第7章 SE、コードを書く。
絶望的な状況だった。
せっかく知り合った仲間を、もう失ってしまうのか――。
マイトの胸に絶望が広がる。
このまま逃げるべきか。いや、彼らを置いてはいけない。
何か手はあるはずだ。考えろ、俺。
しかし、戦闘力たったの5では、なんの力にもなれない。
「俺がもっと強ければ……」
――そうだ、待てよ。
俺はSEだ。コードを書くのが仕事。
であれば、CSSで表示されているステータスも、編集できるのではないか――。
瞬時にひらめき、俺はPixelで自身のステータスを開く。
流れるようなタッチで、戦闘力の改変を試みる。
0を付加し、5を500に変更。
「いけた!」
その瞬間、体に力がみなぎる。すごい力だ。
だが、直感でわかる。この改変が保たれるのは、ほんの数秒だけだ。
急げ。
全速力で飛び出す。
大狼の動きよりもずっと速い。
大きくジャンプし、目標をとらえる。
大狼の頭上から素手で鉄槌をくらわす。
大狼の頭蓋が砕ける感触を得る。
自身の身に何が起きたのかおそらくわからなかっただろう。
大狼は倒れ、静寂が森に戻った。
戦士レオは瞬時状況が呑み込まれず唖然としていた。
リオンはフラフラと体を揺らしながら、魔法使いの方へよろよろと歩み寄り、生死を確認。
ルナは意識を失っていただけで、傷は深いものの命に別状はない。
リオンは祈るように呪文を詠唱し、ルナの体を回復させた。
改変されたステータスは、既に元に戻ったことを感じる。
数秒の奇跡――しかし、それでも仲間たちを救うには十分すぎる力だった。
そして、俺はその場に仰向けに卒倒した。
体力が尽きた、とでも表現しようか。
もう、少しも体を動かす気力が残っていなかった。
戦士レオはまだ膝をついたまま、息を整えつつ、俺の目を真っ直ぐ見た。
「……お前、本当に何者だ……?」
俺は照れ臭さと安堵が入り混じる。
勝利の余韻の中で、初めて仲間たちの力になれた実感が胸に広がった。
森には再び風の音だけが響き、倒れた大狼の影が夕日に照らされる。




