表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

いつもになる予定の登校

初授業・学園の洗礼

朝食を終え、寮の玄関を出ると、外の空気は冷たく澄んでいた。

昨夜の紅茶と深い眠りのおかげで体は軽く、頬を撫でる風さえも心地よい。

小鳥のさえずりが遠くで響き、木々の葉が朝日に透けて揺れている。

……その爽やかさを吹き飛ばす存在が、目の前に立っていた。


「隊列を整えるにゃ!」


玄関前で仁王立ちするのは――またしても宇宙服姿の学園長・ここあ。

銀色のスーツが朝日を浴びてぎらぎらと輝き、バイザーに映る景色は黒い鏡のよう。

背中のタンクからシューシューと蒸気が吐き出され、周囲に白いもやを漂わせる。

(……通学路に宇宙飛行士って、どういう状況だよ!!)


「お、おはようございます……って、やっぱりその格好なんですか!?」

「これは正装にゃ! 今日は新入生歓迎パレードにゃ!」

「ただの通学でしょ!? しかも正装はブレザーですよね!?」


通りすがりの子どもたちが目を丸くし、犬が吠え、老人が首を傾げている。

(恥ずかしい……! 昨日の廊下ホラーよりきついぞこれ!)



---


咲良は涼やかに水筒を提げて現れた。

「今日の授業中にも飲めるように、アールグレイを持ってきたの」

「授業中に紅茶!? バレたらどうするんですか!?」

「教師に振る舞えば黙るわ」

「強っ……!」


隣では、視乗がロボに鞄を持たせている。

「完全自律型通学鞄運搬システム!」

ロボはぎこちない足取りでガクガクと歩き、金属音を響かせる。

「いや、それただの荷物持ちだろ!」

「芸術は挑戦よ!」

「もう口癖すぎる!」


さらに暁は木刀を肩に担ぎ、無言で素振りを繰り返していた。

「……一、二、三」

「ちょっ、危ないって! 人通りあるんだからやめて!」

「鍛錬に休みはない」

「だから休めって!」



---


「ふふ……相変わらずだね」

彩音が苦笑しながら僕の隣に並ぶ。

髪からは石けんの香りがかすかに漂い、朝日に照らされた横顔が妙に大人びて見える。

「葵君、顔が真っ青だよ」

「これ見ろよ……宇宙服にロボに木刀だぞ? 通報されても文句言えないぞ」

「でもね、これが日常なんだよ」

さらりと言って笑う彩音。


(マジか……。彼女にとってはこれが普通……。俺だけが浮いてるのかもしれない)


ふと見ると、彩音は制服のリボンを指先で整え、軽く息を整えていた。

その仕草ひとつが、昔の幼馴染ではなく、今目の前にいる“女の子”を強く意識させる。

(……やめろ俺、今さら意識してどうする。なのに、なんでこんなに胸がざわつくんだ)


「ほら、行こ」

彩音が僕の袖を軽く引いた。

その柔らかい感触に心臓が跳ね、思わず息を飲む。

「……ああ」



---


巨大な校門が見えてくる。

「私立アーツ芸術学園」の金文字が朝日に輝き、多くの生徒が行き交っていた。

鍵盤模様のカバンを持つ者、絵の具まみれのエプロン姿の者、舞台衣装のまま歩く者――まるで学園祭のような賑わい。


「……やっぱり才能の動物園だな」

呟いた瞬間、ここあがバイザーをこちらに向ける。

「ようこそアーツ芸術学園へ。ここからが本当の宇宙にゃ!」

「宇宙じゃなくて学園生活を始めたいんですけど!?」


僕の叫びは、校庭のざわめきにかき消されていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