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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

元伯爵夫人タリアの激烈なる復讐ーー優しい領主様に請われて結婚したのに、義母の陰謀によって暴漢に襲われ、娼館にまで売られてしまうだなんて、あんまりです! お義母様もろとも、伯爵家など滅び去るが良いわ!

作者: 大濠泉

◆1


 私、伯爵夫人タリア・グリアーノは、自宅屋敷内で、いきなり、大勢の黒尽くめの男どもによって床に押し倒されてしまった。

 金切り声をあげて、ジタバタして、必死に抵抗を試みたが、無駄だった。


(いったい、なにが起こったの? ここは屋敷内ですのよ!?)


 猿轡さるぐつわを噛まされ、私は両手両脚を押し広げられる。

 そして、力づくで服を裂かれ、何人もの暴漢どもにのしかかられてしまった。

 夫が不在中の隙を突かれた。

 なんと自宅内で、伯爵夫人である私が、下衆げすな男どもに凌辱されたのだ。


 信じられない出来事だった。

 舌を噛み切ることもできず、身体をもてあそばれる間、ずっとうつろろな瞳になっていた。

 夫とする愛の営みとは、感覚的にも、天地以上の隔たりがある。


 嵐が過ぎ去ったように、しばらくして、男どもがおとなしくなった。

 そのときには、被害者である私も、すっかり虚脱状態になっていた。

 肌を露わにしたまま、力無く床に横たわっていた。


「あらあら」


 そこへ、聞き慣れた声が、私の耳に飛び込んできた。


「やはり、こんな下賤げせんな者どもに蹂躙じゅうりんされてよろこぶような女でしたか。

 アナタなんかにこれ以上、伯爵夫人を名乗ってもらいたくないわぁ」


 暴漢どもの後ろから、義母が顔を出してきたのである。

 そのかたわらには、義妹までが扇子を広げて立っていた。

 二人して、暗い笑みを浮かべて、地面に横たわる私を見下していたのだ。


 そして、義母が扇子で口許を隠しつつ、暴漢どもに命じた。


「息子がこの嫁をめとってから、わが伯爵家では悪いことばかり起きてるわ。

 でも、そうねえ……とにかくお金が必要みたいだから、この下衆な女の身体で存分に稼がせてちょうだい。

 もちろん、上がりは私たち、真の伯爵家の者がすべていただくけど。

 おほほほほ」


 かくして義母の陰謀によって、夫の不在中に、私は娼館に売られてしまったのだった。

 そして、裸にかれたうえに、両足のけんを切られ、私は一生、歩けない身体にされてしまったーー。


◇◇◇


 私、タリアが、領主グリアーノ伯爵家の邸宅に初めて訪れたのは、二年前のこと。

 伯爵家のご令嬢ミラ様の家庭教師になったのだ。


 伯爵家、それも領主様のご令嬢をお教えすることは、私には名誉なことであった。

 あと二年半で成人を迎える貴族の令嬢に教えるべき内容は多岐に渡っていた。

 歴史や言語、経営学などの座学をはじめ、舞踏会での作法や、テーブル・マナーなどの行儀作法、さらには楽器を用いての音楽の習得などなどーー。


 でも、ご令嬢は、すでにわがままにお育ちになっていた。

 すぐに授業から脱け出したり、癇癪かんしゃくを起こして物を投げつけたりする。

 母親である伯爵夫人が甘やかしてばかりだから、手がつけられなくなっていた。


 もっとも、同情すべき事情もないではない。

 隣国との戦争が続いており、ご令嬢を溺愛なさっておられた領主様が、手勢を率いて出征し、何年もの長期に渡って不在中であった。

 だからだろうか。

 わがまま放題の妹と違って、次期当主であるお兄様、アレックス様だけが、真面目で優秀だった。

 不在の父に代わって、腹心の家令ダミアンとともに政務をっていた。


 そんなお兄様、アレックス様から、私は求婚された。

 妹を相手に辛抱強く教えようとしているところを見て、気に入った、という。

 私よりも二歳年上のアレックス様は仰せになった。


「私には武勇の誉れ高い父と、気立ての良い母、少々わがままが過ぎるが可愛い妹がいる。

 あとは、共に領民をいつくしむ、愛情豊かでしっかりした妻が欲しいのだ」


 いきなりプロポーズされたときは、さすがにキョトンとしてしまった。

 実際、アレックス様の家族評は身内びいきに過ぎると思えてならなかったが、それはどうでも良い。

 私には、次期領主様であるアレックス様と、結婚など出来る出自ではない。

 私は丁重ていちょうにお断りした。


「私には無理です。アレックス様。

 貴方様と結婚するということは伯爵夫人、このグリアーノ領の領主夫人となることを意味します。

 でも、私はもともと戦災孤児で、修道会で育てられた身です。

 正室になるなど不可能で、側女そばめとなるのが関の山です。

 ですが、私は修道女ですので、側女になるために還俗するほど愚かではございません。

 ですからーー」


 アレックス様は、必死に断りを入れる私を見て、微笑みを浮かべられた。


「出自など、構わないさ。

 私の母ーー現在の伯爵夫人も、元は酒場の看板娘だったという。

 街中で酔った父を介抱した手際を気に入って、父が正室として迎え入れたのだ。

 わがグリアーノ伯爵家は代々、武勇で王国にお仕えしてきた。

 出自には寛容なのだ」


 それは知らなかった。

 ミラ様の家庭教師として、このお屋敷にやって来た際、開口一番、伯爵夫人ドロネス様はおっしゃった。


「修道女にはどんな身分の女でもなれるので、安心できないわ。

 アナタはどこの馬の骨かしら?」


 怪訝けげんそうな顔つきで、ジロジロと品定めされたことがあった。

 それなのに、まさか自身の出自が「酒場の看板娘」だったとは。


 でも、自分が次期領主様からの求婚を受けて良いのだろうか?


