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爆槍!アルス・マグナ  作者: 七緒木導
第三章 緑乃原事件
35/121

第35話

 二人は冒険者パーティ「ワイルドキャット団」の最古参のメンバーで、エリッサがリーダーでスフィーリアがサブリーダーだった。

 そして何よりワイルドキャット団は二人で始めたパーティだった。

 二人の出会いはお互いが駆け出しの冒険者となった最初の日、とある街の冒険者ギルドの支部での事だった。

 きっかけはギルドの冒険者登録の窓口に並んでいたスフィーリアの前にエリッサがうっかり割り込んでしまった事が原因だ。

「もし、そこのあなた! 勝手に割り込まないで下さいまし!」

 尼僧としての正義感が社会的倫理に反した精霊師の行為を即座に糾弾した。

「え? アンタ、並んでたの?」

「そう見えませんでしたの?」

「でもちょっとくらい良いでしょ? 急いでもなさそうだし」

 しかし注意しても特に悪びれる事のない精霊師を見て尼僧はムッとする。

 たちまちその場で退け退かないの言い争いとなった。

 だがその時はギルド職員達の仲介もあり喧嘩は収まった。

 だが、二人は数分後にまた争う事となる。

 今度は仕事斡旋の依頼書の張られた初級冒険者用の掲示板の前でだ。

 登録を終えた二人は貼ってあった本日、唯一の依頼書を巡って取り合いを始めてしまったのだ。

「ちょっと、渡しなさいよ! 私が先に見つけたのよ!」

「いいえ、依頼書に最初に触れたのは私ですわ!」

 二人が再び喧嘩を始めると、またまやギルドの職員の仲介が入る

 仲介の最中、二人は職員に依頼書をよく読む様にと諭された。

 依頼書には二人一組の条件が書き記されていた。

 職員は二人に向かって提案してみせた。

 仕事が欲しいのなら依頼を折半してみせてはどうかと。

 当然、喧嘩したばかりの二人はその提案に難色を示した。

 だがこの依頼を受けられなければ今日の稼ぎは何もない。

 それに今日は輝かしい自分の門出の日だ。

 なのに、せっかくの冒険者初日に仕事が無いでは格好が付かない。

 二人は渋々、ペアを組んでその仕事の依頼を受ける事とした。

 お互いの初仕事の内容は農家の畑に侵入したバミーラビットの群れの駆除だった。

 バミーラビットとは古大陸全土に広く分布する耳の長い、全身を短い毛で覆われたウサギとネズミを掛け合わせたような生き物だった。

 別名、土ウサギ。大きさは60㎝ほどの害獣で村の畑に侵入しては農作物を食い荒らす農家の嫌われ者だ。

 反面、食用にもされ狩猟の対象にされては街の中の肉屋でも普通に売られていた。

 新鮮な肉なら美味で柔らかく丸焼きや串焼きのみならず煮込みやスープの具材にされた。

 そんな害獣退治の依頼期間は三日間、その間に畑の中のバミーラビットを全て捕らえなければならない。

 しかも故意や過失に関わらず期間中に農作物が荒されれば、その被害金額が自分達の頼料から差し引かれる厳しいものだ。

 そして何より、畑の地主は土地内での魔法の使用を一切禁止した。前回、依頼した他のパーティーが捕獲の際、魔法を使って畑の中を無茶苦茶にした事が原因だ。

 二人のとって依頼内容は多少、不本意なものだった。

 眷属の討伐でも無ければ、魔獣の退治でもなく、荒野への冒険ですらない。

 それどころか自慢の魔法の使用すら封じられていた。

 それでも二人は受けた依頼をやり遂げる気でいた。

 全ては輝かしい未来への大いなる助走の為に。


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