表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

9.冒険の終わり

「あれ見ろ!」

「ベン君とテラちゃんじゃないか!?」

「急いでお母さんに知らせろっ!」

「おーい! いたぞー! ベン君とテラちゃんだ! 見つかったぞっ!」


 それらの声が伝染し、母親に伝えられます。

 最初に見つけた大人が二人の様子を確認して、どうやら寝ているだけらしいとホッとしつつ、疑問も覚えます。


 今いるこの場所は、森の入り口です。何度も何度も見たこの場所に、最初からいたのであれば気付いていたはずでした。ということは、どこかですれ違ったのでしょうか。


「これだけ大人が探していたのに、それに誰も気付かなかったのか?」


 口から零れた疑問は、駆け寄ってくる母親の姿を見て、そのまま忘れられていったのでした。



*****



「ベン、テラ! 起きなさい! ベンっ!? テラ!!」

「……ん」

「……なぁに」


 自分たちを呼ぶ声に、まだ眠いのに、と思いながら、ベンは目を開けます。同時に寝ぼけたテラの声も聞こえました。


 ボーッとしながら、目に飛び込んできたのは、母親の姿です。しかし、なぜか泣きそうになっています。どうしたんだろう、と思ったら、母親に抱きしめられました。


「……良かった、本当に。良かった……」

「え、ど、どうしたの……?」

「おかあさん、なくの……?」

「どうしたのじゃないし、泣くのも当たり前でしょう! こんな夜遅くまで何をしていたのっ!? なぜ森にいるの!? こんなに心配かけて……」


 怒った母親ですが、最後は泣いてしまって、声が出なくなってしまったようです。まぁまぁ、と近所に住んでいる大人たちに慰められている母親を見ながら、ベンはようやく思い出しました。


「ご、ごめんなさい……! あのね、僕がテラを連れ出したんだ! だから、悪いのは僕だから! ごめんなさい!」

「ちがうっ! テラもいきたいって言ったの! だから、ごめんなさい!」


 口々に謝る二人に母親が少し困った顔をして、周囲の大人たちが笑いました。


「そうか、ちゃんと謝れて偉いぞ」

「いいじゃないか、無事だったんだ。なあお母さん」

「……そうですね」


 母親は少しだけ笑って、そして周囲の大人たちに頭を下げました。


「一緒に探して下さって、ありがとうございました。本当に助かりました」

「気にするなって」

「そうそう。困ったときはお互い様ってな」


 そして誰かの「じゃあ帰ろうか」の言葉に、バラバラと大人たちが帰り始めます。それを見て母親がもう一度頭を下げてから、子供たちを見ました。


「ベンもテラも、帰るわよ。まったくもう、ほんとうに」


 許すは許すが、もう一度説教はしなければだめね、と思ったのですが、その子供たちは、キョロキョロしています。


「ねぇおかあさん、ドラくんは?」

「なんで暗いの? さっきまで明るかったのに」

「……?」


 母親の不思議そうな顔に、ベンもテラも不安になります。一緒にいたドラークの姿はどこにも見えません。青空が広がって辺りの景色がよく見えるくらいに明るかったのに、今は真っ暗です。


「あなたたち以外に、誰もいなかったわよ? それに、暗くなってから大分経っているし。……大丈夫? 夢でも見た?」


 もしずっとあの場所で寝ていたのなら、もっと早くに見つけられていたはずです。その疑問に母親も気付きます。


 けれど、ベンとテラは納得できませんでした。だって、リンとジールに会ったのです。ドラークに乗って空を飛んだのです。間違いなく一緒にいたのです。


「……あっ」


 そこまで考えて、ベンは気付きました。自分の右手が、何かをずっと握りしめていることを。ちょっと緊張しながら、その手を開いていきます。テラも、それを見て思い出して、同じように手を開きました。


 そして。


「あった!」

「ゆめじゃない!」


 そう。ベンの手には赤い石が、テラの手には青い石が握られていました。手と手をくっつけて、暗い中でも分かる赤い石と青い石に、二人は顔を見合わせます。そして、「えへへ」と嬉しそうに笑いました。


「どうしたの?」

「なんでもなーい!」

「テラとおにいちゃんのひみつー!」


 母親の問いにベンもテラも元気に言ってから、走り出しました。


「おかあさん、早く帰ろうよー!」

「はやくはやくー!」


 大きく手を振って母親を呼ぶベンとテラに、母親も「まったくもう」と言いながら、後を追います。


 そんな様子を、森の上から三つの影が優しそうに見つめていました。


『無事、帰れたようじゃな』

『良かったわね』

『良かったじゃない。全く、精霊の世界にニンゲンを連れ込むな』

『しょうがないじゃない。放っておけなかったんだから』


 そんな会話を交わし、もう一度だけ笑っているベンとテラを見て、そして三つの影は忽然と消えていたのでした。



*****



 家に戻ったベンとテラは、あっという間に眠りにつきました。寝ている頭の上には、赤い石と青い石が並んで置かれています。


 グッスリ寝ている子供たちの様子を見に来た母親も、それに気付きました。何も言わないけれど、どうやら"たからもの"を見つけたらしいことは、すぐに分かりました。


「もう危ないことはしちゃダメよ」


 優しく頭をなでて、母親は静かに部屋を出て行きました。とても満足そうな子供たちの寝顔に、安心しながら。


これで終わりになります。

子ども向けの話って難しいですね。でも、楽しく書けました。

お読み頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] この子達が成長したらまたあの森に向かって会いに行くのかな〜
[良い点] 企画より参りました。 童話は詳しくないのですが、テンポよくすらすら読めるので、子どもにもおすすめできそうですね。 読ませて頂きありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