 不安になったので、答えを保留にしたまま、古巣の修道会に戻って神父様に相談した。


「戦災孤児たる自分が、将来の伯爵夫人になって良いのでしょうか」と。


 すると、神父様からは、意外なことに、手放しで祝福された。


「それは良いことです。

 グリアーノ伯爵家の嫡男は観る目がある。

 貴女を伴侶に選ぶとは、じつに賢明な判断です。

 即座に婚約の儀を執り行いましょう」


 修道会を訪れるテラス神父様は、教会の司祭でもある。

 実際、高位貴族の婚姻を、幾つも執りなしてきた実績もおありだ。


 でも、今は戦時。

 しかも、当主たる伯爵様は、自らの軍勢を率いて最前線の陣中にあるという。

 そんなときに、婚約の儀を執り行なうのは、さすがに不謹慎な気がする。


「お父様であるご領主様のご帰還を待ってからでは?」


 私が遠慮がちに声をあげると、神父様は顔を曇らせた。


「帰還できれば、それで良いのだがな。

 それほど戦況が厳しいのだ。

 グリアーノ伯爵が陣構えをした箇所に、敵軍が総攻撃を仕掛けたとの報が入っている。

 おそらくは、つまい」


「それではーー」


 私は思わず両手を口に当てた。

 気落ちするアレックス様の姿が、容易に想像される。

 武勇の誉れ高い父君に対する尊敬の念が、並々ならぬものと知っている。


 神父様は首を横に振る。


「グリアーノ伯爵家も大変なことになろう。

 だが、領土と領民の保全は、君たち若者の肩にかかっておるのだ」


 神父様の見立ては正しかった。

 数日を経ずして、わが王国軍の敗戦の報と、領主様の戦死が伝えられた。


 結果、お兄様ーーアレックス様が伯爵位を継いだ。

 それと同時に、私は嫁ぎ、伯爵夫人となった。

 領主様の喪に服す意味もあり、結婚式はごく内輪だけで済ませる質素なものとなった。


◆2


 私が嫁いだグリアーノ伯爵家は、代々、武勇で名を馳せた家柄であった。

 隣国に近接する辺境とはいえ、王国随一の広大な領土を有する。

 それゆえ、誰からも裕福と思われていた。

 が、領主館の住人となった途端、じつは財政的に逼迫ひっぱくしており、厳しい領国運営をいられていることがわかった。


 幸いと言ってはなんだが、先代領主の戦死と、子飼い騎士団の壊滅を受け、国王陛下の命により、軍役は当分、免除されることになっていた。

 とはいえ、今までの戦費をまかなうだけで、相当、無理がたたっていた。

 年貢や課税の割合はすでに限界まで高くなっており、領国債を乱発してなんとかしのいでいる現状であった。

 さらに天候不順による作物の不作と家畜の疫病が重なり、慎重に流通を統制し、相場を安定させないと、飢饉になりかねないありさまだった。


 敗戦国内での領国経営は、まさにいばらの道である。

 でも、愛があるからと、私は頑張ると決心した。


 夫となったアレックス伯爵様に、私は念を押した。


「アレックス様。貴方様はお優しい。

 ですが、領地を治めるにはそれだけでは足りません。

 的確な判断力、そして何より、強い意志が必要です。

 領主ともなれば、一度決めた判断を撤回することはなかなかにできません。

 ですので、判断する前に、良く熟考なさいませ」


 夫は鷹揚おうように構える。


「わかった、わかった。

 タリア、そなたは心配性だな。

 心配要らぬ。

 戦場でも豪胆であった父上様が、我らを天から見そなわして、まもってくださる。

 何百人もの敵勢を血に染めた、父の剛腕がな」


 一族の虚名にすがるようでは、先が思いやられる。

 私は夫に現実を突きつけた。


「その剛腕も、すでにこの世にはございません。

 これからは私たちが、父上様に成り代わって、剛腕を振るわなければならないのです」


 目を丸くしてから、アレックスは気弱そうに笑った。


「はあ。剛腕か。皮肉なことを言う。

 余がこれから成すことは金策であろう?

 剛腕を振るうどころか、みっともなく頭を下げることばかりではないか」


 私は夫に抱きつきながら、耳元でささやいた。


「財政を立て直すために、必要なことなのです。

 なにより、今後の食糧不足に備えて、領民を飢えさせないため。

 彼らの訴えによく耳を傾けてください」


「わかった、わかった」


 夫には領主として領内を巡回してもらい、領民の陳情に耳を傾けてもらう。

 その一方で、教会や親戚筋の伝手つてを頼って、資金繰りにいそしんでもらう。


 その間、夫の留守を守って、私が政務を代行した。


 先の敗戦で多くの働き手を失ったが、それ以上に農地の荒廃が進んでいた。

 これを食い止めなければならない。

 そして、戦災により労働力が減ってしまったが、農業生産力を維持・増強しなければならない。

 そのためには、二毛作や牛馬の積極利用など、様々な農業改革が必要だ。


 数々の案件が山積みであったが、なんとかこなしていけた。

 それもこれも、夫と長く政務に取り組んできた家令ダミアンが優秀だったおかげだ。

 私は彼と一緒に、殖産興業と農地開墾の推進に取り組んだ。


 ある日、家令ダミアンが、私に進言した。


「これから様々な分野で、経費削減をしていく所存です。

 ですが、なればこそ、既得権益を保持する者たちからの強い反発が予想されます。

 ですので、まずは上のものから模範となる行動を示さなくては」


「わかりました。領主家として、強い心構えを見せれば良いんですね」


 私は家令の進言を受け入れた。


 さっそく私は、お義母様と義妹にお願いした。

 毎週開催されるティーパーティーを、月に一度に変更すること。

 その際、ケーキを五種類作り、余ったら捨てることを繰り返していたが、それは経費の無駄だから、一種類のみケーキを焼いて、決して捨てないことにした。

 また、当面の間、舞踏会を開かないことに決した。

 さらに、どのような会合においても、着用するドレスや宝飾品も質素なものに限定し、頻繁に買い替えるのをいましめた。

 伯爵家お抱えの料理人コックも五人から二人に変更した。

 極め付けは、湖畔こはんにある巨大別荘の売却である。


「あの別荘は、先代領主様ご愛用の居宅なのですよ!」


 とお義母様が激しく反対した。

 が、家令と共に、なんとか押し切った。


 これで当分の間、資金が調達できる。

 おかげで、食糧の備蓄を進める飢饉対策が進展する目処めどがついた。


 順調に事が運んでいるーーそう思えたときのことであった。

 突如として、異変が起こったのは。


 一緒になって経費削減を進めてきた家令ダミアンが、失踪してしまったのだ。


 優秀な家令が、朝の会合に出席しない。

 いぶかしく思っていたら、本格的に行方不明になったと判明した。

 私は親指の爪を噛んだ。


(明後日には、夫のアレックスが巡回を終えて帰宅するというのに……)


 せっかく進んでいた改革も、先導役を失ってしまう。

 他の事業計画を放り出して、私は伯爵夫人として家臣たちに対し、命を下した。


「一刻も早く、家令ダミアンを捜索なさい。

 これは単なる事故ではありません。

 なんらかの事件に巻き込まれた可能性があります」


 大勢の家臣たちや、領民を動員した。

 にも関わらず、一向にダミアンは見つからなかった。


 そして、家令の捜索開始から一昼夜を経た、深夜ーー。


 私、伯爵夫人タリア・グリアーノは、ヘトヘトになった身体を鞭打って、領主館に帰還した。


 そのときである。


 自室に入ると、いきなり大勢の黒尽くめの男どもによって床に押し倒されてしまった。


「キャアアア!」


 私は叫び声をあげ、手足をジタバタさせて抵抗を試みたが、無駄だった。

 多勢に無勢。

 力尽くで、床に叩きつけられた。


「いたっ!」


 身体に痛みを覚え、悲鳴をあげる。

 内心では、(しまった!)と舌打ちした。


 たしかに、いつもと様子が違っていた。

 いつもなら、私の帰宅を二名の侍女が待ち構えていて、服を着替えさせてくれたり、軽食と飲み物を持ってきてくれる。

 だが、今日は自室前に誰もいなかった。


 もっと警戒すべきだった。

 でも、まさか、自宅屋敷、それも自室内で暴漢に襲われるとは想定できるはずもない。


(いったい、なにが起こったの? ここは屋敷内ですのよ!?)


