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爆槍!アルス・マグナ  作者: 七緒木導
第五章 フラム騒動記
68/120

第68話

マグナが身を寄せているフラム村のワリカット教会には五人の僧侶が在籍していた。

 教会の最高責任者である司祭のカーマス・サフラン。

 村の学校の教師である学僧のハリカ・エレ。

 病院に勤める僧医のイーサン・マウレ。

 冒険者でもある僧医のスフィーリア・ルシエッタ。

 一般職の事務僧のミキシイナ・ステン。

 少人数ではあったが粒ぞろいの逸材ばかりだ。

 よって教会はフラム村の公共機関の多くを担い、同時に村人達の支えとなっていた。

 そんなある日、僧医イーサン・マウレは朝礼で司祭に願い出た。

「司祭様、悪いが、今日一日、マグナに手伝って貰いたい事がある」

 頼み事とはマグナによる医療行為の随伴だった。

 僧医イーサンの今日の業務は村の東地区と西の冒険者街で動けない患者の巡回診療だ。

 しかしマグナに医療行為が出来るわけでない。

「実は最近、腰を少々、痛めてな。医療器具を運ぶのに難儀している」

 荷物持ちの手伝いの役割をマグナに任せたいと言って来たのだ。

「それは良くありませんね。マグナ、今日の予定は?」

「今日は……いつもの掃除と大工さんから貰った端材の片付けです」

「では取り急ぎという訳ではありませんね」

 司祭はイーサンの要求を承認しようと彼に向かって目配せしようとする。

「お待ちください!」

 だがその司祭の決定に異を唱える者がいた。

 スフィーリアだった。

「マグナを外に出すのはまだ時期早々だと私は思われます」

 この若い尼僧ははっきりと自分の意見を口にした。

 しかし司祭はスフィーリアの意見に首を傾げる。

「そうでしょうか? 彼もここに来て既に一月が過ぎようとしています。その間、順調に教育は進んでいる様ですし、もう外に出ても大丈夫でしょう。そう思いませんか、ハリカ先生」

 そしてもう一人のマグナの教育係に話を振る。

「そうね。乳児ならともかく、今の彼なら問題なく社会に触れ合えるでしょう。むしろ遅すぎる位かも」

 そうハリカも賛同した。

 だがスフィーリアは反論する。

「しかし外に出ればまた眷属と接触する可能性があります。そうなれば彼はまた暴走を……」

「それこそ気にしすぎでしょう。もう前の戦闘から一ヶ月が経とうとしてますし、その間に村の中で眷属を見たという報告はありません。それにイーサン先生が付いて居られます。むしろ今を好機と見るべきでしょうね」

「ならせめて私が同行する事を……」

「スフィーリア、あなたには今日、他で大事な公務があるはずです」

「それは……」

 司祭にそう咎められスフィーリアは反論する機会を失った。

「ではイーサン先生、マグナの事を頼みます。それとお腰の方も大事にして下さい」

「心得た」

「マグナも判りましたね」

「はい」

 イーサンの申し出を受託され、今日一日、マグナはこの中年の僧侶の付き人となった。

 だが面白く無いのはスフィーリアだ。

 スフィーリアはひとり不貞腐れていた。

 司祭の言い分は充分に理解出来る。しかしこの若い尼僧の気分としてはマグナの初めての外出は自分が付き添うべきだと思い込んでいた。

 なのに……。

「そう、やきもちを焼きなさんな。こんな日もあるわよ」

 そう言って横に居た事務僧のミキシイナが揶揄い半分で慰めてくれた。

「別にやきもちなんて……焼いてませんわ」

 だがスフィーリアは頬をいっぱいに膨らませながらミキシイナの冗談を否定した。


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