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48話

前回に評価やいいね、ありがとうございます!

また、誤字報告もいつもありがとうございます…(;´・ω・)

今回も闖入者回です~~。


次回は洗礼式の続きになります!



「な、なんだその生意気な目は…子爵の分際で…!」


気圧され、とうとう自分の足でも後ずさり始めたエンリケはあっという間に馬車に背中をつけてしまった。

侍従の声で注目した民衆の目は未だエンリケたちから逸らされる事無くこの状況を見つめている。

王子が下位貴族…それも既に第一線を退いた元子爵に追い詰められているのだ、平民達の目には刺激的なショーに映ることだろう。


元々第三王子の不出来の噂は徐々に城下へも広まりつつあったが今日のこの醜態により更に加速度的に広がり、王家がどう情報を操作するにしても擁護しきる事はできなくなる。


「では王家には私から正式に抗議させていただきましょう。

 これでも侯爵の末席…エンリケ殿下には取るに足らないものかもしれませんがね」


レオポルドはフェルディナンドの後ろに立ち笑みを崩さない。

末席どころか筆頭に限りなく近いアラニス家が抗議文を出せば王家とて動かざるを得ない筈だ。


「そういえば三年前に我が家のノエミを寄こせと来たこともありましたね。

 あの時は若気の至りと口外を控えましたが、抗議文にはこちらについても記させていただきましょう」

「そんな昔のことを持ち出すな!あれは、そう、気の迷いだ!」

「気の迷いだなどと、第三王子であられるエンリケ殿下が仰れば我々は従わざるを得なくなります。

 あの時はさる公爵のお力添えで事なきを得ましたが、もしなければ殿下の気の迷いで娘の人生は大きく狂わされていたのですよ」


エンリケはかつて、レオポルドの娘ノエミに求婚していた。

しかも当時ノエミはまだ婚約者の選定中だったがエンリケには既に婚約者がいた。

それにも関わらず選定中のアラニス家へ今のように馬車で乗り付け、娘を王家に寄こせと尊大に言い放ったのだ。


エンリケの婚約者はアラニスとは別の侯爵家の一人娘。

エンリケは女侯爵になる令嬢の元に婿として入る既定路線から脱し、後継者が長男エルナンドに決まっているアラニス家の長女ノエミを王子妃にし王家に残ろうと企てた。

勿論国王夫妻には何の相談もせず自分の考えのみで突っ走っていただけなので認められる可能性はほぼなかったが、万が一無体を働かれでもしたら婚姻するしかなくなっただろう。


そして当時ノエミを想い婚約を申し入れていた公爵子息が父公爵に助力を乞い、その結果公爵家とアラニス侯爵家でタッグを組んだ事でエンリケの要求を跳ねのける事に成功。

ノエミは現在その公爵子息と婚約し、花嫁修業の真っただ中だ。


「王家の一員であられる貴方が動けば、それは大きな波となる。

 その立場への自覚をお持ちください」


本来なら、デビュタントを迎えるまでに持つべきものだ。

それが王家に産まれた者の宿命であり責任なのだが、エンリケはデビュタントどころか成人して久しいというのに未だに幼子のように無責任な我を通そうとしている。


レオポルドとフェルディナンドと相対し蛇に睨まれた蛙よろしく脂汗を滲ませたエンリケの様子に、王子がしっぽを巻いて逃げるのか…そんな考えが民衆の間で膨らんでいく。

一体どうなるのかと周囲が固唾をのんで見守っていると、不意に数人の騎士が鎧を鳴らしながら人の波をかき分け飛び込んできた。


彼らはエンリケとフェルディナンドの間に入るや否や速やかにエンリケやその従者を確保していく。


「御前ご無礼いたします!

 我ら王城より参りました黒鷲騎士団、第二分隊にございます!」

「クラウディオの命か」

「は!エンリケ殿下を()()するよう申し付けられました!」


駆け込んできた騎士は、第二王子直属部隊の者達だった。

騎士の中でも民ではなく王家の為に組織された、黒鷲騎士団。

その中から王子それぞれに与えられる分隊は私兵に近いもので、鐘の音に飛び出したエンリケの暴走を止める為に派遣されたらしい。


「…第三王子殿下は少々具合が悪いようだ、よく休ませよ」

「は!」


しっしっとフェルディナンドの虫を追い払うような動作を咎める事なく、屈強な騎士たちは軽々とエンリケや従者を馬車に詰め込んでいく。

エンリケも必死に抵抗しているようだが第二分隊は黒鷲騎士団の中でも過剰なほど鍛えられており規律を重んじる傾向が強い為一切抵抗の意味を成していない。

これは第二王子クラウディオの性格と彼の選定、訓練による賜物だ。


「では、アラニス公爵閣下、並びにフェルディナンド・ランティス殿。

 エンリケ殿下保護の任務を完了いたしましたので失礼いたします!」

「うむ」

「クラウディオ殿下に礼を伝えておいてくれ」

「は!」


任務完了、即帰投。

迅速な行動に民衆は終始呆気にとられ、今のは一体なんだったんだと口々に囁き始めたのはエンリケの詰まった馬車がガタガタと荒々しく走り去ってからだった。




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