 私は男どものなすがままに、押し倒されてしまった。


◇◇◇


「お母様なんですの? こんな夜更けに」


 二階の自室で、半分、寝かかっていたのを、伯爵家令嬢のミアは母親に起こされた。

 天蓋付きのベッドで半身を起こした娘に、伯爵夫人ドロネスは誘いかけた。


「面白いものを見せてあげるわ」


 ドロネスはニタリと笑う。


「あなたも言っていたでしょう?

 あの家庭教師の、取り澄ました顔がぐちゃぐちゃに崩れるのを見てみたいと」


 自分の息子アレックス伯爵の許に嫁いだ結果、タリアは正式に伯爵夫人となっているのに、ドロネスは相変わらずタリアを「家庭教師」と呼び続けていた。

 娘のミアは跳ね起きた。


「なに、なに? なにがあるの?」


 ミアは習い事が大嫌いだった。

 だから、自分を教育しようとするタリアが嫌いだった。

 今では家庭教師ではなく、お義姉様=伯爵夫人となって、自分にあまり構わなくなった。

 それでも、タリアが伯爵夫人となってからは、伯爵家全体が質素倹約をいられることとなり、贅沢好きなミアは正直、ウンザリしていた。


(あの、いつも澄まし顔のタリアが、顔をぐちゃぐちゃにする?

 そんなこと、あるのかしら?)


 ミアは好奇心で目を輝かせる。


「静かにして、ついてきなさい」


 母娘おやこで、真っ暗な廊下を歩き、階段を降りる。


「侍女や執事がおりませんよ?」


 娘が周囲を見回すが、母親は背筋を伸ばしたまま平然と歩く。


「みなに暇をあげたのです」


 階段を降りると、騒がしい音がした。

 廊下の奥には、あかりがついていた。


 やがて、キャアアアという女性の叫び声が聞こえてくる。

 そして、ガタゴトとした激しい物音ーー。


「何があったのかしら?

 執事も侍女もいなくて、大丈夫?

