03-13.王の力
「あら。思ったより早かったわね」
「……」
キスイ。ここまでだよ。手を離して。
「嫌よ。今離れたら命が無いじゃない」
流石にそこまではしないって。精々大怪我くらいだって。
「ならダメじゃない」
「影裡様から離れろ」
ほら。これ以上怒らせたら本当に命の保証は出来ないよ。
「仕方ないわね」
キスイは私を盾にしながら少しずつ距離を取った。
「影裡様!!」
リーリャは警戒しながらも私に飛びつき、乱れた服を直し始めた。私は服の乱れも気にせず、リーリャを抱きしめた。
捕まえたぜ♪
「影裡様」
怒らないで。リーリャ。
「……」
ごめんね。きっと私のせいだよね。けどさ。リーリャが側に居てくれないなんて耐えられないんだよ。だからお願い。帰ってきて。私の隣に居て。誰より側で私を守っていて。
「……灯里に任せる」
ダメ。
「……お願い」
絶対ダメ。
「必要なこと」
却下。
「我儘」
リーリャ。リーリャは私のものだよ。
「影裡様の命令」
なら改めて命令を下すよ。秘密は明かさなくていい。ただ私の腕の中に居て。私を信じてここに居て。私が必ず守ってあげるから。その間は仕事もしなくていいよ。ううん。リーリャの仕事は私の話し相手だよ。私を安心させることだよ。わかった? 聞き分けてくれる?
「……御意」
よろしい♪
「ちょっと。何勝手な約束してるのよ」
キスイも聞いてたでしょ。これ以上リーリャに質問するのはなしだよ。
「それじゃあ意味が無いじゃない」
それでもだよ。
「まったく。本当に危機感が無いんだから」
ごめんね。一緒に未来ちゃん説得してね。
「無茶言うわね」
なんでもしてくれるんでしょ♪
「はいはい。そっちは任せなさい」
キスイなら未来ちゃんを転がすなんて造作もないもんね♪
「バカ言わないでよ。未来さんの成長速度を甘く見すぎよ」
ふふ♪ 流石私の未来ちゃん♪
「あんたどっちの味方なのよ」
愛してるぜ♪ キスイ♪
「さっきの続きをさせてくれるなら……冗談よ」
リーリャ。その物騒な物は仕舞って。
「……御意」
「一々殺気立たないでよ」
リーリャ。リーリャもキスイを愛して。これも命令。
「……」
リーリャ。
「無理」
リーリャ。
「嫌」
リーリャ。
「それだけは聞かない」
リーリャ。
「ボクの愛は影裡様だけのもの」
さくちゃんは?
「……少し」
ならそれくらいでいいからさ。ううん。その十分の一でいいよ。ほんの少しだけキスイにも分けてあげて。
「……やだ」
「どんだけ嫌われてんのよ」
びっくりだよね。
「正直ショックよ。私はリーリャさんのことだって大切な家族だと思っていたんですもの」
そうじゃなくなっちゃった?
「そんなわけないじゃない」
ほら。リーリャ。
「…………少し」
よし♪
「渋々ね。まあいいわ。今はそれで」
ありがと♪ キスイ♪ リーリャもね♪
「……影裡様の命令だから」
驚いた。リーリャが自分から手の平を差し出した。
「私も影裡の為よ」
キスイがリーリャの手を握った。
「そして私とあなたの為よ」
ふふ♪ 私の所有物コンビとして仲良くね♪
「何よそれ。なんで私まで」
嬉しいでしょ♪
「嫌よ。私は影裡の正妻になる女よ」
海賊王?
「どんな手段を使っても最後に笑った者が勝者よ」
つまり私の一人勝ち?
「……居たわね。最も海賊王に近い奴が」
いっそクーデターでも企てる?
「それもいいかもしれないわね。リーリャさんを所有出来るなら」
キスイは命知らずにもリーリャの頬に手を添えた。
リーリャ攻撃しちゃダメだよ。
「……」
「酷い主ね。私の方があなたを大切にしてあげられるわよ。リーリャ」
「……」
我慢我慢♪
リーリャを後ろから抱きしめて心に意識を流し込む。私のキスイを大好きな気持ちを力いっぱい流し込む。
「……っ」
「やめっ! やめなさい!!」
キスイが私ごとリーリャを突き飛ばした。リーリャは踏ん張る事もできずに私と共に倒れ込んだ。集中力が途切れ、意思の流し込みも中断された。
「影裡!!」
ごめん……。キスイまで巻き込むつもりは無かったんだよ……。
「そういう問題じゃないわよ!? リーリャだって壊れちゃうわよ!! 今のはダメよ! 二度とやらないで!!」
どうしてそこまで……もしかして……。
「力が増してるのよ!」
ごめんなさい……。
「もう。だから言ってるじゃない。もっと自覚なさいって」
うん。ちゃんと練習もするよ。
「反省なさい」
うん。ありがとう。キスイ。止めてくれて。
「綺透。感謝する」
「……手遅れだったかしら」




