙されないもん♪」


 よかった騙されてくれた。チョロい。



「物資の心配ならば要りませんわ。ワタクシが差し入れてますもの。彼女、遠慮なく取っていってますのよ」


 それリーダーちゃんには伝えた? 私達の分の計算狂ってないよね?



「大丈夫ですよ。影裡さん。ちゃんと計算に入れてます♪」


 よかった。流石リーダーちゃんだ。



「ふふ♪ 影裡さんは優しいですね♪ 気配りさんですね♪」


 私とは対局に位置する評価を頂いてしまった。恐れ多い。



「他にも気になる事はあるかしら? あなたの意見は参考になるわ。この際だから全て書き出してみなさいな」


 クールちゃんまで過剰な事を言い出した。



「はい! ついでにかげりんのスキルも聞きたい!」


「そうだったわね。結局この子のスキルはわからないままだったわね。書くのなら問題無いでしょう? 教えてくれるかしら?」


 あかん……。でも正直に書くしかないよね……無しっと。



「「「「「「「……本当に?」」」」」」」


 何故疑うし。



「もしかして死に戻り系とか? 話す事自体が禁忌になるなんてパターンもあるわよね」


 なら聞くなし。下手すると詰みセーブになるやつじゃん。自分で伝えなくても発動は極端に理不尽なパターンだけど。



「まだ気付いていないだけかもしれませんわ」


「そうです! 私達がお手伝いします! きっと影裡さんの才能も開花する筈です!」


 あかん。リーダーちゃんが燃えてる。



「カゲリちゃんの能力か~。どんなのがありえるかな。これって想像できそうだよね。皆の能力もそれぞれの個性に合ったものみたいだし」


 それもそうね。ノーブルちゃんのメイド召喚とか、武士道ちゃんの身体強化とか、母性ちゃんの治癒とか。基本的にそれぞれの人格がしっかり反映されてるよね。それで言うと幼馴染ちゃんの結界ってなんだろう? もしかして私以外には壁張ってる? ありそう。ちゃん付けで呼ぶの私だけだし。



「え~♪ ここで~♪ 流石に恥ずかしいよ~♪」


 何を勘違いしてるのかな? これはジト目だよ? ちょっと目が合ったくらいで悶えないでくれます?



「でも~♪ カゲリちゃんがどうしてもって言うなら~♪」


 言ってないから。



「(ぷいっ)」


「なんでぇ!?」


「意外とやりますわね」


 なにがさ。



「カゲリの能力も魅了だったりしませんの?」


 そういうって事はノーブルちゃんも魅了されてるの?



「え~♪ かげりんは違うっしょ♪ なんか天然って感じするし♪」


 ギャルちゃんは養殖なの?



「考えてみると影裡さんの事は何も知らないのよね。私達」


 そう言えば話した事なかったよね。当然だけど。



「私は知ってるも~ん♪ ふふふ♪ 良いでしょう! 語って聞かせてしんぜましょう♪ 私とカゲリちゃんのめくるめく甘い日々を♪」


 幼馴染ちゃんって立ち直り早いよね。相変わらず結界との関連性はよくわからんけど。もしかしたら結界は副次的なやつだったりしない? その真骨頂は別にある的な。わからんけど。



「やめておくわ。灯里さんの主観が強そうだもの」


「何の問題が!?」


 あるでしょ。そりゃ。



「(かきかき)」


 取り敢えず私から何か開示しよう。全部言わなくても話題の取っ掛かりさえあれば後はボディーランゲージでどうにかなるかもだし。



「「「「「「「……」」」」」」」


 あれ? 反応が無い? いや、なんか変な目してる。



「(かきかき)」


「「「「「「「……」」」」」」」


 これも? だったらこれは?



「(かきかき)」


「「「「「「「……」」」」」」」


 なんでさ!?



「その……ごめんなさい。影裡さん」


 なんで謝られてるの!?



「大丈夫です! 影裡さん! 私達お友達ですよ! 一生のお友達です! もう二度と一人になんてしませんから!」


 お、おう……あんがとよ……。



「私責任取るから! カゲリちゃんの事幸せにするから!」


 幼馴染ちゃんに責任なんかあったかな?



「どうしてそこで不思議そうな顔をするのかしら? 普通は拒絶するなり受け入れたりするものじゃない?」


 不思議なものは不思議なんだからしかたなくない? きっとクールちゃんだって戸惑う筈だ。半ば忘れかけていた幼馴染が突然現れて結婚を申し込んできたらさ。私って薄情?



「魔性の女というやつですわね」


 そんなご大層なものじゃないと思うけど。それとやっぱりノーブルちゃんもだいぶデレてきたね。私は鈍感系とは違うんだぜ♪ いやまあ、たまに全否定したくなるけど。私なんかって。躁鬱ってやつだろうか。よくわからん。



「かげりん争奪戦か~。そろそろうちも本気出そうかな」


 マジトーンで言うのやめてくれます? ギャルちゃんそういうキャラじゃないでしょ?



「影裡ちゃん。少しだけ触ってもいい? 少しずつ練習させてくれる?」


 母性ちゃんも意外と積極的なんだよなぁ。



「ふむ。やはり気になるな」


 なにが? まさか武士道ちゃんも参戦するの?



「影裡さん! 私負けませんから!」


 おっと。これはリーダーちゃんも本格参戦かしら? まさかこれが陽キャのノリ? 私は珍しい玩具? そのうち飽きて捨てられる? 陽キャ怖い……。幼馴染ちゃんは最後まで残ってくれる可能性高そうだし今のうちに媚び売っとこ。スリスリ。



「カゲリちゃん!!」


 ふふ♪ 私は打算的な女なのさ♪ 孤独よりは危ない幼馴染の方がまだマシだよね♪


 あ、でも。そういえば忍者ちゃんもいるんだった。今晩誘い出してみる? 一人で出歩けば出てきてくれるかな? 保険は多い方が……じゃなかった。先ずは真意を確かめてみないと。本当に私を想ってくれているなら側に居て欲しい。


 こちとら人肌には飢えてるからね。ただでさえろくすっぽ人と触れ合えないんだし。かと言って幼馴染ちゃんと同じベクトルで本気になれるわけでもない。難しいところだ。



「カゲリちゃん?」


 私は幼馴染ちゃんの腕にしがみつきながら、恐る恐る母性ちゃんの方へと指を伸ばしてみた。



「影裡ちゃん♪」


「(ビクッ!?)」


 あ、ダメだ。

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