 まさか、盗賊……」


 ミラはひたすらに自分の身を案じて、生唾を呑み込む。

 母のドロネスはバサッと扇を広げる。


「おほほほ。心配は要らないわ。私が雇った者どもですよ」


「どちらへ向かわれてるのです?」


「決まってるでしょう。あの家庭教師の部屋です」


 行き先の部屋では、ドアが開いていた。

 明かりは、この部屋から漏れていた。


 ドアの陰からミアが覗くと、ちょうどお義姉様タリアが手足を固定され、男にのしかかられているところだった。


「まぁ!」


 口に手を当てて、ミアは顔を真っ赤にする。

 ドロネスは冷たい視線を暴行現場に向けたままで語った。


「あなたには、まだちょっと早かったかしら。

 でも、見なさい。あれが大人の男女の営みです。

 あらあら。

 さすが、裏街に巣食う下郎どもですね。

 ケダモノのように激しいわ。

 ほほほほ。

 容赦なく女の頬を殴って、髪の毛を引っ張ってーーまるで猫の交尾ですよ」


 ドロネスとミアの母娘は、二人揃って目を爛々と輝かせる。


 やがて静まり返った。

 暴漢どもが楽しみ終えたようであった。

 ここで、ようやくドロネスは部屋の中へ足を踏み出す。


「トドメを刺すとしましょうか。

 あの家庭教師を我が家から追い出し、本来の伯爵家に戻るのですよ」


 喜色満面の表情で娘が駆け慕いつつ、母親に問いかける。


「ホント!? だったら、毎週ティーパーティーをやっても?」


「もちろん、いいわよ」


「舞踏会を開いても?」


「すぐに開けるようになりますよ。アレがいなくなれば」


「わあ、素敵! ワタシ、タリアお義姉様のこと、苦手だったのよね」


 暴漢の一人が、雇い主のドロネスの気配に気づき、振り向いて頭を下げる。

 ドロネスはズイッと前に出る。

 彼女の足下では、タリアが衣服を裂かれ、全裸で横たわっていた。

 乳房もあらわになり、下半身まで覆い隠すものがなにもない状態であった。

 タリアの両眼は腫れあがり、唇は切れて血が滲んでいた。


 ドロネスの心中に、笑いが込み上げる。

 ふと隣を見れば、ミアも興味深そうにタリアのあられもない姿を見据えている。

 さすがに淑女としてはしたないと思ってか、口許のほころびを扇子で隠していたが。


 ドロネスは意気揚々と言い放った。


「あらあら。やはり、こんな下賤げせんな者どもに蹂躙じゅうりんされてよろこぶような女でしたか。

 アナタなんかにこれ以上、伯爵夫人を名乗ってもらいたくないわぁ」


 虚脱したタリアの顔を見るのが心地良い。

 しかも、これから我が家から追い出せるとなれば、なおのことだ。

 ドロネスは胸を張り、勝ち誇った。


「息子がこの嫁をめとってから、わが伯爵家では悪いことばかり起きてるわ。

 でも、そうねえ……とにかくお金が必要みたいだから、この下衆な女の身体で存分に稼がせてちょうだい。

 もちろん、上がりは私たち、真の伯爵家の者がすべていただくけど。

 おほほほほ」


 ドロネスの命令に従い、五、六人の男どもが、タリアの身体を担ぎ上げる。

 タリアは呆然自失の状態で、黙ったままであった。

 そのまま館の裏口へと運び出されていった。

 裏口には馬車を停め、待たせてある。

 御者には、向かうべき場所もすでに知らせてあった。

 悪巧みにおいては、誰にも引けを取らないという自負が、ドロネスにはあった。


「おほほほ!」


 ドロネスは扇子を広げて哄笑した。


 かくして、ドロネスの暗い企みはうまくいき、伯爵夫人タリアは伯爵家から追い出されてしまったのであった。


◆3


 暴漢どもが操る馬車が到着した場所は、グリアーノ領首都の裏街道にあった。

 深夜なのに、きらびやかにあかりがともされた巨大な館ーー領内最高級の娼館であった。


 娼館の裏口に馬車が進み、私、タリアは、そこで放り出された。

 その隙に逃げ出そうとしたが、暴漢どもによって羽交締はがいじめにされ、娼館から出て来た老婆によって足のけんを切られてしまった。


「痛っ!」


 それ以降、立とうとしても、ガクンと膝が折れる。

 足首によって足が支えられなくなったのだ。

 私は泣き叫んだ。


「どうして!? なんで、こんなことに!」


 血塗れた小刀を手にした老婆は、イッヒヒヒと気色の悪い声で笑う。


「こいつぁ、上玉だねぇ。

 目ものどつぶしとくように頼まれたが、やめとこう。

 この大きな瞳が涙に濡れ、甘いあえぎ声がもれるとなりゃ、殿方が放っておかないさね。

 ーーああ、おとなしくさせるために、娼館ウチでの作法を身体に叩き込んでやりな」


 娼館から新たに五、六人の屈強な男どもが現われ、私は担ぎ上げられた。

 そして館の中に入った途端、再び裸にかれた。

 両足の腱を切られ、立つこともできない。

 私は泣く気力さえ失ってしまった。


 こうして義母の陰謀によって、夫の不在中に、私は娼館に売られてしまったのである。


 だが、不幸中の幸いだったのは、娼館で酷い扱いを受けたのは初日だけで、二日目からは、金で買われた娼婦にしては、丁重ていちょうな扱いを受けたことだった。

 私の足の腱を切った老婆が、娼館主に進言したのだ。


「この娘は賢い。

 娼館ウチに来たからにゃ、ジタバタしたって無駄ってこたぁ、わきまえてる。

 しかも上玉なうえに、振る舞いの品が良い。

 こいつぁ、拾いモンだよ。

 こういった行儀を身につけるにゃあ、年季がいるんだ。

 せっかくだから、ほかの娼婦たちの教師役にでもなってもらおうかね。

 ウチの女どもの品が良くなりゃあ、より金払いの良い殿方をお客に引けるってもんさ」


 遣手婆やりてばばの機転によって、私は目や喉を潰されることもなく、普段は若い娼婦に行儀作法をしつける教師役に収まった。

 もちろん、娼館の常連客には、高級娼婦としてのお披露目ひろめとなったが、一ヶ月もの間、客が私を買うことはなかった。


 さすがは高級娼館。客筋が貴族や大商会の重鎮ばかりだった。

 おかげで、常連客のうち、何人かが、私の見知った顔だったのだ。

 私をあざけるどころか、彼らはコソコソと近づいて来ては耳打ちする。


「あのう……私が娼館ココの常連ということは、妻には内緒にしていただきたく……」


「それにしても、家令のダミアン様はどうなされたのでしょう?

 このままでは食糧庫が尽きてしまうと、もっぱら噂されておりますが……」


「領主様もなにを考えておいでなのでしょうなぁ。

 私などでは怖くて、誰にも尋ねることもできませんが……」


 私はニッコリと微笑むだけで、やり過ごした。

 私から助けを求められても迷惑だろうし、お客の中に義母に通じた者がまぎれ込んでいる可能性も否定できない。


 やがて二ヶ月目ともなると、私の面識のない年配の常連客が私を指名するようになった。

 その頃だった。

 ある噂を耳にしたのは。


 街中での噂いわくーー


『伯爵夫人タリア・グリアーノは、家令ダミアンと不義密通を働いた』


『領主アレックス様が領内視察からご帰還の際に露見したため、伯爵家から追放された』


 ーーどうやら、婚家は、私が不義密通を働いたと吹聴しているらしい。

 しかも、長年仕えてきた家令と、私が関係を持っていたとでっち上げて。

 だから領主様は、泣く泣く離縁したのだ、と喧伝された。

 つまり、私は不義密通の濡れ衣を着せられたのだ。


(考えたわね……)


 私は唇をむ。


 私を家庭教師としてグリアーノ家に派遣したのは修道会だ。

 だから、その後ろ盾が口を出せない口実をでっち上げた。


「不義密通を働いたゆえに、離縁、追放した」


 と言われれば、教会も修道会も恥じ入るばかりで、文句を言えない。

 今もって私の行方がわからないのも、家令ダミアンとの「駈け落ち」の結果と思わせることで、人々に納得されてしまう。


 私をめた義母ドロネスの、庶民からの叩き上げならではのしたたかさを感じる。


 しかも、彼女が私に与える屈辱はこれだけではなかった。

 街中に広まった新たなニュースを聞いたとき、私は耳を疑った。

 思わず声を発して、遣手婆に問いただしてしまった。


「ほ、ほんとうなんですか!?

 領主様が、新たにご結婚なされるなんて」


 遣手婆は憐れみを含んだ眼差しを向けた。


「街中じゃあ、その噂で持ちきりさ。

 お相手は大商会の娘さんだよ。

 領主様のお母様、ドロネス様がご贔屓ひいきにしてる商会でね。

 前回のご結婚と違って、今度は金に糸目もつけず、盛大に挙式を行なうってさ。

 はぁ、この不景気に。さすがは領主様。あるところにはあるもんだねぇ」


 それから一ヶ月後ーー。


 実際に、私の夫、アレックス様が、お金持ちの若い嫁をめとることになった。

 財政が逼迫ひっぱくしているというのに、盛大な結婚式が挙行される運びとなった。

 古式にのっとって、結婚祝いの祝宴が一週間も続く、ロングバージョンだ。


 貴族や大商人たちが酒宴に招かれ、どんちゃん騒ぎが続くのだろう。

 牛や豚の丸焼き、海産物や果物が盛大に盛り付けられたテーブル、そして、その前で、義母と義妹がはしゃいでドレスを着込み、派手な宝飾品を身にまとうさまが想像されて、私は吐き気がした。


 彼女たちのよそおいの中には、私を娼館に売り飛ばしたお金で購入したのもあるだろう。


(許せない……!)


 首都の裏街道にまで歓声が響き渡り、街中が祝福ムードに溢れている最中、私はひとり悔し涙を流し、唇を咬んでいた。


 そんな折、私に甘い葡萄を差し入れて、微笑みを浮かべる老人がいた。


「駄目ですよ。

 世間が浮かれ騒ごうとも、お気になさらず。

 いつも通り、貴女あなたにはりんとしていただかないと」


 自らの名を伏せるこの老人は、娼館の常連客で、お忍びで来ている。


「去年、妻が病死したばかりでね。

 そのうえ、つい最近も悲しい出来事があって……。

 寂しいから、貴女に会いに来るんですよ」


 老人は柔らかな笑顔を浮かべ、私なんかを頻繁ひんぱんに指名する。

 彼は私の容姿をやたらと持ち上げ、


「なんと美しい」


「可愛らしい」


「貴女のような娘が欲しいものです。

 いや、孫娘というべきですかな。はっははは」


 などと饒舌じょうぜつに褒めそやす。

 それなのに、なにもしない。

 私の肌には、指一本、触れようとしない。


「どうして? 手を握ってくださるぐらい、よろしいんですよ」


 老人が時折見せる、寂しげな表情にかれて、そう口にしたときもあった。

 しかし、いつも「いえいえ、私などは」と手を横に振るばかり。


 ところが、今夜は様子が違った。

 珍しく老人の方から私の手をギュッと握って、身を寄せてきた。


「貴女こそ、どうして、こんな娼婦にまで身をやつしておられる?

 噂通り、不義密通……」


 私はびっくりして両目を見開いた。

 やはり、この老人は私が伯爵夫人だと知っていたのだ。

 それでも連日通い詰めてくれたのは、私が他の客の相手をさせられないよう気をつかってくれてのことなのだ。

 そんな優しい老人にまで、私についての悪い噂が耳に入っていることに、腹が立った。

 私は胸を張って宣言した。


「誓って、私は不義密通など、働いておりません!

