同僚に愚痴る
困っていても明日は来る。
王子達に半ばイライラしながらも普通に夕食を食べ朝になる。
王子達のいる学園に行くつもりにはなれなかった。
というか、社交のために学校に通っているのに全く意味がない。
行けばいくほど、悪いうわさが増えるのだ。
最悪だ。
父に報告をして学園は欠席して、魔術の研究所にのみ顔を出すことにした。
その間に二件目のお見合いもいい感じに破談になっているだろう。
* * *
「めずらしいね、ハインリヒがこんな時間からここにいるの」
同僚たちがわらわらと集まってくる。
「実験台にはなりませんよ」
一応釘をさす。
研究所の中では割と若い、そしていい感じの傷跡。
研究のためのいい材料だ!!とたまに言われる。
勘弁してください。
「自分の研究も進めたいのと、ちょっと……」
実験台……尊い研究のために怪我が出来た詳細を話さなくてはならないことがあった。
魔法というのは色々なアプローチがある。
例えば皮膚を過去のある地点の状況に戻すという事をテーマとした場合、その時についてきちんと検証しておく必要があるのだ。
王子の側近に入っている通りやけどの理由については秘されてはいない。
王子を守った忠臣として側近入りした。
その事実が王子には必要だったらしい。
そのため、同僚たちはそのことをよく知っている。
そして今のところやけど跡を完全に治せる研究は無い。
「ああ、また“殿下”案件か」
うわあ、と引かれた様子で口々に言われる。
ここの人たちは魔法使いとして王宮の警備などをしている者も多い。
夜会等で孤立している俺を見たことがある人間も多いのだ。
「それよりも、俺は自分の作物の効率的な生産に関する魔道具の研究を進めたいんですけど」
父からいずれ兄に引き継がれる領地をより良くする。
それが当座の目標だ。
「いやいや、聞かせてくれ給えよハインリヒ君。
君のその手の話は他人事だと大変に興味深い」
少し年上の先輩がそういう。
単に、人の不幸を楽しみたいのは見え見えだが、さすがにストレスがたまっていた。
特に秘匿しなければならないようなところは別にない。
今日までのお見合い騒動について説明をして、それから最後に何もかもいやになってと『心に決めた方がいます!』と言ってしまった話をした。
周りは哀れみ半分といった感じだ。
魔法使いは少し感性がおかしい者が多い。
一般的なイマジネーションでは新たなものは生み出せないからだ。
だから、残り半分は面白いことになってんな。という大変に失礼な反応だった。
他人事だったら俺も少しは面白いと思ってしまうのかもしれない。
だけど、他人事じゃないからなあ。
「何かいい感じの叶わぬ恋ってないですか?」
イマジネーションの塊であろう同僚たちに助けを求めてみることにした。