表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/57

52話

前回にいいねや評価ありがとうございます!

たくさんの人が読んでくださったおかげで注目度ランキング2位になりました…!

何故急にランキングに入れたのか不思議ですが、本当にありがとうございます!がんばります!!!




やがて光が収まると参列者の大半は静かに両手を組みマリアへ頭を垂れる。

聖女への信仰心だけではなく今目の前で起きた奇跡への畏敬がそうするべきだと思ったからだ。


大人達が自身にかしずく光景に動揺しそうになるマリアを落ち着かせたのは変わらず家族として立つアントニオとミランダ、そしてフェルディナンドの姿。


「…マリア・テオドラ。

 手を掲げ皆に改めてその身に得た属性をお見せなさい」

「はい」


そっとマリアは両手を掲げる。

六つそれぞれの指に嵌った指輪の魔石は今も強く輝いている。

感嘆の溜め息の中、己の指の隙間から洩れる六色の光を見つめていたマリアは違和感を覚えた。


身体の内側でぐるりと回るものがある。

出口を探すようにぐるぐると回るそれは勢いを増し、右手へと進んでいく。


「マリア・テオドラ?」

「…大神官様、なにか変です……っ」


これが一体なんなのか、わからないままマリアは引っ張られるように右手をより高くに掲げ、そして――…







『アンタは花の匂いがするよ』



『まだ咲いてないけど多分…白くてきれいな花』





いつかのエリヤの言葉がマリアの中にリフレインする。


マリアにとっての白い花は生家の白薔薇だった。エリヤから花の匂いと言われた時は生家の事すら見抜かれたのかと肝を冷やしたほどだ。

でも、そうではなかった。


体内を回っていたそれはようやく見つけた出口から溢れ出し、緑色の蔦となって人差し指に絡みつく。

何重にも絡まり()()()()()()巻き付いた蔦は小さな蕾を膨らませていき隙間からは白い花弁が覗いている。



開花の瞬間は瞬きの内に訪れた。


先端が綻び、純白の花弁が踊るように広がっていく。


儚く透き通るような…それでいてどれだけの強風が吹こうともけして散る事がないと思わせる確かな存在感を放ちながら。


この娘は六つ指などではない、七つ目の自分がいるぞと誇示するように魔石に負けない輝きと共に花は咲いた。


中心にあるべき柱頭には子房や胚珠はなく、花弁だけが幾重に重なるその花はどんな植物図鑑にも存在しない。

火も、水も、風も、土も、氷も。光さえなくとも生み出す事ができる、奇跡の花。

薔薇のような芳しい香りはない。しかし咲いた瞬間からその場にいた誰もが清浄を感じていた。

儀式の場として清められた聖堂に淀みはなかった筈だがそれでも花は空気を更に清く浄化したのだ。


(光だけじゃなく、これも私の力なんだ)


マリアは己の手で咲く花を見上げた。

白く、美しいその花は父神グラダファから授かった七つ目の力。


まだこの力が何を成せるのかはわからない。

けれどきっと、この力を使う時が来る。


魂がそう教えている。


必要となるからこそ与えられた、これから起こる事に立ち向かうための力なのだと。


(おとうさま…)


顔を拝する事が出来なかったが、そのぬくもりを伝えてくれた父神。

マリアには彼の娘としてこの世界の為にできることがある。


(あなたの娘として恥ずかしくないよう、頑張りますね)


聖女としての誇らしさと新たな決意を抱きながら、けれどもマリアの中にはもうひとつ譲れない願いがあった。


(でも、)


親に忘れられた自分を迎え愛してくれる両親。

彼らの愛に応えたい、人の子としてのマリアの願い。


(お父様とお母様の娘としても、頑張る事をお許しください)


マリアは神の庭でどんな未来も選ばなかった。

先が見えない道を進むと決めたが、両親の愛を裏切る事だけはしたくない。そう決めていた。



そんなマリアの意思を肯定するかのように、聖堂の窓から差し込んだ光が白い花を煌めかせた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ランキングから面白そうだなと思い読ませてもらいました! とても面白く先がどんどん気になって一気読みしました!! この先主人公の道行が素晴らしいものでありますように。 続きを楽しみに待っています!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