 証拠はありませんが、信じていただきたいですわ」


 老人は真面目な顔つきで居住まいを正した。

 私の手を強く握り締めたまま、低い声をあげた。


「なにがあったか、教えていただけませぬか。タリア伯爵夫人」


◆4


 領主様が新たな嫁を迎える結婚式が終わって、三日目ーー。


 延々と続行する祝宴の最中、グリアーノ伯爵家の領主館に、珍客が訪れた。

 すでに表舞台からは引退した、かつての大商人エーデルが姿を現わしたのだ。


「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。

 招待状を差し上げておりませんのに、わざわざご足労いただいて」


 先代の伯爵夫人であるドロネスは、この老人とかつて顔を合わせたことがある。

 亡夫の知人であった。

 この老人が現役の頃の盛況ぶりを彼女は記憶していた。

 老人は柔らかな物腰でお辞儀をする。


「領主様のご結婚、おめでとうございます。これはお近づきの印に」


 装飾豊かな木箱を、新婦のパーラに手渡す。

 中には宝石が散りばめられたネックレスが入っていた。


「まあ! こんな素敵なの、見たことございませんわ!」


 夫であるアレックスを押し除けるようにして、ネックレスを掲げる。

 そして、義妹になるミアに見せつけた。

 ミアも羨ましそうに嘆息する。


「ほんと、素敵な贈り物!

 そして、この盛大な結婚式!

 私のときも、こうして盛大に祝ってもらいたいわ」


 伝説の老商人は慇懃いんぎんにお辞儀をしながらも、ドロネスに向けてささやきかけた。


「しかし、これほどの祝い事、資金は豊かにあるに越したことはございませんでしょう。

 どうでしょう、この老体に手助けさせていただけないでしょうか」


 ドロネスがうなずくより先に、新婦と共にいた嫁実家が大はしゃぎになった。


「これは素晴らしい。どんな話であろうと、うかがったほうがよろしいですぞ。

 いや、さすがは領主様。王国全体に名を馳せた大商人ともお付き合いがあるとは!」


 老商人エーデルは、新しい嫁の実家よりも格上の大商人らしく、しきりにドロネスとアレックスに面会する方が良いと勧めた。

 ドロネスらは、これに応じることにした。


 領主館の庭園では連日、宴会が催されていたが、その裏では、数多くの商人たちが暗躍していた。

 そうした商人の中でも特別に力がある大商人が、館の奥で領主とその母親に向けて、金策の提案をした。


「これほど盛大な祝い事ーー多くの商人に借りを作ったと聞き及びまする。

 でも、それは領主様のお立場を弱くするばかり。

 ここは私めが、全財産を投げ打って莫大なお金を貸し付けましょう。

 その金で大勢の商人どもに対する『貸し』を清算いたしましょう。

 そうすれば、領主様は自由に動けるようになりまする」


 アレックスは眉間に皺を寄せて熟考する。

 が、母親のドロネスが横入りして、エーデルに尋ねる。


「いかほどのお金を……」


 老人は笑みを浮かべつつ、ドロネスに耳打ちする。


「まあ! それでしたら、是非ともお願いいたしますわ。

 アレックス、結婚式の費用は充分、回収できるわよ。

 そればかりか、中止になっていた舞踏会の復活もーー」


 ドロネスはお金に飛びついた。

 が、息子の方は、さすがに領主として不快な顔をする。


「母上は黙っていてください。

 どれほど借り受けようと、借金は借金。

 いずれは返さなければならないんですよ」

 

 老エーデルは手を組み、テーブルに身を乗り出す。


「いえいえ。担保さえあれば、ご返済は急ぎません。

 相場の五分の一ほどの利子分だけで」


 ドロネスは小首をかしげた。


「担保ーーですか?」


「お金を返せなければ、代わりにこれを差し出します、というモノです」


 老人の解説を聞き、領主アレックスは慌てて手を振った。


「先代が倒れて以来、領地経営が厳しいのです。ウチにはそんなもの……」


 老人は、さも驚いたような顔をする。


「あるではありませんか。この立派なおやかたが」


 天井から周囲へと視線を巡らす老人を見て、アレックスは思わず席から立ち上がった。


「まさか、この家屋敷を差し出せと!?」


 老商人はゆっくりと首を横に振った。


「いえいえ。返済期日は一年以上先ですよ。

 幾ら借りましょうとも、グリアーノ伯爵家ともまれば、必ず返すことができましょう。

 その意味では、このお館を担保にするという書式は、商人ならではの形式に過ぎません」


 テーブルに証文を広げ、ペン先で文面を差し示しながら説明する。

 それから老人はペンをアレックスに向けて渡す。

 が、領主たるアレックスは、勧められるままにペンを手にしたものの、サインするのには躊躇ちゅうちょする。


 そんな息子に、母親ドロネスは顔を寄せて訴えた。


「サインしなさい。

 心配要らないわ、アレックス。

 相手はたかが平民の商人。

 幾ら借金しようとも、踏み倒せば良いのよ」


「しかし……」


 アレックスはドギマギする。

 いくらささやき声とはいえ、テーブルを挟んだ向こう側に「平民の商人」が笑顔を浮かべて座っているのだ。

 聞こえていても、おかしくない。

 が、ドロネスは平然としたものだった。


「お父様はいつも〈戦場〉で剛腕を振るいました。

 そして、ここがアナタの〈戦場〉ですよ。

 剛腕を振るわないで、どうするのですか。

 グリアーノ伯爵家の名折れですよ」


 母親に失望されたくないあまりに、アレックスは渋々サインする。

 老人はサインされた書面を確認してから、さらに笑みを深くして、新たな提案をしてきた。新たな証文をテーブルに広げながらーー。


「『爵位も相続できる』と記していただければ、さらに倍額をお貸し致しまする。

 なに、心配には及びません。

 これもまた、高額を貸し付けるための口実みたいなもの。

 商人ならではの形式です」


◇◇◇


 一週間にも及ぶ、結婚の儀に関連して執り行われる祝宴が、ついに残すこと、あと一日になろうとしていた。


 領主館の庭園を開放して、平民までもが飲み食いできるようになっていた。

 ただでさえ不景気だったから、大勢の人々が押し寄せ、身なりの汚い子供までもが骨付き肉をかぶりつくありさまになっていた。


 そんななか、テーブルに山積みされた果物やケーキなどの甘味を口にしながら、新婦のパーラと義妹のミラが一気投合していた。

 彼女らが嬉々として語り合っていたのは、どこの店のケーキが美味しいか、どこの工房で削られた宝石が美しいか、最近、王都で流行っているドレスはどんなデザインか、といった貴族子女ならではの贅沢談義であった。

