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SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~  作者: しばたろう


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最終章6 仲間たちの再会

 病室には、静かな歓声が広がっていた。


 朝倉先生は小さくガッツポーズをし、

 キララと葵くんは、ハイタッチを交わした。


 すぐに看護師が駆け寄り、レオは検査へ回された。


 ――結果、異常なし。


 筋肉の張り、反射、バイタル。

 どれも「長期昏睡からの覚醒」とは思えないほど正常だった。


 

「私たち、研究室へ戻るね。兄さんはゆっくり休んで」


 希星が手を振り、葵くんが丁寧に頭を下げる。


 朝倉先生はタブレットを抱えたまま言った。


「今日の成功をフィードバックして、明日の準備をしなくてはね。

 明日は――

 久遠(ヒサオト) 莉温(リオン)さんと、

 (タチバナ) (ルナ)さんの覚醒に挑むことになるでしょう」

 

 先生たちは意気込みを隠さず、夜の研究棟へ戻っていった。



 神谷獅子(レオ)は、その後すぐに家族との再会を果たした。


 泣き崩れる母親、声を震わせる父親。

 妹らしき女性が「お兄ちゃん……!」と抱きつき、

 獅子はその頭を不器用に撫でていた。


 ――その光景を見たとき、俺の胸も熱くなった。


 異世界で誰よりも頼もしかった戦士が、

 現実世界でも、多くの人に愛されていた。



 その夜。

 静まり返った病室に、俺とレオだけが残っていた。

 

 俺たちは並んで立ち、

 眠る莉温(リオン)(ルナ)の顔を見つめる。


 四人そろう日が、もう手の届く場所にある。

 

「……レオ。記憶は戻ってきたか?」


 俺の問いかけに、獅子はゆっくりとうなずいた。


「全部……思い出したよ」


 獅子の声は低く、しかしはっきりとしていた。


「俺は――神谷獅子(カミヤ レオ)

 現実では事業団のラグビー選手で、

 営業マンとして会社にも勤めていた」


「……ラグビーか」


「ああ。試合中の事故だったらしい。

 タックルを受けた瞬間、視界が一気に暗くなって……

 気づいたら、あの世界で倒れていた。」


 レオの視線が、眠る仲間たちへ向く。


「今日、お前の話を聞いて、全部つながったよ。

 ――お前が俺を救ってくれたんだな。礼を言う、マイト」


 俺は首を振る。


「違う。

 あの世界で俺が戦えたのは、お前がいたからだ。

 助けたんじゃない……支え合ったんだよ」


 しばらく沈黙が落ちた。


 だが、獅子(レオ)はふっと息を吐き、

 懐かしい“戦士レオ”の顔で微笑んだ。


「やっぱり、俺の感は正しかった。

 ――どこへ行っても、俺たちは仲間だ」


「ああ」



 翌朝。

 病院の廊下は早い時間にもかかわらず、どこか張りつめた空気に満ちていた。


 まずは――リオン。

 久遠莉温(ヒサオト リオン)の覚醒を試みることになった。


 病室には、昨日と同じメンバーがそろっていた。

 朝倉先生、キララ、葵くん、工学研究室のスタッフたち。

 そして――リオンの両親と思われる人たちも静かに立っていた。


 俺とレオは、リオンのベッド横に椅子を寄せ、静かに見守る。


「では、開始します」

朝倉先生が淡々と告げる。


 《オーロラ・パルス》の同期音が、微かな光とともに立ち上がる。

 脳波計がわずかに震え、パラメータのバーが滑らかに動き始めた。


 そして――


 リオンの指が、かすかに動き、

 まぶたがゆっくりと震えた。


 目が開き、ぼんやりと焦点が合っていく。


「……お前ら? なんだ、その格好は……?」


 リオンは、目を覚ました。

 

 その瞬間、病室の誰かが小さく笑い、

 誰かが息を飲み、誰かが涙を拭った。


「リオン……!」

レオが声を詰まらせる。


 莉温(リオン)の両親が、ほとんど駆け寄るようにしてベッドへ近づく。


莉温(リオン)……!」

「……よかった……本当に……!」


 両親の声は震えていた。

 リオンも気恥ずかしそうにしながら、それでも笑った。


「ああ……ただいま……」


 そのままリオンは検査に回されたが――

 結果は、やはり異常なし。

 昨日のレオと同じく、驚くほど健康だった。



 午後。

 今度は、橘月(タチバナ ルナ)の覚醒作業に入る。


 ルナの両親と思われる人たちが到着し、

 その姿だけで胸が締めつけられるような緊張が漂った。

 

 俺と、レオと、リオンはルナのベッドの横に座り、静かに見つめる。


「ルナ……行くぞ」


 小さく、レオがつぶやく。


 《オーロラ・パルス》の光が静かに走り、

 機械の音が淡く室内を満たす。


 まもなく、ルナの指先がふるりと揺れた。

 眉が寄り、唇が震える。


 そして――

 ぱちり、とまぶたが開いた。


「……お前ら? なんだ、その格好は……?」


 リオンは、目を覚ました。



「覚醒確認! 成功です!」

 スタッフが声をあげる。


 ルナの両親が駆け寄る。

 母親が(ルナ)の手を握りしめ、声を震わせた。


「あぁ、よかった。本当によかった。。」

「……ごめん、心配かけたね」


 ルナは小さな笑みで答え、

 泣き笑いの母親の手を握り返した。


 検査結果は、もちろん異常なし。

 


 こうして――

 本当に全員が、帰ってきた。


 戦士レオ(神谷獅子)。

 魔法戦士リオン(久遠莉温)。

 魔法使いルナ(橘月)。

 そして俺――マイト(山中真翔)。


 異世界で出会い、

 命を預け合い、

 何度も肩を並べて戦った仲間たちが。


 この現実世界にも、再びそろった。

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