03-24.戦う覚悟
「その先を右に。また暫く道なりです」
未来ナビの声が伽藍洞な廊下に響く。
どうやらこのダンジョンは迷宮型のようだ。無機質な壁がどこまでも続いている。息が詰まりそうだ。いずれ魔物が現れる筈だ。そんな緊張感も無関係ではあるまい。
「魔物出てきたらさ……」
「戦うしかあるまい」
残念ながら命の奪い合いは避けられないでしょうね。神アルテミシアは言っていたわ。放っておけば溢れ出すと。そしてダンジョンでは資源を得られると。つまりはそういうことなのでしょう。悪辣な贈り物だわ。まるで私たちに経験を積ませようとしているみたいね。
「未来。ここまで魔物を避けてしまっているわよね?」
「……綺透の言いたい事はわかります」
「やりましょう。皆も覚悟を決めてちょうだい」
「「「「「……」」」」」
怯んでいるわね。やっぱり一度戻るべきかしら。
「……」
「未来? 何を見たの?」
「……人型なんです」
本当に悪趣味ね。
「このダンジョンに生息するのはゴブリンね?」
「……はい。おそらく」
なにが物資不足の解消よ。まさかゴブリンを食えだなんて言わないでしょうね?
「アルテミシアはダンジョンの内容を把握していなかったのかしら?」
「そんな筈はありません。意図したものかと」
でしょうね。わざわざ自宅にダンジョンを設置したくらいだし。
「外は安全なのよね?」
「はい。小まめに確認はしています」
未来視で魔物が出ない事を確認していたから、無視して奥へと進んでいたのね。
「ダンジョンなら最深部に何かある筈よ」
ボスや報酬、もしかしたらダンジョンのコアだって。クリアすればダンジョンそのものを排除出来るかもしれない。
「下へ向かう階段があります」
「その直前、或いは下に強大なボスがいるんじゃない?」
「……はい。その通りです」
「弱い敵と戦って慣れておくべきよ」
「……そうですね」
困ったわね。未来さんがそんな調子じゃ。
「行こう。未来殿」
「覚悟は出来ていますわ」
「凜火さん……アリシアさん……」
「みくちー。うちやるよ! 相手が人型なら好都合だよ!」
そうね。人間から遠い相手は心愛さんの魅了スキルが通じにくいものね。逆にゴブリン相手なら全員味方にしてしまえるかもしれないわね。
「何があっても私が癒やすわ」
「背中は気にしないで! ダンジョンの入口は私が結界で塞いだから!」
二人のバックアップがあれば万が一もないでしょうね。
「……わかりました。やりましょう。皆さん」
「「「「「「おう!!」」」」」」
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「カゲリカゲリカゲリ~~~~~!!!!」
「たいへんたいへんたいへん~~~~~~!!!」
誰が変態だって?
「「「「「「「「「ゴブゴブゴブゴブ!」」」」」」」」」
何事!? リーリャ!!!
「ここに。影裡様」
えっと……あれ? もしかして問題ない?
なんかゴブリンの大群が色々運び込んで来るんだけど。
「うん。あれ味方。全員、成海 心愛の支配下」
あ。な~るほど。
「「カゲリ!?」」
落ち着いて。フェアリスちゃん。ティエラ。
「やっと帰って来れたわね」
「「キスイ!!」」
おかえり。キスイ。
「驚かせてしまってすみません」
おかえり。未来。
「かげりん♪ うち頑張った♪ 褒めて♪」
良い子良い子♪ 流石私の心愛ちゃん♪
「「「「「「「「「ゴブゴ?」」」」」」」」」
「はい! 結構です! 皆さんありがとうございました!」
「「「「「「「「「ゴブッ!」」」」」」」」」
「またね~♪」
「「「「「「「「「ゴブゴ~♪」」」」」」」」」
ゴブリンたちは扉を潜ってダンジョンの中へと戻っていった。
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「というわけでして」
未来が事のあらましを聞かせてくれた。
ダンジョンに潜った調査隊メンバーは、決意を固めて最初の戦闘に臨んだ。
しかしゴブリンたちは、あっさりと心愛ちゃんの魅了スキルの餌食となった。
そのまま調査隊は手当たり次第にゴブリンたちを仲間に加えていった。そのまま難なく第一階層の迷宮エリアを突破し、第二階層の洞窟エリア、第三階層の草原エリアへ、そして第四階層へと足を進めた。
「その先はまだ無理ね。第四階層は丸ごと水没してるのよ」
さくちゃんの結界を使えばいいんじゃないの?
「万が一を考えなさい」
それもそっか。途中で途切れたら洒落にならないもんね。
「それは奴らも同じ。用心しろ」
「そうね。次入った時は魅了が切れているかもしれないものね」
調査員のおじさんはずっとかかりっぱなしだけどね。
「人間と魔物では違うかもしれないじゃない。用心するに越したことはないわ」
だね。