 彼女たちが熱っぽく語るなか、同年代の女性たちが輪になって取り巻いていく。


「そうそう。こんなふうに、若い娘たちが盛り上がってこそ、祝宴と呼べるのよ」


 自分の娘と嫁を中心に集まった若い娘たちの様子を見ながら、ドロネスは満足げにうなずいた。


「やっぱり私の見立てに狂いはなかったわ。

 あのはミラと気が合うと思ったのよね。

 タリアのような四角四面とは大違い」


 上機嫌な母親の隣で、息子のアレックスは浮かない顔をしていた。

 つい最近まで顔も見たことがなかった嫁と、妹がはしゃぐさまを遠目で見ながらつぶやいた。

 そういえば、元妻があのように空遊カラあそびする姿を見たことがなかったな、と思いつつ。


「今でも信じられない。

 あの真面目なタリアが、ダミアンと不義密通を働いたなどとーー」


 彼にしてみれば、領内を巡回後に家に戻ってみれば、最愛の妻と、腹心とも言える家臣に裏切られ、出奔しゅっぽんされてしまったのである。

 狐につままれたようなもので、一向に実感が湧かない。

 母親が扇子を大きく広げ、ここぞとばかりに得意げに言った。


「おほほほ。そりゃそうよ。

 でっちあげですもの」


「!?」


 驚愕の表情で絶句する息子の顔を楽しそうに眺めて、母親は言った。


「ミラを見てみなさいよ。ようやく窮屈から解放されたのよ」


 ドロネスとミラは、修道女上がりのタリアが嫁に来てからというもの、普段通りの贅沢ができなくなって、腹が立っていたのだ。


 毎週開催されていたティーパーティーが月に一度に変更された。

 ケーキも一種類のみを焼いて、気に入らなくとも取り替えることも、捨てることもできない。

 舞踏会も中止となり、身を飾るドレスや宝飾品にまで、あれこれと口を出されるようになった。

 厨房の料理人コックも減らされた。

 極め付けは、湖畔にある巨大別荘が売却されたことであった。


「あの別荘は、先代領主様ご愛用の居宅なのですよ!」


 とドロネスがいくら訴えても、タリアと家令は協力して、売り払ってしまった。


(飢餓対策のため経費削減? 殖産興業? 農業改革?

 ふざけるんじゃないわよ。

 そんなことのために、お茶会や舞踏会を開けなくされる?

 聞いたことないわ、そんなの!)


 平民どもの生活が理由で、貴族の娯楽が制限されるのが、ドロネスには納得できなかったのである。


「タリアはダメだったわ。伯爵夫人として相応ふさわしくなかった。

 顔が良いだけで、真面目すぎて。孤児出身だから卑しかったのよ」


 息子はふくれっつらになった。


「お母さんが、『あのタリアは嫁に良い』って、ボクに推薦してきたんじゃないか!」


 母は鼻で笑った。


「バカね。実際、有能だったでしょ?

 タリアとダミアンのおかげで、傾いた財政が、いくらか持ち直したんだから。

 でもね、能力は上手く使い捨てるのが、上に立つ者の役割なの。

 もとより私はね、タリアには出来るだけ政務をみてもらったら、あとは娼館にでも売りつけるつもりだったのよ。悔しいけど、美貌だったからね。

 夜のオンナってのはね、《元領主夫人》とかいった身分が高そうな来歴が付くと、さらに高値で売れるんだよ。

 もっとも、タリアがすぐさま息子でも産んでしまったら、そのまま伯爵夫人の地位に縛り付けておくつもりだったけど、アンタが奥手だったからねえ……」


「そんなことまで……」


 アレックスは激情に駆られて拳を震わせる。

 が、拳を振り上げようにも、相手は女性ーーしかも、実の母親なのだ。

 身を震わせるだけで何もできない息子の様子を見て、母親は嘲笑あざわらった。


「だったら、どうするの?

 グリアーノ伯爵家の御当主様は。

 私をーー実母を訴えるの?

 そんなこと、できないわよね、あなたには。

 名誉あるグリアーノの家名に泥を塗るだなんて。

 おほほほ」


 実の息子を追い込むドロネスであったが、これでも手加減していた。

 もし、下賤な男どもを雇って、タリアを屋敷内で凌辱させたとアレックスが知ったら、さすがに殴打のひとつくらいは喰らってしまうに違いない。

 だから、その事実だけは、娘のミラと示し合わせて、伏せてあったのだった。


◆5


 祝宴七日目、結婚の儀に付随する宴会の最終日ーー。


 結婚式を執り行なった司祭様が、再びグリアーノ伯爵家の館にやって来た。


 本来、招待されていない人物の突然の来訪である。

 ドロネスとミラは、二人して露骨にあざける様子を見せた。


「またお布施ふせをタカリにきたのかしら」


「ほんと、浅ましいんだから」


 そんな二人を冷たい視線で一瞥いちべつしたのち、司祭様は、当主のアレックスと新婦パーラに向かっておごそかに宣言した。


「グリアーノ伯爵家の当主アレックス、及びバンド商会の娘パーラ。

 その方らの婚姻の儀、無かったことににさせていただく」


 グリアーノ伯爵家の面々はみな、ポカンと口を開けた状態で固まってしまった。

 新婦とその実家も同様である。

 その他、最終日の宴会に招かれてはしゃいでいたお客たちは一気に酔いをまして、絶句する。

 やがて、何事が起こったのかわからず、人々がざわざわと、ざわめき始めた。


 周囲の様子に構うことなく、十二人もの侍従を引き連れた司祭様は冷然と言い放った。


「国教ライナス教会として宣言する。

 グリアーノ伯爵。直ちにこの館から引き払ってもらおう。

 次いで、すぐさま爵位を国王陛下に返上し、教会が指名する者に譲渡するように。

 さもなくば、其方らの一族を教会から破門する」


 青褪あおざめたアレックスは、喉を震わせる。


「な、なぜ急に、そのような……」


 司祭があごをしゃくると、侍従が前に進み出て、二枚の証文を広げて見せる。

 それはつい数日前、アレックスが老商人の勧めに応じてサインした証文であった。

 この領主館の家屋敷、そしてグリアーノ伯爵家の後継を担保にして、大金を借り受けた、という証文であった。


「なぜ、司祭様が、これらの証文を!?」


 目を丸くするアレックスに対し、司祭様は眉ひとつ動かさず答えた。


「エーデル老人に大金を貸し付けたのが教会だからだ」


 昨日、教会から多額の借金をした(ことになっている)老商人は、「期日までに返せなくなったので」とグリアーノ伯爵家で作成した貸し付け証文と担保証文を教会に譲渡したのだ。


 だから、教会は第三者の立場で、貸付金が焦げ付かないために、グリアーノ伯爵家から担保物件を押さえに来たのだった。


「そ、そんな……期日は一年後だと……」


「何を言う。この証文の記述をよく見よ。

『この証文が第三者の手に渡った際は、返済期日の取り決めは無効となり、即、返済を求めるものとす』とあるではないか」


 女どもが金切り声をあげた。


「そんな……!」


「酷い!」


 領主アレックスも、眼前で広げられた証文を睨みつけながら、身を震わせた。


「騙された。あのエーデルとかいう老人が詐欺を働いたのです。

 司祭様、どうかご慈悲をもって、せめて返済の期日を延ばしてーー」


 必死の訴えも、司祭はにべもなく否定した。


「ならぬ!

 教会としては、即日返済を求めるよう、すでに裁決されておる。

 そもそも、この証文には貴殿のサインが入っておるではないか。

 だったら証文の文言はすべて有効だ。

 加えて、国王陛下にこの証文をお見せしたら、いたくご立腹になられた。

『余が授ける爵位を借金のカタにするとは何事か。この恥知らずめ!』とな。

 すでに陛下から、グリアーノ伯爵家の爵位と家屋敷を抵当に入れる許可は頂いておる。

 さっさと出ていけ!」


 司祭の合図に従って、大勢の聖騎士団が押し寄せてきた。

 反対に、領主館にいた来客どもは、蜘蛛の子を散らすように外へと逃げ出した。

 新婦パーラとその実家もみな、血相を変えて外へ出ていく。

 その際、新婦の父バンドは、


「伯爵様、それと、ドロネス様!

 司祭様も仰せの通り、娘との婚儀は無効とさせていただきますぞ!」


 と捨て台詞を吐いて、館から出て行った。


 そこへ、入れ違うようにして、ひとりの老人が領主館にやって来た。

 老商人エーデルである。

 あまりの出来事で虚脱するグリアーノ伯爵家の面々の前に、老人自ら姿を現わしたのだ。


 無言で歯軋りするアレックスと異なり、女性二人は金切り声をあげた。


「司祭様! この老人です。詐欺師なんです!」


 と娘のミラが叫ぶと、母親のドロネスは鼻息荒くまくし立てた。


「この詐欺師!

 我がグリアーノ伯爵家をたばかるとは、王国に叛逆するも同然……!」


 だが、女性二人のさえずりを、老エーデルは、


「なにを言うか。貴様らこそが、グリアーノ家を潰したのではないか!」


 と一喝した。


「先代が草葉の陰で泣いておるわ。

 特に、ドロネス! 恥を知れ。

 自らの嫁に手酷い仕打ちをしおって。

 それに、わしの大切なダミアンをよくも殺しおったな!」


 老商人エーデルは、じつは家令ダミアンの義兄だったのだ。

 エーデルが愛した晩年の妻の、歳が離れた弟であった。


「先代の伯爵を信用して、我が子同然のあの子を預けた。

 それなのに、このような汚名を。許せぬ!」


 目を白黒させたのは、断罪された当人であるアレックス伯爵であった。


「そ、それは本当ですか?

 本当に、母がダミアンを殺したというのですか?

 何かの間違いでは……」


 息子が当惑気味の声を上げるのをさえぎって、ドロネスが甲高い声を張り上げた。


「不義密通を働いたのは、元嫁のタリアです。

 あのアバズレを罰してーー」


 さすがにダミアンを殺したと息子に悟られてはマズいと思い、ドロネスは懸命に話をらそうとする。

 が、それを許さない者がいた。


「いまだに、しらばっくれるか!」


 今度は司祭様が、顔を真っ赤にして激怒していた。


「タリアを儂は幼少の頃から良く知っておる。

 儂がこの手で育て上げたのだからな!

 貴様ではあるまいに、不義密通など働く女ではないわ!

 それに言うておくが、タリアは戦災孤児とはいえ、もともとは公爵家のお血筋。

 三大公爵家ばかりか、王家とも親類なのだ。身分をわきまえよ!」


 伯爵家の者たちの血の気が退いた。

 あの嫁ーータリアを追放したこと自体が、虎の尾を踏むことだったのだ。

 司祭様を前にひざまずき、アレックスは懇願した。


「経緯はどうあれ、母も妹も、そして私も騙されていたのです。

 どうか司祭様にはお怒りを鎮めて、罪の免除を願いたくーー」


 その時であった。

 地面に目を向けて語るアレックスの耳に、懐かしい声が聞こえたのは。


「まだ、かばうのですね」


 アレックスは顔を上げ、司祭様のかたわらに現われた女性の姿に目を留めた。

 彼女は足が悪いらしく、何人もの侍従に支えられてどうにか立っている状態だった。


「タリア!」


 ようやく会えた!

 そう思って喜びの声をあげる元夫に対して、元妻は冷たく用件を述べた。


「グリアーノ伯爵様には、知っていただきたいことがございます」


 今度は館の外から、何十人もの屈強な聖騎士たちが上がり込んで来た。

 彼らは、手錠を嵌められた男ども五、六人を引き連れて登場してきた。

 聖騎士たちに蹴られて、手錠の男どもはアレックスの前でひざまずかされる。

 その後ろでタリアは告発した。


「私が領主館ーーそれも自室内で、この男どもに凌辱されたのをご存知ですか?

 この者どもが吐きましたよ。

 お義母様が私に乱暴せよとお命じになったと。

 そして、その場に義妹も同席していたと」


 アレックスは左右に目を遣り、喉を震わせる。


「母上!? ミラ! 真実まことですか!」


 ドロネスとミラは、示し合わせたように言い募る。


「嘘よ、何かの間違いよ!」


「そうよ、そうよ!」


 グリアーノ伯爵家の面々が演じる茶番劇を見下ろしながら、タリアは話を続けた。


「さらに、悲しい知らせがあります。

 家令のダミアンが死体になって、川底で発見されました。

 もちろん殺人です」


 調査を担当した聖騎士によると、王都でも有名な闇ギルドが、ダミアンの暗殺を請け負った、とのことだった。

 依頼人はもちろんドロネスであった。

 事件の裏が発覚したのは、闇ギルドの一員でありながら、ダミアンの世話になっていた者がいて、その男が、タリアを押し込めた娼館に密告におもむいたからであった。

 恩義あるダミアンと不義密通の濡れ衣を着せられた伯爵夫人に、その男は真実を告げたかったとのことだった。


 タリアは目の前で膝を折る暴漢どもの背中を見ながら、薄ら笑いを浮かべた。


「私をもてあそんだ暴漢さん。

 闇ギルドでは、あなたたちも殺す手筈だったそうよ。

 ある女性から依頼を受けてね」


 彼女の発言を機に、せきを切ったように暴漢どもは叫び出した。


「そうなんだ! あれから俺たち、何度も襲われたんだ。実際、三人ほど死んでいる」


「だから俺たちは教会に懺悔し、自ら捕まりに行ったんだ」


 彼らはドロネスを睨みつけ、吐き捨てる。


「アイツこそ、嘘つきの女狐だ!」


「俺たちだって、こんなことになるとわかってたら、あんなことはーー」


「まさか、相手がほんとうに領主様の奥方様だったなんて!」


 彼ら、暴漢どもが義母ドロネスから聞かされていたのは、


「領主様がいないことを良いことに、町娘が因縁をつけて館にまで押しかけてきて困っている。この娘を襲って、娼館に売り払って欲しい」


 という〈物語〉だった。


 だが、彼らが狼藉を働いた相手は「町娘」ではなく、本物の「伯爵夫人」であった。

 彼らがいくら後悔しようとも、貴族家の奥方を襲い、娼館に売り飛ばすまでしたのだから、重罪はまぬがれない。


 司祭様は無表情なまま、宣告した。


「伯爵夫人を凌辱した者どもはむろん、死刑。

 そして、これら実行犯に指示•教唆した者にも相応の罰が下ろう」


 ここでエーデル老人が、はっははは、と快活に笑った。


「家屋敷を失ったうえに、爵位を自分の子に継がせられないーー。

 事実上、お家取り潰しじゃな。グリアーノ伯爵家も。

 それにしても、鮮やかな手際であったな、タリア様」


 ドロネスをはじめとしたグリアーノ伯爵家の面々は、みな驚きの表情になった。

 彼女らの反応を愉快そうに眺めて、老人は得意げに鼻を鳴らした。


「家屋敷や爵位を担保に入れて強奪するーーこれらの絵を描いたのはみな、タリア様じゃ。

 司祭様と儂は彼女の策に乗ったに過ぎぬ。

 これほど優秀な女性を、貴様らはおとしめたのだ。

 それだけで、上に立つ者として失格じゃ。恥を知るが良い。

 国王陛下には、事細かに此度こたび顛末てんまつを伝えさせてもらおう」


 老エーデルは、国王にも顔が利くほどの大商人であった。


「わああああ!」


 突然、這いつくばって床に頭を打ちつけ、ドロネスが泣き叫んだ。

 そして、涙と鼻水に濡れる顔をあげ、タリアに向けて懇願した。


「許してちょうだい、タリアーーいえ、タリア様!

 短かったとはいえ、家族だったじゃないの!」


 ヌケヌケとした言い草に、さすがに老エーデルも司祭様、聖騎士たちも鼻白んだ。

 タリアは動じることなく、事件当事者として、冷静に総括した。


「息子の嫁を暴漢に襲わせ、娼館に売り飛ばすような者が、家族なはずはありません。

 その娘であるミラも同罪です。

 教え子でありながら、教師であり、義姉であった私をおとしめるくわだてに加担するなど!」


 ミラも突然、泣き出した。

 這いつくばることはなかったが、さも世界で一番不幸なのは私、と言わんばかりの勢いでまくし立てた。


「だって、だって、私だってケーキを好きに選びたかったし、舞踏会も開きたかった!

 それだけだったの。ここまでになるなんて思いもしなかった。わあああん!」


 母と妹の醜態を目にして、アレックスは「タリア……」とだけつぶやき、唇を咬む。

 彼なりに後悔はしているようだった。

 が、そんな元旦那から顔をそむけつつ、タリアは断言した。


「妻である私よりも、このような愚物ーー悪党どもをかばい続けた責任は取ってもらいます。

 爵位ある貴族家における醜態ですから、あとは国王陛下に処分を一任いたします」


 アレックスはがっくりと肩を落とすしかなかった。


◆6


 グリアーノ伯爵家の醜態を耳にした国王陛下は激怒した。

 王族の親戚筋の中でも、特に不遇であったタリアのことを、国王も密かに心配していたが、グリアーノ伯爵家に嫁いだと知って安堵していた。

 その矢先の事件であったから、怒りはひとしおだった。


 国王が下した裁可は、苛烈を極めた。

 アレックスは伯爵位を国王に返上することとなり、グリアーノ領は三分割され、経済的にゆとりのある公爵家と子爵家、さらにはタリアが所属していた修道会がそれぞれに統治することになった。

 グリアーノ伯爵家はお取り潰しとなったのである。

 それだけではない。

 講和条約締結のあかしとして、戦争相手国に、グリアーノ伯爵家一族をもろとも引渡すことに決したのだ。


 相手国にしてみれば、先代の〈剛腕〉グリアーノ伯爵を戦場で討つことには成功していたが、それまでの被害が甚大で、数多くの将兵が犠牲となっていた。

 それゆえ、グリアーノ伯爵家そのものが恨みを買っていたので、講和の条件として差し出されると知って、戦場で殺された人々の遺族たちが快哉を叫んだのである。


 相手国の将軍は、遺族の意向に応じて、グリアーノ伯爵家に連なる者たちすべての身ぐるみをいだ。

 そして、何百回と鞭打ってから、奴隷商人に引き渡した。

 元領主アレックス、その母親ドロネス、妹ミラのすべてが、先代の仇である敵国の地で、奴隷身分になり果てたのだった。


 数年後ーー。


 元伯爵夫人ドロネスは、練った小麦粉を食べるだけで、その日暮らしをする洗濯女にまで落ちぶれた。

 妹ミラは遊郭に売られ、礼儀作法ができる元貴族の娘として高級娼婦となった。

 行動は極端に限られた生活となったが、贅沢に着飾り、美味しい食べ物を口にして、結構、満足げに暮らしているとのことだった。

 そして、タリアの元旦那アレックスは、炭鉱で働く労務奴隷と成り果てた。

 しかも、子供がいないうちに禍根を断つとして、去勢されたうえのことであった。

 名誉ある伯爵家の当主としては、考えられないほどの、凄まじい凋落ぶりであった。


 ここまでの顛末を、修道女に戻ったはタリアは知らなかった。

 だが、戦争相手国との講和条件に、彼らグリアーノ伯爵家の者どもの身柄を引き渡すよう国王陛下に進言したのは、彼女自身であった。

 結果、見事に復讐を果たしたのである。


 彼女は「もう結婚はコリゴリ」と述懐する。

 今では、足が不自由な身でありつつも、修道会の重鎮として、教会文書や国書の代筆、教皇や宰相閣下らに助言する有徳者として、元気に働いている。


 最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

 気に入っていただけましたなら、ブクマや、いいね!、☆☆☆☆☆の評価をお願いいたします。

 今後の創作活動の励みになります。


 なお、すでに幾つかのホラー短編作品、


『イケメン王子の許嫁(候補)が、ことごとく悪役令嬢と噂されるようになってしまう件』

https://ncode.syosetu.com/n1348ji/


『噂の《勇者を生み出した魔道具店》が潰れそうなんだってよ。そしたら勇者がやって来て……』

https://ncode.syosetu.com/n1407ji/


『美しい姉妹と〈三つ眼の聖女〉ーー妹に王子を取られ、私は簀巻きにされて穴に捨てられました。いくら、病気になったからって酷くありません? 聖なる力を思い知れ!』

https://ncode.syosetu.com/n2323jn/


 などを投稿しておりますので、楽しんでいただけたら幸いです。


 さらには、以下の作品を、一話完結形式で連載投稿しておりますので、こちらもどうぞよろしくお願いいたします!


【連載版】

★異世界を舞台にしたホラー短編作品集

『あなたへ贈る異世界への招待。ただし、片道切符。あなたは行きますか?』

https://ncode.syosetu.com/n2296jl/


★ 公園を舞台にしたホラー短編作品集

『あなたの知らない怖い公園』

https://ncode.syosetu.com/n5088jm/


★恋愛を題材にしたホラー短編作品集

『愛した人が怖かった』

https://ncode.syosetu.com/n2259jn/


●また、以下の連載作品が完結しましたので、ホラー作品ではありませんが、こちらもどうぞよろしくお願いいたします!


【連載版】

東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

https://ncode.syosetu.com/n1930io/



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